2月17・18日 南カリフォルニアで2つの日本語多読ワークショップ!

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南カリフォルニア大学(17日)とカリフォルニア大学ロスアンゼルス校(18日)で、日本語多読のワークショップがありました。
南カリフォルニア大学は2015年10月に第1回多読ワークショップを行っています。その後、2016年にワシントン大学ポートランド州立大学でワークショップがあり、西海岸の大学の間に多読が少し広がりました。今回のワークショップでは、東海岸、中西部を含め6本の多読実践報告があるとのことなので、それを聞くのを楽しみに出かけてきました。

ワークショップに2日先立って明るい日差しの降りそそぐ南カリフォルニア大学のキャンパスに到着しました。初級後半、中上級クラスの多読授業を見学させていただこうという計画です。

授業は図書館で行われています。2年前の訪問の時からさらに図書が増えて、レベル別に手に取りやすく配架されていました。
先生は、とり置いてある多読図書をカートで部屋に運びますが、当日、図書館の棚からとりたいものをとって席に着く学生も。

USC_Library

初級クラスも中上級クラスも、最初に学生による絵本の「読み聞かせ」があり、それから本紹介と続き、そのあとは、ひとりひとりの読書タイム。
途中でシャドーイングも取り入れられていましたが、しばらくシャドーイングをした後は、また読書へ戻っていくという流れでした。

「読み聞かせ」では、適度な長さの絵本が選ばれ、オノマトペの「ぐうぐうぐう」「ドッスーン」などには聞いているほうから自然に笑い声が上がっていました。

USC_tadoku8
2つのクラスを通じて印象的だったのは、難しいと言いながらもマンガ「ハイキュー」をくいいるように読んでいた学生がいたこと、ブックトークで小説「デューク」を上手に説明した上級の学生が、とてもやさしいレベル0の「肉じゃが」を手に取っていたこと、日本びいき?の年配の大学教師がレベル1や2を楽しそうに読んでいたことなどです(ノートパソコンには「トトロ」のステッカー!)。ひとりひとりの自由な「読書」になっている!と思いました。

さて、17日(土)。
朝、9時半から第2回日本語多読ワークショップ(Second USC Workshop on Japanese Extensive Reading)が始まりました。参加者は約45名。学期中にも関わらず、こんなに集まってくださるとは!みなさん、多読に関心が高いということなのでしょう。

最初に筆者(粟野)が、「多読とは?~その意義と方法~」というタイトルで話しました。
前回のワークショップに参加された方は三分の一ぐらいいたでしょうか。すでに多読授業を実践している方が十数名。多読について初めて聞くと言う人も数名いらっしゃいました。

USC-1
まず、言葉は、それが使われる状況、場面とともにたくさん吸収していくことが獲得の近道ではないか、それには多読の方法が理にかなっているのではないか、という多読の基本の話をしました。また、「好きなように楽しく読むのが多読なのに、ルールがある!」と何かと学習者(支援者とも!)とその解釈で衝突しがちな多読のルールについて、どんな意図があるのかについて詳しく話したつもりです。さて、言いたいことがうまく通じたかどうか…。

当日のプログラムは下記のとおりです。

KEYNOTE SPEAKERS:

Makiko Awano – Vice President, NPO Tadoku Supporters

Noriko Hanabusa –Professor of the Practice, University of Notre Dame

Presentations:

“Student-Faculty Collaboration Project to Create an ER Program,”

Brianna Kosmer, Pa Dra Lee, and Tomomi Kakegawa, University of Wisconsin Eau Claire


「日本語クラスの一部としての多読:教師の見方と学生の受け止め方
 Teacher’s View and Students’ View Towards Extensive Reading in Japanese Language Courses

Nana Onishi, University of Minnesota-Twin Cities

 

「手探りの多読実践:初心者から上級者までの多読 Exploring and Incorporating Extensive Reading Activity into entire four year curriculum

Tamaki Terada, Pomona College

 

「オレゴン大学における多読の要素を授業に取り入れる試み Report on Tadoku Element Incorporated in a Regular Course at University of Oregon

Naoko Nakadate, University of Oregon

 

「ワシントン大学における多読クラブの試み Tadoku Club at the University of Washington

Izumi Matsuda, University of Washington

 

「日本語多読読み物作成実践報告(A report on hands-on experiences to create Japanese extensive reading material)

Maki Irie and Yumi Matsumoto, University of Southern California

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みなさん、カリキュラムの中にどう取り入れるか、どう成績をつけるか、あるいは課外のクラブとして行うかなどに知恵を絞って試行錯誤していらっしゃいました。多読は一人一人への指導であるし、その成果が点数で測れるようなものではないことからさまざまな点で授業の形態と合いません。それでも、先生方が何とか学生に多読をしてほしいと思い努力されている、そのことにとても感激しました。300冊近くの絵本に朗読音声を準備してしまった先生、ボランティアで課外の多読クラブの支援を続ける先生、自主的に集まって多読教材を作った先生たちのグループ…頭が下がります。

最後に、ノートルダム大学の纐纈さんが、5年間の多読授業の体験を通して教師として学んだことを話してくださって、また、多読の基本に立ち返ることができました。そのあとの小グループに分かれての話し合いも白熱し、あっという間に4時半になり閉会しました。

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※今回の発表資料など詳しいことはこちらをご覧ください。
http://dornsife.usc.edu/eascenter/jerws/

 

18日(日)UCLAでの多読ワークショップ
2日目はカリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)へ移動。会場になったRoyce Hall は、とても美しくて立派な建物で、思わずみんなで歓声を上げたり、写真を撮ったり。何も知らずにお邪魔しましたが、映画『天使と悪魔』など数多くの映画に登場している有名な建物なんだそうです。

Royce Hall

午前は、この建物の中で、UCLAでの多読実践のお話を伺いながら、多読授業をする上での問題点などについて語り合いました。
午後は、図書館へ移動して、司書のバイアロックさんの司会の元、小グループに分かれて本のレベル分けについての話し合いをしました。
日本人向けの絵本や児童書も、私たちNPO多言語多読の本のレベル分けに沿って分けようと考えたグループもあれば、「ひらがなのみ」「ルビ付き漢字が少し混ざっている」などの表記でレベルを分けると考えたグループ、数字でレベルをあらわさないで別のマークで表そうとしたグループ、そもそも分け方はおおざっぱでいいのではないかと考えたグループなどそれぞれバラバラで、レベル分けの問題がいかに難しいかがよく表れた結果になりました。

この図書館には多読本の棚があり、私たちが作った「よむよむ文庫」や「にほんご多読ブックス」が丁寧にカバーをかけられて収まっていました。

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これからも、学生さんたちに楽しく読んでもらえるような本づくりをしなければ、と身が引き締まる思いでした。

ところ変われども、多読支援の話は尽きず、言いたいことを言って共感したり、盛り上がったりの二日間でした。
この充実したセミナーを準備してくださったスタッフのみなさん、ありがとうございました。
今後の発展がますます楽しみです!

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(粟野)