多読的スピーキング 絵本の読み聞かせ M♪さんの場合
2013年6月15日
カテゴリ : 聞き読み, 多読的シャドーイング, 多読的おしゃべり, をさなごのやうに, 多読のパラドックス
タグ: 多読的スピーキング, 聞き読み, 読み聞かせ, 音は落ちる
同じ話題の前便で、プさんの読み聞かせのどこがすばらしいか書きました。
岩手県温泉の旅から帰ったので、お約束のM♪さんの読み聞かせについて書きます。
みなさんには、なるほど、外国語の音というのはそういう風にして日本語の音とは
違うのだと思ってもらえればと考えています。
けれども、そこから「正しい発音」などという方向へは夢向かわないでください。
そんな方向は無限の時間がかかるだけです・・・
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そうではなくて、向かうべきは逆の方向です。つまり、全体から細部へ向かう方向です。
プさんやM♪さんは一つ一つの音を正確に出そうとして、あんな風になったわけではありません。聞き読みやシャドーイングで物語から文章へ、そして一つ一つの音へと到達したのです。
今回は 正しい発音 を目指したわけではないM♪さんが、たくさん聞き読みをするうちに
どんな風に学校英語を離れて、英語の音の特徴を獲得するに至ったか、見ていきましょう。
00:04秒あたり Help! Everything looks big! で子どもたちはもうわくわくでしょう。
さすがに子どもに読み聞かせるのはお手の物--メリハリや登場人物の語り分けも
台詞と地の文の語り分けなどは堂に入っています。
00:12秒あたり It works! 音もリズムもメロディーも完璧ではないでしょうか?
このあたりまでで一番英語らしい特徴が出ている一句ですね。 前回にも書きましたが
M♪さんも、プさんも、CDを聞かずに自分の音で読み聞かせしています。
実にたいしたものだとわたしは思います。
続く 'Oh, no.' said Biff and Chip. の Oh, no. の二重母音や
said と and の D の消え方、Biff の F と Chip の P の消え方も、
M♪さんは意識していないと思いますが、英語の特徴そのままですね。
Kipper has shrunk. では少しだけ日本語の特徴が出ていますが、shrunk の
母音はよい!
00:25秒あたりから Kipper の口調と、地の文と、Jack の語り口の言い分けが
すごいです。これはやはり日本語で子どもに読み聞かせをした経験が活きているのでしょうね。
00:45秒あたり Jack が魔法を間違えて That's not quite right. の口調は
まったく内容の通りです。一体どこでこんな「正確な」リズムとメロディーを身につけ
たんでしょうね!?
01:05秒あたり ここは一つのハイライトですね。 I AM sorry. と am を
強めています。それもごく自然に、自然に、自然に・・・ わたしだったら、ここは
ものすごく強く意識して強めるでしょうね。なんであんなに自然に英語らしい
強調の仕方ができるのか。もう一度言いますが、CDは聞かずに自分の音で
朗読しているのです!
そのあとに続く I can't make him big. で big が強調されているのもごく自然で、
英語としてもごく自然。強調の程度もぴたり。
続いて、Chip was cross. では、声がいかにも cross でしょ? あ、それから、
ほとんど人がそうなのですが、聞き読みやシャドーイングで英語の音の特徴を
掴んでいく順番はたいてい 子音が先で、母音があとです。
M♪さんの場合もプさんの場合も、子音が先に英語らしさを備えて、がっちり、
くっきりしています。二人とも母音はまだ「伸びしろ」があるというやつですが、
Chip was cross. の Chip の母音は実に英語らしい!
01:25秒あたり Just then, the key glowed. で、Just then は普通に出て、
それから the key を強調して、そこからブレーキがかかってゆっくり glowed と
落とすところ--Oxford Reading Tree をよく知っているからできる技ですね。
そして、大切な決まり文句を知っている通りに大切に表現できるところがすごい!
そこからも英語の音の特徴をしっかり掴んだ読み方が続きますが、
最後の He was still small. の L の消え方もぴたりです。
というわけで、いま挙げたのはM♪さんの音のよいところの一部を挙げただけですが、
これだけでも、とてもそんなに細かいところまで気にして読み聞かせなどできないや、
と思ってもらえたら、一生懸命説明した甲斐があるというもの。
つまり、そんな細かいところに期を配らなくても、聞き読みをたくさんして、
多少シャドーイングを活用するだけでこれだけカタカナ英語を離れることができるのです。
ぜひ、「一つ一つの発音を正しくする」のではなく、物語全体から入ればこんなにも
細かいところまで、つまり「一つ一つの発音までよくなる」のだということに注目してください。
もう一度 プさんの読み聞かせにリンク を貼ります。
プさん、M♪さん、ずいぶん俎板に載せて切り刻んでしまいました。
ありがとう!
(でも、これは読んでいないことを祈ります。意識するとよくないかもしれないから)
(読んでしまったら、すぐに忘れてください・・・)