11月7日(日)「オンライン日本語多読授業入門講座」報告

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2021年も残すところ2カ月を切った11月7日、今年最後の多読授業入門講座がオンラインで開催され、海外からの2名を含む10名の方が参加されました。地域で児童や生活者の支援をされている方、大学で教えている方が多いのが今回の特徴です。

最初は、NPO正会員の作田奈苗が多読の概論をお話ししました。好きな読みものを楽しくたくさん読む「多読」は、大量のインプットが得られ、読みの流暢さが育つ言語学習の方法であること。多読4原則(やさしいレベルから読む・辞書を使わないで読む・わからないところは飛ばす・進まなくなったら他の本を読む)は、日本語の世界に触れながら多読を楽しむための助けになるように考えられたルールであること、多読では学習者が主人公であり教師は支援者に徹すること等、最初は多読の基本の説明です。そして、学習者への様々な配慮の上で作られている多読用読みものの特徴の説明と同時に、一般書を取り入れることの重要性も語られました。インプットを増やすには「多読」だけでなく「多聴多観」も効果的であるという話もありました。

続いて、同じく正会員の片山智子が、国内の大学での多読授業の実践を報告しました。今回の参加者には、授業で読解を教えていて多読に興味を持ったという方が多くいました。片山自身も読解の授業に関する悩みを感じていた時に、多読に出会いました。多読は、文法や語彙学習が目的となりがちの読解授業とは、全く異なるアプローチの授業です。好きな本を楽しく読むようにと言っても、とまどう学生もいるので、学期初めの導入ではていねいに多読のルールを説明し、いっしょにやさしい本を読んでみたりします。参加者の皆さんにも、共有画面を使って、文字のない多読用読みもの『あいちゃん』を読む体験をしていただきました。読み物を提供する際の工夫、ブックトークを取り入れた授業の方法など、どのように学生を支援しているかという実践例をお話しし、最後に、昨年から行っているオンラインでの多読授業の工夫もご紹介しました。

最後は、グループに分かれ、NPO理事長の粟野真紀子と、作田、片山の3人が皆さんの質問にお答えしました。授業の一部しか使わなくても大丈夫か(短時間の多読を実践している例は多い)、大学で評価が必要な場合どうするか(理解度で評価したりはせず、出席や読書記録の提出などで評価している)、子供に対する多読支援の方法は?(「読み聞かせ」から入るとよい。漢字のルビはあったほうが力がつく)等、自分たちの経験をお伝えしていると、あっという間に終了時間になりました。

事後アンケートでは、これから多読授業を実践してみたいと、うれしいコメントを多くいただきました。

・多読のいろはから実践について、また無料のサイト情報まで教えていただきとても有用でした。また、担当の先生に直接質問する時間もありありがたかったです。

・殆ど個人レッスンなので、多読授業は無理かと思っていましたが、今日参加させていただいて、オンラインでも個人レッスンでも多読授業ができるのがわかり、大変勉強になりました。これから取り入れてみようと思います。

・「先生が楽しそうにしていることが一番」という言葉に多読の授業の魅力が表れていると思いました。授業=少し背伸びして、難しいことをがんばる(楽じゃだめ)という思い込みから教師も学生も離れて、自由にのびのびと日本語の世界を楽しむのが多読授業なのだと感じました。具体例を詳しく伺うことができ、多読授業を早くやってみたくなりました。

次は、年が明けて1月9日の開催になります。

(片山智子)