10/6(日)「オンライン日本語多読授業入門講座」報告

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10月6日(日)午前9時から、多読授業入門講座がオンラインで開催され、日本国内の地域の日本語教育や海外で日本語教育に携わる方、計6名が参加しました。
まず、日本語多読に関する概論(担当:正会員・高橋)とアメリカでの実践報告(担当:準会員・熊谷由香さん)からスタートしました。

概論では、日本語多読の理論的背景やルール、読みものや支援者の役割、日本語多読研究の成果について説明を行いました。日本語多読の4つのルールの一つに「やさしいものから読む」ことが挙げられます。英語多読の研究者として有名なデイとバンフォードは、アメリカの有名な研究者クラッシェンが提唱する”i+1”(自分のレベルより少し高いものを学習すると効果的)を参考に、多読は”i-1”(自分のレベルよりも少しやさしいものを読むと効果的)であると主張しています。日本語多読でも同様に、やさしいものから読むことによって、楽しくたくさん読めるのではないかと考えられています。


(「教えずに、いっしょに考える」「魔法のことば『どうでしたか?』」も支援の大切なポイントです)

続いて、熊谷さんの実践報告では、南カリフォルニア大学での多読クラスの様子が紹介されました。

現在図書館には、なんと1400冊もの日本語多読用図書が配架されているそうです!熊谷さんの長年の多読支援から、学生一人ひとりの伸び方、楽しみ方、入り込み方はそれぞれ違うことについてお話がありました。また、教師は学生に教え込むのではなく、伸びを支援することであるという話がとても印象的でした。多読授業に対する学生たちによる自己評価からは、日本語学習に真摯に向き合っている学生さんの姿がありありと目に浮かびました。

休憩の後は、参加者と粟野理事長、講師2名で、質疑応答や意見交換が行われました。参加者からは、オンラインクラスで多読を導入する際、個別に話す時間を取るにはどうしたらよいのか質問がありました。講師からは、学生一人ずつに部屋(ブレイクアウトルーム)を作り、支援者が訪ねていくことで、個別に話ができるのではないかという意見がありました。また、次の回にも多読に来たいと思ってもらえるようには、どのように支援者が工夫したらよいのかについても質問がありました。このトピックに関しては、多読のコミュニティをうまくつくり出すこと、多読の導入部分で参加者を引きつける仕掛けを準備すること(間違い探しや『ミッケ』/字なし絵本の利用)などが挙げられました。
その他、多読中の気持ちを理解するには、支援者が英語多読をはじめとした多読を実践してみるということも効果的だということも強調されました。

【事後アンケート抜粋(括弧内は筆者補足)】
・本を読むことは個人でやるものという固定概念があったけれど、今回のお話を聞いて、言語の壁をこえ、本を真ん中に双方向のやりとりができそうな気がしてきた。
・日本語教室ではよく話すのに、クラスだと間違いを恐れて、話さない生徒ガいます。「間違えてもいいから話してごらん!」と励ますより、多読で読めたら楽しいと・う体験と自信をつけたら、自然とやってみたほうが、報酬が大きいという体験が積めていいのだろうなと感じました。本日はわかりやすい説明と温かい雰囲気がとても良かったです。
・まずは自分で多言語の多読をしてみようと思います。

次回の入門講座は、11月3日(日)日本時間16:00から開催予定です。
これまで200名以上の方が入門講座にご参加くださり、実際に多読支援を始めた方も多くいらっしゃいます。
ぜひたくさんのご参加をお待ちしております。

オンライン日本語多読授業入門講座

追伸:講座を修了された方で、その後「多読支援はじめました!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひNPO多言語多読までご一報ください。スタッフや講師の励みになります!

(正会員 高橋亘)