11月28日(日)「中級用読みもの作成講座」の報告

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11月28日(日)第2回「中級用読みもの作成講座」をオンラインで開催しました。
以前、「読みもの作成入門講座」に参加していただいた方限定の講座です。「入門講座」では、短時間で初級と中級の読みものを作成しますが、「中級用読みもの作成講座」では、じっくり「中級用」に取り組んでいただきます。
今回は5名の参加がありました。多言語多読からは理事長の粟野、理事の川本と松田が出席しました。 参加者の方には、前もって「課題」を中級にリライトして提出していただいています。第1回の時と同じ、新美南吉の「手ぶくろを買いに」を課題にしました。

午前9:00にスタート。まず、簡単な自己紹介です。個人で教えている方、日本語学校、大学、地域の日本語支援をしている方など、様々な場で日本語を教えていらっしゃる方々で、今回は全員が国内からの参加でした。
理事長の粟野から、中級用読みものリライトのポイントの確認、この課題を選んだ意図などの話がありました。続いて、「手ぶくろを買いに」の魅力について話し合いました。参加なさった方々の多くが、子どもの頃、この童話を読んだことがあり、いろいろな思い出を話してくださいました。話の内容より当時読んだ絵本の絵を覚えている、という方もありました。
9:45
参加者の方々に、提出していただいた課題のリライトにコメントを入れたものをお返しして、読んでいただきました。休憩も兼ねて15分時間をとりました。

10:00
松田が、参加者のみなさんのリライトのなかから、ここは、上手だ、ステキだと思われる箇所や、この工夫はいいと思われる箇所の紹介をしました。
次に川本が、小道具は替えてもいいのでは、など、さらなるリライトの工夫の可能性について話しました。
参加なさった方のお一人が、リライトにすばらしい絵をつけてくださっていたので、それを紹介しました。iPadにアプリを入れてアイペンシルで描かれたそうで、できばえに一同大いに感心しました。

10:20
2つのグループに分かれて、ブレイクルームで作品を完成させるワークショップです。
レベル2の作品を完成させるグループは川本と2人の参加者。レベル3の作品を完成させるグループは松田と3人の参加者。粟野は、2つのグループを行き来してアドバイスをするという体勢でスタートしました。

〈レベル2グループ〉

Mさんがレベル2を想定してリライトしてくださったものを取り上げて、少し難しい語彙をレベル2相当に換えたり、文と文のつながりを整えていきました。省略した方がいいところ、残した方がいいところなど、迷うところも多く、半分くらいまでで検討は終わりました。
できあがった部分は、すっきりして、わかりやすい読みものになりました。

<レベル3グループ>

Tさんがレベル3にリライトしてくださったものをもとに進めました。生き生きした会話がたくさん入った、魅力的な作品ですが、言葉や文体の不統一を、直しながら完成を目指しました。
この文は省略してしまってはどうか、という提案に、ここにはこういうこだわりがある、と作者がおっしゃって、メンバーが「なるほど」と納得するなど、楽しいやりとりがありました。やはり、半分くらいまでで時間切れになりました。

11:15

ブレイクルームからメインルームへ戻り、それぞれのグループの作品をできたところまで発表しました。
それぞれについて、他のグループのメンバー、粟野、川本、松田が感想を言いました。リライトというのが、単なる言葉の言い換えではないこと、また、レベル2に比べて、レベル3は情景や心情がかなり細かく書き込めることも実感していただけたように思いました。

11:40
今回の講座全体についての感想を伺いました。
リライトを一人でなく何人かですることで思いがけない案がでるのが面白かった。という意見が多く出ました。
また、そもそも、課題である「手ぶくろを買いに」には、矛盾がある。可愛い子どもを、自分が怖い思いをした町へお使いにやる母狐の行動は納得がいかない。という意見に対して、美しい冬の森や町の情景や母と子の情愛が好きだ。という意見が出るなど、新美南吉の原作に対する思いの違いなども出てきて、12時の講座終了時刻まで、話は尽きませんでした。

〈事後アンケートより抜粋〉
• 他の人のリライトを見たり、グループでリライトするのがとても楽しかったです。情景描写が美しい作品なので、なるべく省かず入れたいと思いましたが、入れすぎると話がわかりづらくなるので、その匙加減が難しかったです。
• 思っていた以上に一文を短く、語彙、文法の制約があると感じました。もっと丁寧に読み込んで読む人のことを考えてリライトする必要があると思いました。
• 中級向けになると使える言葉がだいぶ広がるので、作品のなかの面白いところをなんとか工夫して出してやろう!と頭をいろいろ使ったりするところがとても楽しかったです。
• 文型や語彙をレベルに合わせて置き換えるだけでなく、読者が読む楽しさを感じられるようにすることが必要だということに気がつきました。また中級以上の読みもの作りのワークショップがあったら参加したいです。
また、アンケートには、
・中級読みもの素材は、どんな風に探しますか?
・年少者へのリライトで気をつけるべき点を教えてほしい。
などの、問いかけも記されていました。

講座修了時に12月12日の「にほんご多読支援研究会」のお知らせをして終了しました。

(多言語多読理事・松田記)