12月21日(土)第2回日本語多読支援研究会報告!

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2019年12月21日(土)に第2回日本語多読支援研究会が新宿NPO協働推進センターで行われました。

テーマは「私の多読授業実践をシェアします」
今回は、報告者と参加者が自由に意見を交換し合えるように、数人のグループでテーブルを囲み、発表者の実践報告を聞く形式です。発表は4組5名、全国から31名が参加しました。

日本語学校、大学などの機関別に振り分けられた4つのグループでは、開始前から、すでにメンバー同士のにこやかな自己紹介が始まっていました。電車遅延の影響で遅れそうだった方たちも何とか開始時間に間に合いました。

13時半開始。

*多読のおさらい

会員の片山から「多読のおさらい」を少々。「一人一人が自分の好きな本を楽しみながらたくさん読む」という多読を実現するために、何をしたらいいのか。そのために必要な4つのルールや支援者の役割などについて簡単に復習をしました。

*報告者と報告の概要紹介

続いて、司会の作田からの本日の主旨や流れの説明の後、発表者から報告の概要を簡単に発表してもらいました。

「達成感のP_20191221_134718_vHDR_Autoある多読活動を考えるー絵本多読の試み」
津金和代さん(横浜デザイン学院)

上級レベルの学習者に対する絵本多読活動の実践報告。多読授業の初めに絵本多読をおこなうことで、学生たちには様々な変化が見られた。さらに達成感のある活動をしたいと考えて取り入れた絵本作りに関する報告も。

 

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「多読授業の効果を学習者に実感させるには?」 
 大越貴子さん・浅井尚子さん(拓殖大学)

アンケートの結果から、授業内の教師の観察に比べて、学生自身は多読授業内での自分たちの日本語力の伸びを時間していないことを感じた。自分の日本語力伸びを自覚させることが、学習に対する動機づけとなり、より日本語学習が楽しいと思うことにつながるのではないか。そのために、授業に取り入れた活動についての報告。

 

「初中級の多読授業-受容~共有~産出」
P_20191221_134904_vHDR_Auto 岡安江津子さん(メキシコ・アグアスカリエンテス自治大学)

多読授業の中で、本を読む時間(受容)→学生同士で読みを共有する時間(共有)という流れを作っている。さらに、グループで絵本を作る活動(産出)もおこなう。共有、産出のためにどのような工夫をしているのかを報告する。

 

 

P_20191221_135032_vHDR_Auto「トルコにおける日本語多読支援の実践報告」
荒井礼子さん(元トルコ・チャナッカレ大学)

日本語入門期からの多読支援として、多読本の貸し出しをおこなっている。授業外で行う多読支援として、貸し出しをする際にどのような工夫をしているのかを紹介する。合わせて学生へのアンケート結果も報告する。

 

 

*セッション

各テーブルで改めてメンバー同士の簡単な自己紹介をした後、いよいよ報告会のはじまりです。発表者と参加者6,7名ほどがテーブルを囲んで座り、発表者の話を聞きます。PCで授業の様子を見せてもらったり、学生の書いたものを手に取ったりしながら報告に聞き入るうちに、司会者から「半分の時間が経過しました」との声が。後半の10分は、参加者から質問したり発表者との意見交換で、あっという間に第1セッションが終了しました。グループメンバーは次のテーブルに移動して、すぐに第2セッションが始まります。

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P_20191221_153410_vHDR_Auto第2セッションが終了したところで、いったん休憩。この間に、多読図書の販売などが行われ、参加者同士で交流する姿も見られました。そして、参加者はさらに2回テーブルを移動して、第3セッション、第4セッションと続きました。

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★各報告の内容と振り返り

最後に各発表者から、セッションで話した内容について振り返りをしてもらいました。

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「達成感のある多読活動を考える - 絵本多読の試み」  津金和代(横浜デザイン学院)

絵本を使った活動の報告だったが、ほかの絵本を使った活動の先生の話がきけた。

たくさんの絵本があって、どうやって探すか揃えるかというところに課題がある。

本を作る活動では、目の前に形としての成果物があることで、学習者にとって達成感がある。これから本を読むときにもいい影響を与えることができるのではないか。

 

「多読授業の効果を学習者に実感させるには?」  大越貴子・浅井尚子(拓殖大学)

 

ブックトーク作文に関しては、本の中の表現を借りたり、多読以外の授業で行った内容なども合わさって、一つの作品になっているのではないかという感想を参加者からいただいた。

また、他の教科で習ったことが結びつき、断片が一つになり、多読が学生の体に落ちてきているような感じがするという感想をいただいた。今後も「多読の効果」について、実践を通して考えていきたい。

 

「初中級の多読授業-受容~共有~産出」 岡安江津子(メキシコ・アグアスカリエンテス自治大学)

参加者からは結構学生たちが書けると驚かれたが、最初はそんなに書けなかった。少しずつやっていくと書けるようになると話した。

学生たちが楽しそうという意見がうれしかった。

読んだものを話しながら書くという活動はブックトークのライティング版ですね、という意見があり、自分の活動の位置付けに気づいた。

読む・話す。書くの活動について、それぞれがいやという学生はいないかと、質問があったが、メキシコにはいない。いたら、今後の課題になる。

産出ばかりに目がいっては困るという意見があった。しかし大学は何か評価しなければならない。

何かを作るというのは学生には達成感があるので産出活動はやっていきたい。

5年やってきてこれで最後だとは思っていない。今後も手探りで続けていきたい。

 

「トルコにおける日本語多読支援の実践報告」  荒井礼子(元トルコ・チャナッカレ大学)

本を継続して借りてもらうためのポイントは何かという質問があった。←やりとりがあることがポイント。人との関わりがあってできる。

集まってブックトークをしたらどうかという意見をもらった。

海外なので本が足りない←絵本もいい。ウェブ本もあるという意見をもらえた。

紙ベースの本を学生がほしがるので、印刷して使えるというアイデアをもらった。

日本人学生が本に付箋をはるというアイデアを伝えたが、付箋を貼るために、日本人が多読の本を読んだのは、日本人学生にとってもいい機会だったのではないか。

 

*交流会

その後は、茶菓をつまみながらの交流会です。情報交換をしたりお悩み相談をしたりと、有意義な時間となったようです。

 

閉会後も、参加者全員で会場の机といすの配置を直すところまで手伝っていただき、無事に研究会が終わりました。。

 

*参加者からのコメント

終了後のアンケートで参加者のみなさんからいただいたコメントをご紹介します。

 

各報告の内容に関連して

・多読≠読解ということがわかった。絵本多読の大切さを痛感した。

 

・本の貸し出し方や紹介(日本人学生が簡単な一言を付箋に書いて本の内側に貼る)など、ちょっとした工夫で読むきっかけになったり、多読に興味を持ち続けたりできる、そんなヒントをいただいた。

 

・(トルコで)本が少なかったそうだが、少ない(本だけではなくて、生の日本語に触れる機会全般)から大切にするということもあるのかなと思った。

 

・多読に入る前に絵本をみんなで読む、読んだ後にみんなでホワイトボードに話を書いて続きを考えさせるなど、是非やってみたいと思った。

 

・複数の発表者の話を聞いたり、みなさんと話す中で、評価のために本を作らせるのではなくて、学習者が自ら産出したくなるから本ができるというところに共感した。

 

グループでの話し合いから

・発表者と参加者の距離が近く、質問しやすい雰囲気だった。いろいろなバックグラウンドを持つ皆さんのお話が聞けて、とても楽しかった。

 

・他の日本語学校の先生と同じグループだったことがとても良かった。意欲ある学生や勉強のできる大学生とは違う、日本語学校あるあるが話せた。悩んでいるのが私だけではないということが分かり、安心した。

 

・本嫌いや日本に興味のない学生への対応の仕方など、様々なアドバイスをもらえてよかった。

 

・質問者の方が、困っていることや難しさを正直にシェアしてくれたことで、それについてアドバイスや意見の交換ができたように感じた。失敗談を聞いたり話したり、そのような時間も貴重だと思った。

 

*終わりに

今回は、第1回研究会の反省点を踏まえ、発表者と参加者が近い距離で話せるようにと、グループ別ツアー形式で行ってみました。

おおむね好評をいただきましたが、問題点もありました。特に発表者のみなさんは、同じ発表を4回もしなければならず、他の方の報告を聞くこともできなかったので、進行にもう少し工夫が必要だったように思います。アンケートでも、いくつかご指摘が寄せられました。取り上げるテーマのリクエストもいただきました。みなさんのご意見を参考に、今後の研究会の計画をたてていきます。(片山)