NPO多言語多読では「多読授業と読みもの作成」入門講座を年に数回開催して、大勢の方々に受講していただいていましたが、このコロナ禍でオンラインに変更せざるを得ず、読みもの作成部分を省いた「オンライン多読授業入門講座」として、6月から講座を5回開催してきました。
対面授業が難しくなったこの1年、オンライン上で読める読みものの需要も増してきたからか、「読みもの作成講座」を望む声が当NPOへ寄せられるようになりましたので、今回初めての「オンライン・読みもの作成入門講座」を開催することになりました。わたしたちスタッフは「はたしてオンラインで読みもの作成の講座ができるのだろうか?」という一抹の不安を抱えながらも、勇気を出して講座を開催しました。
12月13日、日曜日の午前9時、イギリスやマレーシアから参加して下さった方を含め12名の方々が受講されました。いろいろな機関で日本語の授業をしていらっしゃる方々で、多読授業の読みものを作りたい、指導している学生に日本語の読みものを作らせたいという方、中には、すでに何冊か多読の読みものを作っていらっしゃる方もいらっしゃいました。
まず、理事長の粟野が読みもの作成の歩みと、多読の読みものにどんな分野のものがあるか、何冊ぐらいの読みものがあるかなどの現状の解説。そして挿絵や写真も含めて著作物の著作権のことなどの説明をしました。
次に理事の松田より、実際に読みもの作成やリライトの際の注意点を解説しました。
いよいよ、読みもの作成のワークショップです。受講生4名とスタッフ1名の5名ずつに分かれて、『北風と太陽』『アリとキリギリス』『ウサギとカメ』から1作を選んで、レベル0か1で作品を作るのが課題です。2グループが『北風と太陽』、1グループが『ウサギとカメ』を選びました。
小一時間で作業が終了。イラストまで入れてほぼ完成のグループもありました。各グループの方々が意見を出し合いながら共有画面上に手際よく作って下さって、スタッフは、ただただ感心して見ているだけでした。
みなさんに作品を発表してもらい、質問や講評を行いました。
「もう1場面あった方がわかりやすい」「だんだん暑くなる表現にもう一工夫」など、いろいろな意見が出ました。
5分の休憩の後は中級の読みもの作成です。
今度は3名の受講生にスタッフ1名の4グループに分かれて、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』のリライトです。
3か4レベルということで挑戦しました。
30分ほどの格闘の末、終了。発表と講評に入りました。
始めに極楽と地獄という語が出てくるのですが、この言葉の説明を入れたグループが2つ。また、極楽を天国という語にしたグループが2つ。
「極楽と地獄という言葉の説明を入れた方がわかりやすい」「天国という言葉だとお釈迦様のいる極楽のイメージとは変わってしまう。キリスト教の天国とはイメージが違う」などの意見が出ました。
また、「その場で原稿を見るのではなく、講座が始まる何日か前に原稿を渡してくれれば、考えをまとめて臨めたのだが」という意見もありました。確かにいきなり作業に入ると、小説全体の雰囲気を掴みきれないなど難しい部分が多かったかもしれません。
講座に出席なさった方が、ご自分の作品や、学生さんの作品などを送っていただけたら嬉しい、と粟野からアナウンスをして、12時を10分ほど過ぎて終了となりました。
なんとか対面でやる作業がオンラインでもできましたが、なかなか慌ただしい3時間でした。改善してまた数ヶ月後に挑みたいと思います。
参加なさった方々にとって意味のある物になっていたら嬉しく思います。
松田記