今回は珍しく土曜日開催です。京都の大学から5人の先生、長野からボランティアの支援者の方2人、日本語学校の先生、など総勢12名の参加があり、早々と満員御礼になりました。
以前は多読という語学習得の方法や私たちが作っている多読のための読みもののことを知らない方も少なくなかったのですが、最近は知らない方は少なく、やっと多読ということが日本語教育でも少し広まってきたのだと嬉しく思っています。
今回の参加者は、まだ多読を実践していない、これから実践を目指す方たちです。
講師の粟野が、自身の日本語学校での経験から、従来の読解授業では読めるようにならないこと、それはなぜか、多読がその解決になるのはなぜかを話しました。また、その効果を動画をはさみ、実例で示していきました。楽しく読んでいる学習者の特徴や、思わずお気に入りの読みもののストーリーを話し始める生き生きした学習者の姿、日本語は大嫌いだったという文字嫌いの学習者が多読でいつの間にか漢字がわかるようになったと喜ぶ姿に、みなさん、多読の醍醐味を感じたのではないでしょうか。
参加者の中に英語多読をして、数ヶ月後にかなり分厚い英語のペーパーバックが読めるようになった方がいらっしゃったので体験談を少し話していただきました。これにはみなさん、興味津々で、「どのくらい読んだのか」「どのくらいで大人の本が読めるようになったのか」など質問がいろいろ出てきました。
その後短時間ですが、Oxford Reading Treeの文字のない本で絵を読む体験をしていただきました。読むというのは単にそこに書かれた文字を読むのではなく、本の世界をまるごと楽しむことであることをわかっていただきました。
少し文字がある本では、みなさんがわからないという「cross」が出てくる場面を探して比べてみました。いくつかの場面の絵をじっと見て、みなさん意味がわかったようでした。状況で意味がわかっていく、そこが多読の醍醐味ですね。
日本語のGR以外の絵本、アニメブックス、漫画なども紹介して、昼休みに。
午後は、松田が講師で、リライト体験です。リライトのポイントを軽く説明し、最初はイソップから「ウサギとカメ」「北風と太陽」をレベル0で取り組みました。4つのグループに分かれて、どちらかを選んでいただきました。最初に構成場面を考えて言葉をのせていきます。罫線のない紙をお渡ししたところ、文字が曲がらないようにと、蛇腹に筋をつけたり、定規を使ったり、ページごとに分担して仕上げたり、いままでにない作業上の細やかな工夫に講師一同目を見張りました。
「北風と太陽」のリライトで、最後に旅人が服を脱いで川に入ることでわからせるという作りもありました。太陽がガッツポーズ、北風がガックリという絵で、両者の競争をわからせるものです。絵に語らせているのでこれでOKとみるか、言葉で場面を組み立てる努力をすべきか、迷うところですね。
次はグループメンバーをかえて、「走れメロス」「注文の多い料理店」をリライトしました。レベルも考えていただきましたが、期せずして4グループともレベル4になりました。「走れメロス」では登場人物の名前を短い名前に変えたグループもあり、これは講師にとって初めての経験でちょっとびっくり。メロスの親友セリヌンティウスを、セリヌンにしたのです。「いいかも!!」
このレベルでの文学作品のリライトで、みなさんの感想は二点に集中しました。ひとつは、「使える言葉が限られていて大変、こんなに苦労するとは思わなかった」。ひとつは、「文学作品の場合どこまで原作の味を残すのか」ということでした。味を残しすぎてすらすらと楽しく読めなくなっては駄目なので、バランスが大切と答えました。
みなさん、予想以上に収穫があった、ぜひ、なんとかして取り入れてみたい、また作品作りにも参加したいという方もいらっしゃいました。
(川本)