オンライン中級用読みもの作成入門講座 報告
7月25日(日)、初の試みである中級用読みもの作成入門講座を開催しました。
すでに「入門講座」を受けてくださった方に声をかけ、メキシコ、フランスを含む国内外の10人の方が参加してくださいました。
参加者には、あらかじめ『てぶくろを買いに』(新美南吉)を、期日までにリライトして提出するという宿題が出されました。
当日は、簡単な自己紹介の後、中級用読みものリライトのポイントの確認し、『てぶくろを買いに』の魅力、特徴について話し合いました。
絵画的、視覚的情景美、母のやさしさ、子ギツネの無邪気さなど、参加者から作品のポイントにしたい点が挙げられました。
一方、多読の読みものとしては、筋が弱い、ストーリーでぐいぐい引っ張れない、矛盾がいろいろあるなど、マイナスの面もでてきました。
その後、参加者のみなさんの提出されたリライトのなかから、工夫のあとが見られる箇所の紹介、その他リライトの工夫の可能性を話しました。さすが、すでに「入門講座」を受けていらっしゃるだけに場面分けをしたり、絵の指示が入っていたり、多読用読みもののツボを押さえているなと感心する作品が多かったです。
休憩をはさみ、後半は、3グループにわかれて、いよいよ完成を目指し、リライト作業に移りました。
<グループA>
参加4人+見学1人 ファシリテーター・川本
唯一のレベル2に挑戦のチャレンジャーチームです!
レベル2にリライトしたHさんの原稿を元にすすめました。
まず、Hさんのリライトの、わかりにくいところ、流れの悪いところを検討していきました。
苦労したのは、最初のシーンの真っ白な雪がお日さまに照らされて子ギツネが目に何かささったというところです。工夫したのは、初めて雪を見た子ギツネが、はじめは少しおそるおそる、次第に雪の楽しさに夢中になって走り回って遊ぶようになるところです。
表現を足したり、会話を増やしたりしました。あっという間に時間切れでした。
<グループB>。
参加3人 ファシリテーター・松田
レベル3にリライトしたKさんの原稿を元にすすめました
Kさんのリライ原稿は場面割りがきちんとなされていて、どんなイラストを入れたいかという指示もあり、仕上げるのが容易でした。
メンバーからも的を射た意見や提案があり、Kさんも納得の上で、どんどん進んでいきました。
<グループC>
参加3人。ファシリテーター・粟野
レベル3にリライトしたIさんの原稿を元にすすめました。
まず、子ぎつねの言葉の語尾が不自然だと思われたので直しました。
それから、子ぎつねが目に何か刺さったと言ったわけを悟る母狐シーンを検討、ここに時間がかかりました。
お母さん狐が雪だったのだとわかって、子ぎつねを伝える言葉をどの位置に入れるかなどみんなで話し合いました。その他「雪はシャワーのように空を飛んで・・・」が伝わるかなどを検討し、全体的にIさんのオリジナルより、さらにシンプルになりました。
各グループ、できたところまで発表。それぞれについて、他のグループが感想、コメントをしました。
また、Hさんがbook creator という本が作れるサイトの紹介をしてくださいました。続いて、折り紙のキツネ、それに写真やイラストを大胆に入れ込んだTさんの原稿をみなさんに紹介したときは、思わずみなさんから「すごーい!」と歓声が上がりました。
みなさん、使えない表現が多いこと、使わないためにどう工夫するか知恵を出し合い、単なる書き換えではないということを実感していただけたようです。また、レベル2と3とでは、どのぐらい違うのか、そのレベルの感覚もつかむことができたのではないかと思います。
〈事後アンケートより抜粋〉
- とても面白いです。色んな方のアイデアからたくさん学ばせてもらいました。言葉選びや絵の指定なども含め経験を重ねないといけないなと思いました。
- 思っていた以上に一文を短く、語彙、文法の制約があると感じました。もっと丁寧に読み込んで読む人のことを考えてリライトする必要があると思いました。
- 事前課題として提出したものを丁寧に見ていただき、とても嬉しく思いました。そして、皆さんと一緒に考えていくことにより、ただ易しい言葉や文型を使うだけでなく、説明や叙述の部分を会話文にしたり、削除できるところは思い切り削除したりと様々な工夫ができることがわかり勉強になりました。レベル2で「ごんぎつね」を読んだ学習者がレベル3で再び新美南吉の作品に触れ、レベル2にはなかった情景描写を味わったり、人間の善悪についてもう一度考えるきっかけになったりしたら素敵だろうなと思いました。
- 事前課題があり、それに対するフィードバックがいただけたのがありがたかったです。皆さんへのコメントも参考になりました。HP記載の読みもの作成時のポイントにも照らし合わせて解説いただけたので、より作成ポイントを意識できるようになりました。
- レベル2では表現できないと思い削除した部分(雪が木から落ちて子狐が驚く場面)が、皆さんのお知恵やご意見で復活して感動しました。
- 作ってみたレベル2では語彙・文法を書き換えるのがなかなか思いつかないものもありました。原作者の新美南吉の世界、らしさを生かすべく、オノマトペや表現をなるべくそのまま残したのですが、それによって読み手に混乱を起こさないのか疑問も残りました。
- 中級なので、元の表現をどこまで活かすかが難しいと思いました。
ざっくり簡略化して行くといいかなと思う反面、難しいけど文脈から意味が理解できそうなところは残しておきたいという欲もあるし。 - 10人の参加者では難しいかもしれませんが、一人30秒でも、特に工夫した点などを最初に話せるとよかったかもしれないと思いました(グループに分かれてからでも?)
本づくりアプリとか、知らない情報も知ることができ、やはり、人が増えると世界も広がると感じました。
やはり短いとは言え、一作を仕上げるのには、時間がかかり、私たちスタッフの「ひょっとして作品として仕上がるのでは?」という期待は見事に砕かれましたが(笑)、今回の講座を参考に、みなさんの生徒さんたちのために、素敵なリライト作品が増えていくといいなと思っています。
(川本 記)