3/18(土)「にほんご多読ワークショップ」@西東京市図書館 報告

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西東京市図書館主催の「にほんご多読ワークショップ」を今年は対面で行うことができました。(昨年のオンラインでのワークショップの様子はこちら)雨のなか、11人の参加がありました。
日本語学習者の参加者も期待しましたが、結局、地域の日本語教室のボランテイアの方を中心に、日本語学校で教えている方、個人で日本語を教えている方、英語多読経験から興味をもってという方の参加でした。
はじめに、担当の林さんから今回のワークショップの趣旨説明がありました。

会場になった部屋には、レベル別の多読用読みものや多読に使える絵本がずらりと並んでいます。

講師はNPO多言語多読理事長の粟野です。「多読についてまったく知らない方?」と質問すると、6人の方が手を上げました。そこで、「知らない方がいらっしゃるので、やりがいがあります!」という粟野のことばでワークショップが始まりました。
まず、NPO多言語多読が日本語多読を始めることになったきっかけ、その実践のために多読向けのレベル別読み物を作るに至ったことなどをお話ししました。そして、これまでに制作した多読向け読みものを紹介。また、多読は従来の「読解」とはどう違うのか、多読の4つのルールの意味、支援者の役割などを順番に説明していきました。
それから、字のない『あいちゃん』をみんなで観ながら、物語を読み解いていきました。多読では文法や語彙の知識で「活字」を読み解くのではなく、本の中の世界、状況を読み取っていくことを体感してもらうためです。みなさん反応が良く、笑い声も上がり、楽しそうに「絵を読んで」くださいました。

その後、机に置いてある日本語の字のない絵本も手に取ってもらい、お気に入りの本を紹介してもらいました。

続いて、英語の0xford Reading Tree のシリーズの字のないものや字の少ないものを読んでいただきました。絵の表情や状況を見ると、知らない英語の言葉でも、いろいろな人が繰り返し同じ言葉をしゃべっているのでわかってくるという感想や、日本とイギリスの文化や習慣、親の態度の違いなども読み取れてとても楽しいという感想もありました。

もちろん、日本語多読に使うレベル別の読みものや絵本も手に取っていただいたので、各テーブルの上にはちょっとした本の山が出来ました。

最後にみなさまからひと言、感想や質問を言っていただきました。
・私たちは「読む」というと字ばかり追ってしまうが、その「字」を取り上げられると、なんと無力なことか。字のない絵本から一生懸命、読みとろうと細かく絵を見たが、考えてみたらコミュニケーションは、相手の表情や状況が大切だと気がついた。
・下手な例文を与えるより、本一冊でいいのではないかと思った。今日は目からうろこがボロボロ落ちた。
・多読を取り入れていたけど、あらためて多読の力を思い知った。
・支援者ひとりでレベルの違う大勢を相手にできるいい方法だ。
・学習者の方と昔話を読むことがあるけれど、言葉が難しくて困ることがある。レベル別の多読の本なら読めそう。今度から、多読の本を使ってみる。
・小学生には、ドリルより本だと気づいた。
・ひらがなが読めないとだめでしょうか?
⇒読み聞かせから始めるといい。一緒にひらがなを読んでもいい。最初の本としては、オーストラリア・シドニーの国際交流基金が作った「ひらがなミニブックス」がいいのでは?

久々の対面でのワークショップでした。たくさんの本を手にとってもらうことができて、対面活動の良さを再認識しました。
これだけ、多読の本や絵本がそろっている西東京市の図書館をぜひ、日本語学習者にも使ってもらいたいです。
参加者の中から、公民館や図書館で日本語多読の実践グループができることを期待しています。

以下は、事後アンケートからの抜粋です。

・自分なりに英語の多読を行って、ネイティブの大人の方の本が読めるようになり、多読に興味がありました。学校での授業があって、基礎はあったので全く日本語を知らない方が本で知識を深めていく過程に興味を持ちました。
・自分自身英語多読をやってみて、やはり文法から入っていたと今日気付きました。「教える/教えられる」という学習観が思っている以上に自分自身に染みついていたと改めて気づきました。「ことばが場面とともにたまる」という主体的学習について知ることが出来ました。
・このようないい内容の講座が地元で無料で受けられることがありがたいです。図書館の職員さんに感謝します。外国人の子どもによい絵本の紹介をしていただけるといいなと思っていたら、最後に紹介があって良かったです。
・日本語学校ではある程度スケジュールが決まっており、ゆっくり多読の時間がとれないのが悩みですが、とても良いと思ったので、今後ぜひ学生に本を教えたり授業でも取り入れたりしたいと思いました。
・これまでの「多読」に対する考えが変わりました。今後の授業に何らかの形で取り入れてみたいと思います。その前に自分も外国語の多読の世界を知っておこうと思います。

(川本 記)