6月24日(日)第41回「多読授業とリライト」入門講座報告

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6月24日(日) 第41回「多読授業とリライト」入門講座報告

すっきりしない梅雨空のもと、14名が参加してくださいました。今回初めて多読に出会った日本語学校の先生、日本人外国人問わず大学生になんとか本を読んでほしいと願う大学の先生、これからマーシャル群島に日本語を教えに行く方、アメリカの大学でこれから多読を実践したいと考えている先生、英語多読経験があり、日本語多読を最近知った大学生、昔話の再話の勉強をされている小学校の司書の方、6年ぶりにみえたインターナショナルスクールの先生などバラエティーに富んでいました。

この講座を何で知ったかというアンケートの結果、14名中5名が当NPOのHPという回答でした。HPを見てくださっているんだとうれしくなりました。

今回の講師は、NPO副理事長粟野真紀子と、NPO会員、大学講師の高橋亘さんです。

午前の部

【10:30 ~11:30 】 粟野真紀子

今回は、多読は初めて、と言う方がいらっしゃったので、まず、多読のイメージとは?というところから出発しました。

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(私たちが作った多読用図書を読んだことがないという先生がいたので、みなで回覧)

教科書の同じ文章を文法と語彙を説明した後で全員同じものを読むという従来の読解授業とは全く違う、ひとりひとり自分の基準で選んだばらばらのものを読むのだということを伝えました。私たちの英文読解のだめさ加減に話が及ぶと、みなさん笑いながら頷いていました。

大量のインプットが必要で、おもしろいかどうかが一番のポイントであり、そのために多読の読み方のルールがあることを話しました。
いつも疑問、質問が多いのが「辞書をひかない」というルールです。
辞書に頼らない読み方を身につけてほしいからこのルールがあるのですが、多読的な読み方が身についていれば、読み終わってキーワードなど引いてもいいだろう、また、知らない言葉を100%調べたい’優等生’の学習者から辞書を取り上げるとストレスが大きくて多読がうまくいかないときがある、そのときは最初は緩く使用を認めるが、長い目でやはり辞書は引かないように指導する必要があだろう、など学習者によってケースバイケースであることをお話ししました。
最後に、教師の役割、実際の様子を映像で見ていただきました。

【11:30 ~12 :30 】  高橋亘

高橋さんは、2010年8月のNPOの多読セミナーで多読と出会い、12月に日本文化体験に多読を取り入れたそうで、ベオグラード大学(セルビア)と東京外国語大学での実践と課題を報告してくださいました。

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ベオグラード大学では、大学側の理解があったこと、日本語を学ぶ動機つけ不足の解消になったこと、が成功の要素。だが、海外で日本語学習者に適した書籍は入手困難、ほぼ自腹でそろえたとのこと。課外活動として実践。後任の先生の元、一時中断するも学生からの要望もあり復活したそうです。
その後、読んでいる側でおしゃべりをされると気になるとの意見もあり、「ペラペラカフェ」を作って話すことは別活動にしたり、学生の自主活動「部活」として運営されるようになり続いているとのことでした。

東京外国語大学でも多読を実践したところ、読む力、語彙力、動機付け、交流、自律という面での効果があったそうです。
支援する高橋さんの側にも次のような変化があったと語ってくださいました。

・学生に口出しをしなくなった
・わからない点をいっしょに考えるようになった(待てるようになった)
・自分自身、前より本を読むようになった

学生の自律を見守ると、自然に支援者も「教えない」方向にいくようで興味深いです。この感想は多読支援をしている教師の共通しているように思います。

ベオグラード大学で多読を実践した学生のその後の調査で、半分以上が多読を続けているそうです。

参加者から質問

Q:強制しないと言ったが、支援者が自分がおもしろいと思った本の紹介を授業の最初にするのはなぜ?

A:いままで手に取らなかった馴染みのないものを紹介することで本の選択肢が増えると思う。でも、「おもしろくなかったら止めてくださいね」と必ず言うし、強制はしない。

午後の部
【13:30~14:00】

◆多読的体験

昼休みをはさんで、韓国語の絵本をお見せしてどんなことばを言っているのか実際に一緒に読んで初心者の多読を体験してみました。みなさん、とても和んで楽しそうでした。

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次に、多読に適した読み物のリライト体験です。4グループに分かれていただきました。

前半は、レベル0で、「北風と太陽」「アリとキリギリス」
最近は、たいていグループに必ず絵が描ける方がいるのが驚きです。

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(やさしい読みものを作った後のシェア。それぞれ工夫があってたのしいものが出来上がりました)

「アリとキリギリス」では、「食べ物を運ぶ」の「運ぶ」がこのレベルでは使えない語彙なので、絵に任せて何とか回避して作っていました。「それはなんですか?」「食べ物です」というように。
すばらしい!方や私たちの「アリとキリギリス」は、これも絵に任せて「食べ物を運びます」と堂々と使ってしまっています。

「北風と太陽」では、競い合っている北風と太陽の言い合いに苦労の跡がみられ、絵に語らせて言葉を最小にしたグループもあります。150字に満たないほどの入門向け「北風と太陽」ができました。「服を脱ぎます」の「脱ぎます」、「~のほうが強い」の「~のほう」はレベル0では使えない逸脱表現です。
しかし、私たちの本では、両方、使っています。

そこで、質問がでました。

Q:絵で語らせるなら、言葉は少なくていい?それとも絵を見ればわかるのなら、難しい言葉も使ってしまう?

A:両方の場合がある。読む人のレベルによる。文字のない本、ほんとに文字が少なく、絵でわかる本は、日本語の入門者に必要。「よむよむ文庫」や「多読ブックス」は、ひらがなが読めて、少し言葉を知っている人向け。だから、絵を見ればわかるところでリスト外の言葉も使う場合がある。しかし、使い方にも注意が必要。

後半は、「注文の多い料理店」「蜘蛛の糸」冒頭部分をレベル3か4にリライトしてみました。

文化的背景をどう伝えるか、レベル3や4を選んだものの、どこは削除して、どこは削除してはいけないかを見極めるのが難しそうでした。
あとで「原作の雰囲気を残しながらリライトするのは難しかった」という感想もありました。中級以上のリライトはそこが難しく、でも面白いところでもあります。

もりだくさんの内容でしたが、みなさん、和気あいあいと楽しく語らった一日でした。
即、活動に賛同し、会員になってくださった方二人、本をたくさん購入して帰られた方、NPOのトートバッグに気づいてくださり、購入したくださった方、大変ありがたかったです。
今後ともみなさんとつながって、実践や読み物づくりの輪が広がっていったらいいなと思っています。
よろしくお願いします!

(川本)