毎週土曜日「にほんごの本を読む会」(2019年9~10月)報告

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毎週土曜日3時半から、しんじゅく多文化共生プラザで「にほんごの本を読む会」を開いています。登録も申し込みも要りません。本を読みたいと思った人が、自由に参加できる会です。

9月と10月の様子を報告します。

9月は帰国や来日で、学習者の入れ替わりが多い時期です。9月と10月の参加者は、毎回5人前後でしたが、ほとんどの人が8~10月に来日したばかりの人たちでした。日本語学校や大学の学生さん、日本で働いている人やその家族が多いのですが、中には、出張などで日本に来て参加する人もちらほらいました。

その例がSさん。出張で日本に来たばかりでした。初めは「いつ日本に来ましたか」にもなかなか答えが返ってきませんでしたが、『西町交番の良さん』シリーズ(レベル別日本語多読ライブラリー)やイソップの話を楽しそうに読んでいました。
2冊ほど読み終わったときに声をかけて話してみると、今度は、かなり滑らかな日本語で本についての感想や、仕事で日本語を使うことなどを話してくれました。最後のブックトークでは、ストーリーのおもしろさを要領よく話すことができました。5、6冊日本語の本を読む間に、Sさんの頭の中が日本語に切り替わったようでした。

Lさんは、福岡に用事があって来日。「今日、1回だけしか参加できませんが、いいですか」と言って、会に参加しました。
既に、レベル別日本語多読ライブラリ-(アスク出版)を読んだことがあり、「今日はまだ読んでいない本を読みたいです」と言って、NPO版にほんご多読ブックスの『「どうしてコウモリは昼、飛ばない?』などを選んで読み始めました。とても楽しそうに読んでいました。海外でJGRを読んでいて、日本に来たときに「にほんごの本を読む会」に参加する、私はそのことをとてもうれしく思いました。

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いつもとは少し違った「本を読む会」になったこともありました。

その日の参加者4人は全員初めて参加した人で、その中の2人は日本語の勉強を始めたばかりの人でした。その2人のために、私が『やさいのおなか』の読み聞かせをしていたら、自分で本を読もうとしていた2人も読み聞かせの輪に加わって、本の置いてあるテーブルをはさんで、立ったまま、1冊の本を読んでいくことになりました。

私が「これなあに」と言うと、それぞれ思いついた野菜の名前を言って、当たるととても喜んでいました。日本語がかなりわかる人も、そうではない人も、一緒に楽しんでいました。

『やさいのおなか』が終わっても、4人がそのまま動かず、次の本を待っているようだったので、『なかみはなあに』『まるさんかくぞう』『りんごです』『とってください』など、文字の少ない本を読んでいきました。

『かばががばー』(「大きなかがく」シリーズ)は大きな写真をゆっくり見ていきました。私は「大きな口」「目」「しっぽ」など、写真からわかる簡単な言葉を言うだけで、説明は省きました。ページをめくるたびに、日本語や中国語、英語などを、それぞれつぶやいていました。

最後に文字のない『かさ』を読みました。そこでも絵を見て、「公園」「友だち」「犬」「橋」「ドーナツ」「車」「人形」など、知っている言葉を口々に発していました。私はページをゆっくりめくるだけだったのですが、それぞれの人の頭の中でストーリーができあがっているようでした。

結局この日は、参加者全員の気持ちが私を後押しして、最後まで全員への読み聞かせをすることになりました。今までにない「本を読む会」でした。

参加者のおかげで、毎回楽しい経験をさせてもらっています。これからもたくさんの人が本を読みに来てくれることを、そして、本を楽しんでくれることを願っています。 (正会員 白石)