6月6日(日)オンライン「日本語多読授業入門講座」報告

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6月6日(日)に2ヶ月ぶりのオンライン日本語多読授業入門講座を開催しました。
参加してくださったのは、アメリカ、ドイツ、フランスを含む国内外の12人の方でした。
参加者のみなさんには、事前に多読授業の様子がわかる動画や多読の記事を読んできていただいていました。

210606多読入門講座写真2

前半の講師、正会員の高橋亘が「日本語多読とは?」と題して概論をお話ししました。
従来の読解授業を、自分が学生時代に受けた英語の読解授業を例に振り返り、もっと日常の読みに近づけるには多読が有効ではないか、という話から始まりました。
「やさしいものから難しいものへ、辞書を使わずに楽しみながらたくさん読むこと」が多読で、それを実現するには、支援者はひとりひとりとの対話が大事とのことです。

多読のルールの説明では、ルールは無理に押しつけないで、少しずつわかってもらうような誘導が望ましいことが自分の失敗経験から語られました。
支援のポイントの「教えない」も、すぐ知識の伝達をせずに「一緒に考える」こと、という説明が印象的でした。
その後、多読向けの本の紹介や事後のアクティビティの例にも触れました。

後半は、正会員の纐纈(はなぶさ)憲子が米ノートルダム大学での実践報告をしました。
コースの説明、授業の流れ、読書記録のつけ方、学期末のプロジェクト、成績のつけ方など具体的な報告がありました。
最後に多読の導入には、やさしい絵本、できれば字のない絵本で、絵をよく見ることがとても大切という話があり、実際に参加者と一緒に字のない絵本「Red Book」の冒頭部分を見てみました。さっさとページを繰っていたのでは気がつかない各所の仕掛けが実は大きな意味を持つ字なし絵本。字に頼らず、まずは絵をよく見ることで本の中に引き込まれて魅了される、それが多読のある意味、本質で、どんどん本を読むことに徐々につながっていくことが体感されたのではないでしょうか。

休憩後は、三つのブレイクアウトルームにそれぞれ講師が入り、参加者は思い思いの部屋に入って質疑応答ディスカッションを楽しみました。20分2回のセッションを行いましたが、それぞれ、評価、多読向け図書、課外の多読クラブ、多読のルール、周囲・上司の説得など具体的な質問が飛び交いました。
多読を積極的にやってみたいという気持ちがみなさんあふれていたように思います。

以下は事後アンケートからの抜粋です。

●よかったところを教えてください。

・具体的な実践例が聞けてイメージしやすかったことと、ブレイクアウトで質問できたこと
・高橋先生の発表では、多読授業のやる際の大事なポイントがよく分かりました。
・纐纈先生の発表は、多読を導入する際の流れ(学校側との調整)や、学習者へのフィードバックの方法、読書記録の書き方など、細かいところが具体的にイメージしやすかったです。
・勉強になることばかりでした。特にオンライン多読の方法をくわしくお聞きして、道が開けた気がします。ありがとうございます。
・多読授業を始めたいと思っていますが、カリキュラムがいっぱいで、難しいです。纐纈先生にクラブはどうかと聞いて、具体的にやり方のアドバイスをいただいたので、良かったです。

●ご自身の現場に多読を導入することができそうでしょうか。

・多読のお試し、絵を読む活動のお試しから始めてみようかな?と。
・いきなり正規の授業として多読を導入することは難しそうですが、課外活動(クラブ)のような形式で導入はできると思います。 また、学校外でも、地域の図書館や文化施設と協力して市民講座のような形式で導入できるのではと思います。

・多読クラブから始められたらいいな、と思っています。この夏は読み物集めをして、秋からクラブができるように上司にかけあってみます。

●その他感想など

・ブレークアウトの時間多く取られていたので、いろいろ質問できてよかった。ルールは大切だが、あまり形を決めすぎず、学生に合わせて臨機応変に進めていこうと思った。
・多読は楽しむことが大切、と改めて思いました。学習者のかたに、日本語を読むこと、読んで味わってもらうことを、人生の楽しみにしてもらえるようになったらいいなあと思いつつ、そのために自分は何ができるか考えながらお話を聞きました。大変充実した時間でした。ありがとうございました!
・多読授業を単独で開講できない機関でも、通常授業に取り入れていくことに自信がもてました。
・事前にいただいたビデオや記事が、とても分かりやすかったです。
・とてもよい講座に参加できました。やはり仲間がいるとやる気になります。

 

*次回は、7月4日(日)午前9時 開催予定です。どうぞご参加ください!

(粟野 記)