インドネシアの高校から日本語多読実践報告!

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インドネシアの高校で日本語を教えているディナ・アルディアンティさんから多読実践報告が届きました。日本語がほぼゼロの生徒との多読活動などヒントや考えさせられることがたくさんあります!
今回は、会員・高橋亘さんにまとめてもらいました。

ディナさんはインドネシア出身で、教師研修生として日本に留学しました。現在は高校でインドネシア語と日本語を教えています。東京外国語大学留学中の2014年11月から2016年3月まで、筆者(高橋)が開催していた授業外の日本語多読活動に参加し、修了レポートのテーマに日本語多読を選ぶほど多読に興味を持ちました。帰国後は、赴任校で多読支援を試みています。そのレポートが届きましたので、ご紹介します。

ルウィリアング第一国立高校の多読活動
ディナ・アルディアンティ(インドネシア)

1. 2016年9月中旬
• 参加者:15人 大学からの研修生
• 場所:学校図書館
• やり方:
仮名が読めない研修生なので、本の絵を読んで、内容を発表してもらった。
• 感想:
研修生らの意見を聞いたところ、多読活動が外国語の勉強の良い方法の一つだという感想があった。

2. 2017年5月18日ディナさん1
• 参加者:10人(12年生=高3)
• 場所:学校図書館
• やり方:
生徒らは多読用の図書や絵本を選んで、グループを組んで読んだ。グループでその本のストーリーについて話し合った。最後に、他のグループにストーリーを発表した。
• よかった点:
生徒は自由に本を選ぶことができた。
• 課題:
まだ上手に読めない生徒は自信がなくて、すぐに読むのを止めてしまった。また、本を読める人に任せて、ストーリーを聞くこともよくあった。
• 感想:
日本語の勉強では、仮名ができないので困る人がいたが、図書館での多読活動に参加したら、仮名の読みもよくできるようになった。

3. 2017年8月24日ディナさん2
• 参加者:6人
12年生(高校3年生)、10年生(高校1年生)
• 場所:学校図書館
• やり方:
多読活動を紹介しながら、参加者は自由に好きな本を選んだ。読まない人がいたので、日本語に興味を引くため、読むのではなく、本の内容だけ見てもらった。
• よかった点:
参加者が読んで字が分からずにストレスになることはなかった。
• 課題:
生徒は絵だけを見たので、多読活動の目標、つまり語彙を増やすことができなかった。
• 感想:
12年生が来てくれたので、10年生にストーリーや日本語や日本文化のことが紹介できて、よかったと思う。

4. 2018年8月8日ディナさん3
• 参加者:34人、12年生
• 場所:教室
• やり方:
日本語の授業中に、教室活動で多読活動を行った。学校で日本語科目は語学系の生徒しか受けていなかったが、仮名を勉強する時間があまりない学生だった。生徒は4人ずつのグループに分かれ、選んだ多読用の本を一緒に読んだ。その後、グループで本のストーリーなどを発表した。
• よかった点:生徒は楽しく本を読んで、本のストーリーについて、話し合った。読んだ後、シートに感想などを書いてもらうことができた。ひらがなやカタカナをまだ読めない生徒がいたので、本を読むことは難しかったが、絵を見て、話を想像することができた。
• 課題:
本を読むことに抵抗がある生徒が大勢いると感じた。本が読める人は発表の時、グループを代表したので、字が読めない生徒は安易にその代表者に発表を任せることも少なくなかった。
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その後、ディナさんに多読を通じて感じたことや、活動実施上で困難だった点などを
聞きました。

Q. インドネシアの高校での活動を実施して、改めて多読についてどう思いましたか。
A. 【仮名の読みや日本文化についての知識が身につき、日本語への興味を引く】
多読活動を通して、初級の日本語、特に仮名の読み練習ができ、日本文化についての知識が身についたと実感できました。また、日本語学科に進学する生徒も参加しましたので、日本語に対する興味を引く手段の一つだと思いました。多読活動をこれからも続けてほしいという生徒たちがいたので、持続的に日本語多読活動をやりたくなりました。うれしいことに本校では語学系の授業があります。そのため、教室で勉強としての多読活動を行うことができました。

【活動時間の設定が難しい】
しかし、その後、カリキュラムの関係などから一旦多読活動を止めなければなりませんでした。
2019年1月下旬に入り、より近い学校でも授業をすることになり、ルウィリアング高校で教える時間が減りました。新しい学校には日本語科目がありませんので、私は自分自身が日本語多読活動をどのように続けるか模索中です。

Q. 生徒たちはどんな本を読んでいましたか。
A.  【絵が多くてきれいな本が好まれるが、図書の確保が課題】
主に『レベル別日本語多読ライブラリーレベル0、1』の本を読んでいました。その他に、五味太郎の『ことばがいっぱい 言葉図鑑』シリーズのような絵本も選んでいました。絵が多くてきれいな本が一番多く読まれていました。しかし、生徒のレベルに合う図書を探すことは容易ではありません。また、日本語の図書はここでは珍しいので、値段が高いです。本が足りないことも多読活動を行うための支障の一つです。

学生の成長を感じることができ、教師としても多読の良さを感じているディナさんですが、海外現場特有の図書確保に関する課題も見られるようです。その後のレポートがまた届きましたらご紹介します。
(会員・高橋亘)