12/6(日)「帰国・外国人児童生徒支援のための研修会」報告

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12月6日、徳島県教育委員会主催の「帰国・外国人児童生徒支援のための研修会」に招かれ、日本語多読について粟野がお話ししました。
新型コロナ感染拡大防止のため、急遽、オンラインで行うことになり、会場の鳴門教育大学にお集まりの参加者のみなさんにスクリーン上からお話しするという形になりました。
参加してくださったのは、小学校、定時制高校などの教職員、地域日本語教室のボランティア、日本語教育専攻の大学院生、大学の先生など36名でした。
会場では5,6人に分かれて座っていただきました。

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13時45分~16時半までのセミナーの前半は、「多読とは何か~多読の意義・方法・効果について」
最初に「多読」をご存じの方に手を挙げていただきました。かなりたくさんの手が挙がりましたが、まったく初めて、という方も数人。「多読」という言葉はだいぶ浸透してきているなという印象でした。
続いて、本題です。
多読は従来の「読解」とどう違うのか、どんな風に行うのか、学習者はどんな反応を見せるのか。過去の例や動画などを使ってお話ししました。
どんな風に受け止められているのか、参加者のみなさんの表情が見えないので少々心細く感じながらも終了。

休憩の後は、最初のワークショップ「多読をしてみよう!」です。
あらかじめ、用意してくださった、私たちの作った「レベル別日本語多読ライブラリーにほんごよむよむ文庫」や「にほんご多読ブックス」、市販の絵本などをそれぞれ手に取って読んでもらう時間です。「なるべく一読者として本を楽しんでください」とお願いしました。

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しばしの静寂の中、スタッフがみなさんの島を歩き回って、画面の中の私にもその様子を届けてくださいました。15分という短い時間でしたが、みなさん、熱心に読んでいる様子がよくわかりました。そして、ブックトークをしてもらい、最後に1グループから一人ずつ話していただきました。

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「よむよむ文庫」の『日本の神話』を読んだ留学生(おそらく)が「最初に神様が生んだのが淡路島だったとは初めて知った!」と話してくれたり、「にほんんご多読ブックス」の『どうして蚊は人の血を吸う?』を読んだ先生が、「今まで昔話は学生も興味がないだろうと思っていたが、外国の昔話はとても興味深い。考えが変わった」という主旨の発言をされたり、たくさんのふしぎ『屋上のとんがり屋根』が面白かったと、みなそれぞれに読者として楽しまれた様子が伝わってきました。多読の「楽しく読む」が伝わったかなとうれしくなりました。

ワークショップ2は、「多読について考える」
付箋に多読について思うこと、感想、疑問をたくさん書き出してもらいました。
そして、それを島ごとに多読に肯定的意見、否定的あるいは疑問、その他と3つのカテゴリーに分類してもらい、それを見ながら意見交換をしていただきました。

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でてきたのはーー

多読に肯定的な意見
・(多読の本は)シンプルでわかりやすい。次が気になる。どんどん読みたくなる。絵があるのがいい。短いのがいい。レベル別になっているのがいい。人に話したくなる。総ルビなのがいい。
・いろいろな種類から自分で本を選べるので能動的に読める。
・読書記録は書く練習になる。
・知識を増やせる。
・気が楽
・内容がわかると達成感がある。
・楽しい。
・日本の子にもよさそう。一緒に活動ができそう。

疑問
・単語がわからなくて内容が理解できるのか?
・絵だけの本はどうするのか?(日本語教育的に)
・自分よりレベルが低い本でもいいのか。
・評価はするのか。どうするのか。
・アウトプットの能力はどれぐらい伸びるのか。
・図書の整備にコストがかかる。
・中高生に童話をすすめるのはプライドの面でどうか。
・読書が嫌いな人にはどうするか。
・内容の誤理解は放置する?
・効果はどう測るのか?

その他にもいろいろな感想が並びました。
それをもとに話し合い・・・。

みなさんの疑問は当然の疑問です。すべてにお答えしたかったのですが、時間の都合もあり、最後にいくつかの質問にお答えした後は、ぜひ、NPO多言語多読の「にほんごたどく特設サイト」やWebマガジン「日本語教育いどばた」の多読の連載記事などを見てくださいとお願いして閉会時間となりました。
最後の最後、お別れの挨拶に代えて、

1)多読をやってみたいと思った。
2)いますぐは無理だけど、いずれやってみたいと思った。
3)やりたくない。

の3つのどこかに手を挙げていただきました。

結果は1)が25名、2)が5名、3)は0名でした。

いろいろな疑問はあれど、やる価値がある、と思っていただけたようです。よかった!
今日の「多読の入り口」に興味を持ってくださったみなさんには、ぜひ第一歩を踏み出していただきたいと思います。

画面の中からの「遠隔操作」という初めての経験でしたが、みなさん意図を理解してくださって、ワークショップもとてもスムーズに進みました。
みなさんの多読実践が始まった頃、ぜひ今度は対面で直接お会いしてお話を伺いたいものだと思いました。

 

以下、アンケートからの抜粋です。

・多読については様々な研究会や学会で知っていたが、具体的に学べて良かった。
・グループワークでいろんな意見が聞け、そこでの疑問点を粟野先生に答えてもらい良かっ た。現在、多読授業を行っているが、改めて進め方や考え方、アイデアを得ることができた。
・現在、担当している子に、多読を取り入れようと思った。
・実際に多読の本を紹介していただけて、自分もその多読に浸れたの が良かったです。外国人児童だけでなく、みんなにとって多読は有効だと思います。
・「多読」という言葉すら知らなかったので、とても勉強になりました。
・日本に住む外国の方々が多読を通して日本への 理解が広がり、人間関係も広がるのではないかと思います。
・子供にどう教えたらいいのか、どんな教材を使ったらいいのか、困っている先生方にとって、 効果的な教材だと思いました。
・リモートの研修会ですが、講師先生の話もよく伝わりました。グループでの協議も実り多いも のでありました。OUTPUTの活動を考えてその中で知識の活用をさせるという話が多い中 で、情報のINPUTも大切だと言うことを改めて感じさせられました。
・具体的なお話で「多読」についてよく理解することができました。私は国語の教員なのです が、多読でつく力は日本の児童生徒が身につける国語力と同じようなものだと思いました。 日本語学習者に対しては、もちろんですが、日本の子供たちにももっと本を読ませたいと今更ながら改めて思いました。

 

入念に準備をしてくださり、当日は写真を撮って回ってくださったり、カメラを移動してくださったり、スタッフのみなさまには大変お世話になりました。感謝申し上げます。

(粟野)