11月3日(祝・日)第49回「多読授業と読みもの作成」入門講座報告

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雨が降らないというジンクスのある文化の日、海外、地方からの方も含め、8名がNPO多言語多読の事務所に集まりました。英語多読体験ありの方も、また多読授業実践経験のある方もいらっしゃいました。

前半は、多読についての概論と多読授業の実践報告でした。概論はNPO多言語多読理事の川本が、実践報告は正会員で大学で多読授業をしている片山が担当しました。

まず、参加者の多読経験、実践経験の有無、この講座への参加理由をお聞きしました。その後、私(川本)たちが多読と出会い、日本語のレベル別読みものを作るようになった経緯をお話ししました。

多読で最も大切なキーワードは「楽しい」「大量」「絵と音」。支援者はこれを大切にするためにどうしたらよいのでしょう?気をつけなければいけないこと、多読のルールなどを実物や動画を使って伝えました。

片山の多読実践の報告では、まず、多読を始めたきっかけをお話しました。日本語教師をやっていくなか、「読解」の授業で本当に読む力がついているのだろうかという疑問にぶつかっていたときに、出会ったのが「多読」です。7年ほど前から、大学で多読の授業を始めると同時に、英語多読の実践者として、自分も多読を楽しんでいます。

そして、実際の多読授業の進め方の紹介。特に、支援者として気をつけていること(多読クラスは一斉授業というより一人一人に個別に対応する授業であること、読みたいという気持ちになってもらうための仕掛けなど)や、多読授業での学生の様子(お互いに本の紹介をしあうブックトークが読むことへの興味を促進していること、初めは辞書を引かずにはいられなかった学生も読むことに慣れてくると自然に辞書離れができることなど)をお話しました。参加者からのご質問、コメントでは、海外で多読授業をするときにどうやって本を準備すればいいのか、という悩みなども出されました。

午後は、サイト紹介、本の検索方法、市販本のリスト、12月21日の多読支援研究会の告知をした後、外国語を多読的に読む体験をしていただきました。

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英語とスペイン語に分かれたのですが、最後にはほぼ全員がスペイン語の多読を体験していました。英語はOxford Reading Tree(ORT)、スペイン語は、スペイン語のORTともいうべきColega lee シリーズと赤ちゃん向け絵本。すべて朗読音声付きのものを使いました。「スペイン語の赤ちゃん絵本がとても楽しかった!」という感想が聞かれました。

昼食の後だったので、「ORTを読んでたら眠くなった、学生も午後はこんな感じなんだとわかった!」という感想も。「文字の少ない絵本で、辞書をひきたくなったけど、我慢して最後まで読んだら、何となくわかった」という方もいらっしゃいました。

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最後は、2人ずつ、4組に分かれて、イソップ「ウサギとカメ」「アリとキリギリス」芥川「蜘蛛の糸」宮沢賢治「注文の多い料理店」から好きな物を選んでいただきました。

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作成した物を発表、講評。

中国の大学生がいる組は、学習者視点を重視し、文字を極力少なく、やさしさにこだわった作品に仕上がりました。一番苦労していたのは「注文の多い料理店」でした。ヒントは出したのですが、難しかったようです。最後にNPO執筆監修の「注文の多い料理店」を読むと、私が助言していた意味がよくわかったとおっしゃっていました。

 

アンケート記入、全体の感想、書籍販売で終了。

質問は、声かけのタイミング、準備する本の量、本の調達方法、海外の場合特に難しいという発言もありました。

「多読授業入門」購入希望が在庫を超え、ちょっとうれしい悲鳴だったことを書き添えておきます。

(川本記)