2017年3月12日(日) 第5回多読祭り報告!

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桜の開花と共に春の恒例行事となりつつあった多読祭り。今年は開催が2週間早まったためか、あるいは単純に春の歩みが遅い年なのか、まだしっかり冬が居座っているかのような寒い日でした。しかし、ひとたび会場に足を踏み入れると、そこは90名を超える参加者と再会を喜び合うタドキストたちの熱気で暖まった別世界。名札の他に、昨年好評だった自分の好みや所属をカテゴライズするシールは今年も用意されていて、一部バージョンアップが施されたものもあり、皆、思い思いに自分を飾り立てていました。

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最初のプログラムは「ゼロから始める英語多読体験会」、酒井理事長の講演から始まりました。この「多読とは何ぞや?」で語られる多読の人間国宝のお二方の話や、電通大での学生との経験談は、初めて耳にする人にとっては「目から鱗が落ちる」か、或いは「胡散臭さ満載のペテン師」と思わせるか、どちらに転ぶかわからないもろ刃の剣ですね。ここで素直にヘエーッ!?と思える人は自分でもできるかな、やってみようかなと、一歩を踏み出せるけれども、そんな調子のいい話があるわけないと疑ってしまうと、そこで終わってしまいがち。しかし中にはあまりに出来過ぎた話だから、一つ自分が嘘を暴いてやろうと思い立って、ミイラ取りがミイラになった例もあるので、ことはそれほど単純でもなく、そこがまた面白いのであります。さて今回の参加者はどちらに転ぶでしょうか。騙されたと思ってとにかくやってみる、多読の道はそこからでしょう。

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講演に続いてORTを実際に手に取ってもらうワークショップに移りました。テーブルごとにおなじみのメガネ探しや変な人探しに、crossやmessやstuckやOh, No!探しをワイワイガヤガヤと。今回は更に見聞を広めてもらうために、Step into Readingやノンフィクションものなど、種類やジャンルの違うやさしい本もたくさん投入されました。たまたま私のテーブルには小さな女の子とお母さんがいましたが、その子はお気に入りのElephant and Piggieを見つけたが最後、他の本には目もくれなくなりました。それが微笑ましくもあり、しかし運営側の思惑通りには中々いかないものだと改めて感じたりもしました。

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(ワークショップでは、実践者と、これから多読を始めてみたいという方たちとの交流の機会になりました)

酒井理事長のワークショップでよく出る話題の一つが「head=頭ではない」、今回もありましたね。私その講演の二日後に偶然手にした絵本で、なるほどと思わせる事例に遭遇。本題からは外れますが紹介させてください。

Finders Keepers
Amazonで冒頭部分が読めます!

1951年に出た古い絵本“finders keepers” by Will and Nicolas、その冒頭がこうです。”Two dogs were digging in the yard. One had a spot on his head. His name was Nap. The other had a spot on his tail. His name was Winkle.”

絵を見ると一匹の尻尾の先が白い、これは分かります。ところがもう一匹は鼻づらから口の周りまでが全部白いのです。日本人ならこれは耳と耳の間が白いのかと思いそうですが、そうではなかったのです。犬のheadが正しい例かはわかりませんが、自分ではheadが見事に腑に落ちました。脱線失礼。

昼休憩に入り、遠方から応援に来られたタドキストさんや、久々に会う方々と、昼ごはんを食べながらのおしゃべりに花が咲きました。人の動きは予想が難しく、今回はどういう理由からなのか、午後から来場された方が多く、スタッフさんは食事そっちのけで受付対応に当たっていました。恒例の多読本とお菓子のチャリティー販売のコーナーも支払い方法を工夫したことで、一時に人が集中することもなく、落ち着いて品定めができたようです。

(事務局より:今年の売上金は60,700円になりました。この売上金はNPO多言語多読に寄付という形で還元され、多読支援・普及活動に使用されます。みなさまご協力ありがとうございました!)

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午後の部はNPO多言語多読の活動報告から始まりました。全体報告として大賀さんから「出版事業」「実践研究事業」「支援者養成事業」「普及啓発事業」の説明がありました。日本語多読からは日本語多読ブックスが出版10周年を迎えたことや、海外での日本語多読の広がりなどの報告がありました。韓国語多読は月2回の活動を大いに楽しんでいて本も増えたこと。スペイン語多読も順調に回を重ねていて、今回はパネルを使って歌いながらのスペイン語読み聞かせも披露してくださいました。フランス語多読も、オフ会の延長のような形で始まっています。

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スペイン語多読の会からは、歌での報告!

昨年この場で準備が始まっているという話があった、英語多読講座の卒業生による自主的な活動ですが、今回は「たどくらぶ」として昨年7月にスタートし、毎月一回のペースで行われているという報告がありました。この活動の参加費はNPOの普及啓発事業に充てられているそうです。「たどくらぶ」メンバーによるマザーグースの輪唱(ヴィオラとパーカッションの生演奏付き!)、バイトサイズ・ブックトークの興味深い実践報告などもあり、本当に盛りだくさんでした。

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たどくらぶは活動報告とともに、マザーグースで輪唱を披露!

続いて開催前から関心が高かった特別企画「字幕なし多観のすすめ」の発表がありました。多読三原則になぞらえた「字幕なし多観三原則」は、「字幕を付けない」、「セリフは聞き取れなくてもいい」、「セリフがわからなくても楽しめるものを探す」、それぞれに具体的な実例があってわかりやすく、とても説得力のあるレクチャーでした。自分の好きなジャンルだったり、好きな俳優が出ていれば、たとえストーリーを完全に理解できなくても楽しめるはず。とにかくたくさん、あるいは何回も観ているうちに、自然と理解度が上がってくるそうです。何だそういうことかと腑に落ちることが多くなるんですね、きっと。字幕にばかり捉われていると、大切なシーンを見落とすこともあるとか。

わからないこと、聞き取れないことを恐れずに、字幕なし多観に飛び込んでみようという大胆な提案は、多くの参加者に強い印象を残したようです。幸いなことに今ではYou Tubeにも映像素材は無尽蔵にあるし、HuluやNetflixなどのドラマ・映画のインターネット配信サービスを利用すれば、少ない費用でいくらでも楽しめます。かつてよく言われた多読貧乏ですが、字幕無し多観に関してはその心配すら要りません。やらなきゃ損ですね。

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今日から、字幕なしで楽しんでみませんか?

休憩を挟んで午後の部の後半戦は、参加者全員を巻き込んだ、お気に入り本紹介大会でした。持ち時間一人90秒で、フェイヴァリット・ブックやお気に入りドラマを次々と紹介、熱が入り過ぎて持ち時間をオーバーすると容赦なくブザーが鳴らされます。「あーその本、私も大好き~」と思うこと度々。古株のタドキストには中々楽しい企画だと思いましたが、初心者にはちょっと長過ぎたかな…という冷静な意見もあって、確かにそれも一理あり。様々な人がもれなく楽しめる多読祭りへの模索は、まだまだこれからも続くようです。

プログラム最後は、今年も多読実践者がナビゲートする「絵本読み聞かせ」「ガジェット」「ブックトーク」それぞれの島に分かれてのイベント・タイムとなりました。読み聞かせ島にへばり付いてしまった私、他の島の様子がわからず申し訳ありません。集まった人数が多くなり、声が通らなかったところもあったのが、今後の反省材料でしょうか。

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やさしい本をたくさん読もう!から始まった多読は、オーディオブックで多聴に励んだ人も多いとは言え、自然な音の獲得には少しハードルが高かった。それが時代の変遷により、字幕なし多観が誰でも気軽に始められる環境が整い、TADOKUへと進化している。やり方次第では、文字と音が一体化した本物の「言葉」を容易に手に入れられるようになりました。その意味ではとても幸せな時代です。あとは実際にやってみるかどうか、それはあなた次第です。取り入れたら使ってみたくなります。その時はTADOKUの仲間に飛び込んで、ちょっと先を行く人たちから知恵や刺激をもらいましょう。その良い機会が「多読祭り」です。どこかの多読祭りで、あるいは来年、またお会いしましょう。スタッフの皆さん、今年もありがとうございました。

(Owly今年は一聴衆)

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