2月27日(日)オンライン「初級用読みもの作成講座」報告

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2月27日(日)の9:00~12:00、オンラインで「初級用読みもの作成講座」を開催しました。
定期的に開いているオンライン「読みもの作成入門講座」では、初級用、中上級用の読みもの作成を短時間で体験していただきますが、この講座では「初級用読みもの」にじっくり取り組み、完成させることを目指します。毎回、入門講座に参加した方限定で募集しています。
今回は、オーストラリア、アメリカ、そして日本国内から4人の方々が参加して下さいました。少人数でしたので、いつにも増して和気藹々の講座となりました。

まず、理事長・粟野の挨拶と参加者の自己紹介から始まりました。参加なさった方は、外国の高校で日本語を教えている方、オンラインで多読会を開いている方、オンラインで技能実習生に教えている方、日本の都立高校で補習クラスを担当している方など、お仕事の場所や種類も様々でした。

今回の講座は、レベル0を想定しています。入門講座で作成した作品を完成させる、または、オリジナルでもリライトでもいいので、作品をあらかじめ提出するという宿題がありました。「サルとカニ」(日本民話)、「よくばりな犬」(イソップ)、そして学生さんが作った話をまとめてくださったオリジナル作品が提出されていました。
まず、画面共有しながら、作者が読み上げ、みなさんに感想、意見を出していただきました。講師からは、レベルにあった言葉や文型が使われているか、場面のつながりがうまくいっているか、という視点からそれぞれの作品の改善点が提案されました。
例えば、日本民話のさるかに合戦を元にした「サルとカニ」なら、言葉と表現のレベルにばらつきがあるので、もう一工夫が必要ではないか、など。イソップの「よくばりな犬」では、肉を咥えている犬のイラストと、そこに付いている「犬は肉を食べました」という文が一致していないので、文のほうを検討してみてはどうか、などの提案です。

後半は、「よくばりな犬」と、「のっぺらぼう」の二班に分かれて、グループで検討しながらの作業に入りました。今回「のっぺらぼう」は、参加して下さった方から案が出されたもので、元の原稿なしで、この場で作り上げよう、というものです。
「よくばりな犬」は、タイトルの検討から始めました。初級学習者には「よくばり」は、難しい言葉で手にとってもらえない恐れがある、という意見が出て、「犬と肉」に換えました。本文も、イラストの検討もしながら、わかりやすい物になりました。
「のっぺらぼう」は、小泉八雲の「むじな」にもある夜道のシーンから始まりますが、なんと最後のオチが、夜鳴き蕎麦屋ではなく交番のおまわりさんがのっぺらぼう、という独創的な物になっていました。

どちらの作品も、読みものの作り手に、これを読む学習者の顔が見えている、という感触のある仕上がりでした。

【事後アンケートからの抜粋】
・じっさいに作った物を基盤に改善するというやり方がとてもよかったと思います。改善するべき点、他の方からの意見を参考にしながらいい物を作る実践的な経験になりました。
・イラストだけでも推測できる内容に言葉を添えるのに適した素材を見つけること、単に単語を置き換えるのではなくストーリーをしっかり咀嚼してリライトすることの難しさを感じました。
・2回目でしたが、今回も、もっと柔軟な考え方をする必要があると痛感しました。イラストや繰り返しの使い方、最初と最後の関係など、参考になりました。
・経験あるのみだと感じました。
・今回は、たまたま少人数でしたが、このほうが、より自分も積極的に参加できる経験になりました。

この講座で、読みもの作りを体験した方たちが、多読用の読みものの書き手となって、たくさんの読みものができたら、うれしいです。ご興味がある方は、まずは「日本語多読授業入門講座」、「読みもの作成入門講座」からご参加ください。

松田(記)