11月15日(土) 第9回シンポジウム「図書館多読への招待 in 河内長野」 報告②

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午後の部は、図書館関係者向けです。多読を取り入れた3つの図書館からの実践報告と、多読導入と継続のために何ができるかを考えるワークショップ「はじめてさん、よっといで~」を行いました。また今年は、途中まで、オンラインで遠方からもご参加いただけるようにして、計18名(会場11名、オンライン7名)のみなさんと語り合いました。

実践報告①「図書館多読を支えるために」
――稲城市立中央図書館 高橋 仁(オンライン報告)

稲城市立中央図書館は、多読図書コーナーの設置、多読サークルの開始から5年になります。その中で図書館での多読を支えていくために必要なこととして、資料の充実、多読サークルの存在、「図書館多読」を支える仲間という点を挙げ、お話しくださいました。

「利用者に新鮮な書架を提供したいが、本を収集することは一朝一石にはできないので根気が大事」「多読サークルの運営は大変だが、実践者と触れ合うチャンスととらえ続けている」「図書館多読を支える仲間が大切で、これから始める人に一人で抱え込まないようにとアドバイスを投げかけている」など、多読支援を継続していく工夫が伝わってきました。

実践報告②「生涯学習としての多読~阪南市立図書館の取組み」
――阪南市立図書館 加藤 靖子、野村 富貴子

阪南市立図書館は新規利用者の開拓を模索していたところ多読と出会い、Oxford Reading Tree を揃え英語多読コーナーを設置し、2019年より英語多読入門講座を開催してきたそうです。また、英語多読サークルや講演会も開催しているとのことです。

「どこでも英語多読ができる環境を提供したい」と、多読に不可欠な、資料と仲間の必要性について図書館の役割を報告してくださいました。
 具体的には、多聴用のCD付資料の購入や、電子図書館導入に合わせた多読用電子書籍の提供、さらに、図書館ホームページへの英語多読バナーの設置、100万語までのモデルケース等の情報提供などを行っているそうです。

実践報告③「2018年・知識ゼロからの4年を振り返る」
――河内長野市立図書館 Supported by TONE 楠本 美津子

河内長野市立図書館は、英語多読を導入する際、担当者が多読の知識が「ゼロ」だったため、情報を収集しながら多読コーナーを設置し、講座を開き、事業をすすめてきたそうです。担当者として感じた悩み、どうやって動いてきたか、また講座を発展させた「英語多読ひろば」を始めたわけなど、これまでの経過についてお話しいただきました。

英語多読を特別扱いしないで、図書館に来たらたまたま英語多読に出会えたと利用者に思ってもらえるようにしたい、担当者だけでなく職員みんなが基本レベルで多読を理解できるようにするなど、今後の普及のポイントになるお話もありました。

ワークショップ「はじめてさん、よっといで〜!」

午後の後半は、「はじめてさん、よっといで〜!」と題して、これから多読を取り入れたい図書館向けのワークショップを行いました。ワークショップ前の休憩の間に、図書館多読について実践報告館や他の図書館に聞いてみたいことを参加者から募集しました。
質問の一部を以下に紹介します。

  • 初級者向けの本と、中・上級者向けの本は何割ずつ買うとよいでしょうか。構成の理想の比率があれば教えてください。
  • 当館の蔵書は20年位前に寄贈された絵本、洋書の読みものなどが、とりあえずタイトル順または作者順に並んでいます。ようやくORTを購入しましたが、書架への並べ方をどうすればいいか悩んでいます。レベルの分け方など並べ方の工夫を知りたいです。
  • イベント開催のために、必要な蔵書数はどれくらいでしょうか。
  • 多読サークルの参加者の年代は?ブックトークではどのような話をしていますか。
  • 多読サークルがうまくいかなかったそうですが、もう少し具体的にどういう状況が生まれたのか、知りたいです。
  • 学校との連携がなかなか進みません。事例があれば教えてください。
  • 図書館職員に多読協力者になってもらう方法
  • 利用者へのアプローチは講座やサークル以外でどのように取り組んでいますか。例えば、展示の変更のタイミングやカウンターやフロアワーク中の声かけなど。
  • 多読を図書館の中で進めていく手順として、資料収集→講演などの広報→サークルやイベントなどの活動(担当者自身が、多読に取り組みつつ)と、今回ざっくりとわかったのですが、担当者(多読を知る職場の仲間)が少ない中で、特に困難なところ、やるべきところはどこでしょうか?

質問には、実践報告館や会場・オンライン参加の図書館員のみなさん、午前の講演をした酒井理事が答え、1つの質問に複数の人が答える場面もありました。

オンライン併用はここまでとなり、ワークショップ後半は会場参加者が3つに分かれてグループワークを行いました。

ワークショップでは、今回の全体テーマ「多読との出会いをつくり、支えるためにできること」をグループで語り合いました。それぞれが考えたことを付箋に書き出しそれを説明しながら模造紙に貼っていきます。
直前に、実践報告者との質疑応答があり、お互いに図書館多読に関する質問と回答が共有されていたこともあって、「はじめてさん」も含め、各テーブルで熱のこもった意見が活発に出されていました。出た意見をグルーピングして、最後に3つのグループが模造紙を見せながら意見の内容を報告しました。

図書館でも教室でも、支援者自身が多読を楽しんで実践し、自分の変化を実感していることが大切です。発表では、多読未導入の図書館の方々も、しっかりとその点を認識されているとわかり、頼もしかったです。
短い時間でしたが、久しぶりに対面ならではのコミュニケーションを生かしたワークができ、良い時間になりました。この機会から、関西の図書館同士の情報交換が広がっていくよう願っています。

コロナ禍での図書館多読シンポジウムも3回目になりました。感染対策、オンライン併用のハイブリッド開催に大変なご尽力をいただきました河内長野市図書館の森館長、職員の皆さまにあらためて感謝いたします。

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2023年秋の第10回シンポジウム開催地は東京都の町田市立中央図書館。首都圏での開催は4年ぶりです。お近くの図書館関係者の方は、ぜひご参加ください。
また、2023年2月18日(土)にはオンラインフォーラム「図書館多読のすすめかた」第2回を開催します。図書館多読を支えるための情報交換の場としてご活用ください。

(小川、米澤、事務局)