3/6(日)「オンライン日本語多読授業入門講座」報告

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3/6(日)開催の「オンライン日本語多読授業入門講座」の報告です。
フランス、ドイツからも含め、8名の方が参加されました。ほとんどが地域の日本語教室で成人、子どもの日本語支援に携わっていらっしゃる方でした。


参加者のみなさんの活動分野に合わせて、今回は、アドバイザーとして会員の岩﨑容子さんをお招きしました。岩﨑さんは、長野県の地域日本語教育コーディネーターをなさっています。

まず、粟野が「多読」を始めたきっかけから、「多読」の意義ややり方、本の紹介をして、実際の多読授業風景の動画も見ていただきました。
休憩の後は、質疑応答の時間をたっぷりとりました。

実際にすでに多読授業を導入された先生から「レベルに合っていない本を読んでいる学習者をどうしたらいいか」「読みたくない学習者をどうしたらいいか」という質問が出されました。
これは、どんな教室からもよく聞かれる質問です。
前者の質問には、岩﨑さん、そして大学の日本語講師をしている会員の作田さんから異口同音に「まずは見守る」「対話してみる」「レベルが合っていなくても楽しんでいるならOK」とアドバイスがありました。
後者の質問には、「活字嫌いなら動画視聴などの多聴多観から導入してはどうか」。
ブックトークで他の学習者が読書を楽しむ様子などもうまく利用するなどして、日本語に気持ちよく浸れるように導いていけたらいいですね。

「多読後のアクティビティ」についての質問には、アドバイザーから「多読はあくまで読む(あるいは聞く、見る)が大切。自発的に学習者がなにか表現したくなったら本を作るなどしてよいと思うが、最初から課題にするのはどうか。また、やりたくない学習者に強制的にさせるのは多読的ではない」との回答がありました。
学校のコースや学期に終わりはあっても、多読にゴールはありません。人それぞれの道を歩み続けられるような先を見た支援が必要なのだと思います。

その他、実際に多読実践を始めるときのいくつか質問や感想が上がりました。
なかには、ご自分が韓国語の多聴多観にはまって、楽しく言葉を獲得していく過程を実感されている体験を話してくださった方もいました。すばらしい!!
実際に日本語以外の言語で体験してみる、それが多読支援の成功のもとかもしれません。

このようなやりとりの中から、私たちの「多読」の考え方をみなさんにいくらかでも感じ取っていただけたのではないかと思います。
多読にマニュアルはありません。「やってみよう!」と思われたら、最初から欲張らずに、まずは「ささやかに」。そこから少しずつ、「多読」に取り組んでいくことをお勧めします!

《以下は、事後アンケートからの抜粋です》
・実際の授業の動画を見ることができて、実感できたのがよかったと思います。
・講座前も多読の原則は理解していたつもりでしたが、やはり講座に参加することでより深く理解し、納得することができました。ビデオの多読中の学習者の方々が日本語を自然に「生きて楽しむ」ことに使っていらっしゃって、その表情に深く感銘をうけました。言語の真の習得は学習者の個人的な経験に基づくものであるはずなのに、自分の日本語授業は、授業という狭い枠組みで知識を扱うようになってしまっていて、それはそれで大切であったとしても、もしたとえ知識を扱う喜びがあったとしても、その先がありません。「生きる」ことに結びついていないのです。一見楽しいアクティビティーをしてみても、実はその枠をほとんど出ていないのだと、気付かされました。
・日本以外で日本語を学んでいる学習者は、生活上の必要性がほとんどないので、言葉を直接的に体に染み込ませる体験がなかなかできません。ダイレクトに吸収するには、わからない言葉があっても視覚や文脈で自然にわかって、それが楽しいと思える環境が重要だと思いますが、自分のレベルにあった教材がたくさんある多読ではそれが可能で、言葉を言葉として取り戻す一つの有効な方法だと、講座に参加してあらためて納得しました。
・実践経験もなく、「多読」に関してほとんど知識がなく参加しましたが、講義がわかりやすく、根本的な部分から学べました。動画で実践の様子も観て、多読の実践の具体的イメージをもてました。学習者が「自分の読み方」でいきいきと本に向かう姿が印象に残っています。
・外国人児童生徒への日本語支援に限らず、日々の教育活動の中で、子どもたちが本に触れる機会をつくることの重要性を感じました。将来教員になったら実践したいです。
・多読を続けていく中で、何か成果を出さなければいけないと考えていた部分がありましたが、それは強制するものではないということに気づくことができました。学生にとって多読がずっと続くものになるよう、今は環境づくりなど楽しめる工夫を考えていこうと思います。
・特に「日本語のまま」読む、「進まなくなったら他のものを」読むということが、私にとって新しい視点でした。自身の高校時代の英語の多読の経験を振り返ると、辞書で緻密に調べながら意地になって読んでいた記憶があります。「多読の読み方」を知っていたら、もっと気楽に色んな本に触れて楽しめたのではないかな、と感じました。これも踏まえ、支援者としては、学習者が最終的に「多様な読み方」「自分らしい読み方」ができるようにすることを目標にしたいと思いました。そのためには、読み方のモデルを示すのも支援者の役割だと思います。今回教えていただいた「多読のルール」を有効的に使いたいです。また、動画で学んだように、学習者とのコミュニケーション、読む楽しさや意欲が高まるような支援も大切にします。

アンケートにたくさん書いていただき、ありがとうございました!
実践をしてからの悩みや気づきをお互いに話し合える場などを年に何回か設けています。
ぜひ、またご参加ください。

次回の「オンライン日本語多読授業入門講座」は4月3日(日)です。

(粟野)