8月22日(日)オンライン「読みもの作成入門講座」報告!

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第5回オンライン「読みもの作成入門講座」を開催しました。まずは、自己紹介からスタート。石川県や広島県から参加なさった方、オーストラリア、アメリカ、韓国などの海外から参加なさった方も含め、11名の受講生です。
ボランティアとして日本語学習をしている方、高校や、大学、日本語学校などで授業をしている方など、多様な立場からのご参加でした。
ほとんどの方が、現在、教えている人たちに、ご自分で作った日本語の読みものを読んでほしい、と思っていらっしゃるということで、読みもの作りに対する「熱い」思いが感じられました。 

20210822_読みもの作成入門講座

 

多読用読みものについて

はじめに多言語多読理事長の粟野から、多読向け読みものの現状について話がありました。どのようなものがあるか、レベル分けはどうなっているかなど、にほんごたどく特設サイト資料などを示しながら、話しました。サイト上の無料の読み物が、現在70話を超えてきたこと、そこには、私たち多言語多読で作成したものだけではなく、学生の作品や外部のグループの作品が含まれていることなどを話しました。また、「KCよむよむ」や「読みものいっぱい」「マレーシアの先生が作った読みもの」など他のグループが作った多読用読みものもどんどん増えてきていて、多読素材作りは広がってきていることも紹介しました。
私たちの作成の大きな方針は、文型や文法を教えるためのものではないこと、あくまでも楽しい読書を実現する素材であることも確認しました。 

読みものづくりのポイント

続いて、理事の松田が、にほんごたどく特設サイトの「日本語の多読向け読みものを作ろう」のページを見せながら、まず、物語の冒頭から、学習者に手にとってもらうための工夫が要ること、文法や語彙の制限の中での表現のコツ、登場人物や小道具の名前も場合によっては考え直す必要があることなど、具体例をあげて話しました。

 

実践その1

いよいよ実践です。事前に読んできていただいたウェブサイトの内容、粟野と松田がお話ししたことなどをふまえて読みものを作っていただきます。

まず、初級の読みもの作りの体験です。

「レベル0」の絵と文の入り具合、展開の仕方を見ていただくために、「にほんご多読ブックス」の「カラスとキツネ」を、理事の川本のナレーション入りで見ていただきました。

3つのグループに分かれて、レベル0の読みもの作成に挑戦してもらいました。「アリとキリギリス」、か「ウサギとカメ」のどちらかを選んでいただきましたが、3グループとも「ウサギとカメ」を選びました。

同じ題材でも、ページの割りふりや文の検討をしっかりしたグループ。表情豊かな挿絵を描いて下さったメンバーがいて、そこへ文を入れていったグループ。ウサギは負けたものの「これで決着が付いたわけではないので、明日も競争しよう」とウサギに言わせた(これは前代未聞のオチでは・・・)グループなど、三者三様の「ウサギとカメ」になりました。

休憩の後、実践編の後半は、中級レベルのリライトです。

 

実践その2

題材は「注文の多い料理店」です。事前に原作を読んできてもらっていました。さきほどのグループをシャッフルして、あらたに3つのグループに分けてスタートです。

まず、レベル2にするか3にするかを話し合っていただきました。文学作品のリライトとなると、原作の味わいをどの程度残すかが問題になってきます。レベルを低くすると、わかりやすい文にはなりますが、あらすじのようになってしまって宮沢賢治らしさが残るかどうかが心配になってきます。

2つのグループが、レベル3で、1つのグループがレベル2でリライトをしました。

レベル2の「注文の多い料理店」が、かなり賢治らしさの残るよい物になっていたのは、私たちにも意外でした。工夫次第で、語彙や文型の制限が多いレベル2にリライトできるのだなあ、と思わせられました。

レベル3のグループのうち1つは、細かく話し合って冒頭の文をリライトしていました。これから始まる物語の摩訶不思議さを読者に感じてもらおう、ということでした。

もう1つのグループは、出だしのところより、レストランへ入ってからの方が面白いから、ということで、レストランの入り口の場面からリライトを始めました。

粟野から「冒頭には、その物語の前提となる要素が描かれているので、けっこう大事ですけれど・・・」と、チクりと講評されました。各グループの、ここに気をつけた、ここに苦労した、などの話を聞いてから「学習者に読みものの内容や描かれていることの背景をどの程度まで教えていいか」「リライトの材料としてエッセイはどうか」という質問が出たので、粟野が答えました。

オンラインの画面越しに見る皆さんのお顔も、相当疲れが見えてきたところで、終了時間になりました。4時から7時まで、息つく暇もない講座でしたが、受講なさった方々にとって有意義な時間であったらうれしいです。

 

《事後アンケートからの抜粋》

  • それぞれのレベルで使用できる語彙や文法が限られるなかで、原文を生かしながらレベル別読み物を作る難しさを実感することができました。また、「注文の多い料理店」のリライトでは、「賢治らしさ」を残したいと考えましたが、「賢治らしさ」を残すためにはそもそも「賢治らしいとは何か」がわかっていないとだめなので、自分自身がその作品を理解することの重要性も感じました。
  • 同じ題材でも人によって焦点を当てる部分が違ったりと、それぞれの方の「日本語教育」が反映されたりもするのかな、と思いました。
  • 話し合いの中でも出ておりましたが、オノマトペ等面白いし学習者も興味があるが意外と教えずらかったり授業内で時間をとっていないものも絵やストーリーの助けを借りて学習者の中にすとんと落とすこともできそうだな、とも感じました。
  • 本をイメージしながらの作業はとても楽しかったです。もっとやりたいと思いました。決められた時間内でアイデアを出し合いましたが、どの意見を採用するかなど、その辺のすり合わせに時間がかかったと思います。「注文の多い料理店」では分業したほうが全員参加とストーリーを通して完成できたのかも・・・、と今は思います。
  • とても楽しかったです。NPO多言語多読の先生と一緒に小グループに分かれての作業だったので、読みもの作りの留意点やレベルについて考えながら、進めることができました。そして、同じグループの方とアイデアを出し合いながら進めていく作業も、とても貴重な経験でした。
  • 他の参加者の方のアイディアや柔軟性にインスピレーションをいただけてよかったです。自分の頭が固まっているのに気づくいい機会でした。改めて、これから書いていこうという気になりました。時差があったので心配でしたが、ハンズオンで、あっという間の3時間でした!ありがとうございました。
  • 他の方のリライトの視点のさじ加減がそれぞれにあるなか、それをファシリテーターの先生方が方向性を示してくれながらも「自由さ」も尊重して下さっているのがとても勉強になりました。(日本語の指導でも大切にしたいと思いました。)入門・初級レベルでは絵がイメージできるかどうかは、かなり大きいと実感しました。
  • 言葉が制限されていることで「話へどうやってひきこむか」「物語の見せどころ」「オチをつけてそ心にその本の足跡を残す」など、物語のコアなところ、面白さの核のようなものがよくわかりました。オノマトペや簡単な言葉を重ねたりすることで原作の出したい描写を表現するのは難しかったですが、他のメンバーや他のグループの方々発想の転換やアイディアの例を見て、たいへん参考になりました。

 

(松田記)