6月7日(日)オンライン「日本語多読授業入門講座」報告

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6月7日(日)に行った「日本語多読授業」入門講座の報告です。
通常、「多読とは何か?」「多読授業の方法」「多読素材について」そして「読みもの作成ワークショップ」まで一日かけて行うのですが、初めてのオンライン版入門講座ということで、前半部分だけを2時間で行いました。
参加者は大学、日本語学校の先生、子どもの日本語教育支援をされている方など8名でした。ソウル、群馬、大阪などオンラインならではからの遠方からの参加があり、有意義でした。

講師は会員の作田奈苗と片山智子でした。

前半は、作田が多読の概要をお話しました。

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多読は、インプットを増やして、読みの流暢さを獲得する方法との説明がまずあり、そのインプットを増やす多読はどんなやり方で行うのか、自身のイラストで視覚的にもわかりやすく説明がなされました。
また、多読には欠かせない重要な意味が込められた多読のルールの解説が続きました。
どんな本を読んでいくのか、レベル別に素材の例も紹介されました。

後半は、片山が東京大学で行っている多読授業実践の報告です。

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最初の授業では、学生に文字を隠した絵本を「読んで」もらうそうです。
それは、「文法と言葉がわかれば読めたということではない」ということを体感してもらうためです。
そこで、参加者のみなさんといっしょに絵本の絵をよく見てもらうミニワークショップを行いました。
講師の投げかける質問に答えながら、みんなで絵をじっくり見て楽しみました。文法と言葉の知識で活字を解読するのではない多読の精神?を理解していただけたでしょうか。

続けて、多読授業を行う際に参考となる工夫がさまざま披露されました。
学習者にはいっぺんにたくさんの本を提示せず、レベル0や1を提示しながら、個々に合わせて支援していくことや何回目からは「怖い話」「日本を知ろう」「昔話」などテーマ別に本を並べて、いかに読みたくなるかの工夫を重ねることなど・・・。

多読での教師の役割も他の授業とは違う重要な部分です。
知識を教えるのではなくて、あくまでも学生の多読が進むように支援することに徹することが繰り返し強調されました。
難しい本が読めることを奨励しない、自分なりの視点で本が楽しめることが重要で、教師はそのための支援をし、結果的に学習者が前に読めなかった本が読めるようになったり、スピードが上がったり、漢字がわかるようになったりするのだ、という話が印象的でした。学生の声の紹介もあり、みなさん、多読授業の様子が頭に描けたのではないでしょうか。

その後、質疑応答の時間をたっぷりとりました。

・読みの流暢さとは?
・簡単な読みものを拒否する学生がいたらどうするのか。
・評価はどうするのか。
・学生にさせるプロジェクトや課題はブックトークの他に何があるか。
・多読に15分ぐらいしか時間がとれない時でも実施可能か。
・子どもが読み聞かせから、字が読めるようになるまでの過程はどうすればよいか。

など、積極的に質問をしてくださってありがたかったです。
また、引き続き、多読の勉強会やセミナーにもご参加くださいとお伝えして、写真を撮って終了しました。

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★事後アンケートより抜粋

・具体的な多読の授業の進め方などを聞かせてもらえてありがたかったです。
・多読とは何か?が具体的にわかった。
・先生がお一人でなく、数人いらしたのは色々なお話が聞けて良かったです。
・実際に取り組みをされている先生方より、授業で注意されている点、学習者の反応、評価の方法などをうかがうことができ、授業で多読に取り組む際のイメージを掴むことができました。
・多読の基本から実践までお話いただき、勉強になることがたくさんありました。
・読み物の作成方法もできれば知りたかったです。
・子供に対する多読の授業についてもお話が聞けたらよかったです。
・ぼんやりしていた「多読」というものが形になって見えました。自分の授業でどうやって取り入れていくか考えます。子供にとって楽しい時間を作っていきたいです。ありがとうございました。
・学習者の伸びる力に焦点をあてる多読授業に魅力を感じました。
・他の先生方の質問も大変参考になりました。質問に対して先生方が丁寧にお答えくださったので、質問タイムも学びの時間となりました。今日の講座で、改めて多読の学習効果というのを実感し、前よりも実践してみたいという気持ちが強くなりました。

※7月にもまた同様の講座を計画ししています。
ぜひ、ご参加ください!

(粟野)