10月4日(日)オンライン「日本語多読授業入門講座」報告

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今回の「オンライン・日本語多読授業入門講座」は、アメリカ時間を意識しての朝9時からの開催でした。
参加者18人のうち、6人がアメリカから、1人がオーストラリアからのご参加でした。大学、日本語学校、ボランティア教室、年少教育など教育機関はさまざまでした。

前半、粟野が「多読概論」を担当しました。
まず、多読が従来の「読解授業」と大きく違って学習者主体である点をお話ししました。
学習者が一人一人が読みたいものを文法や語彙に縛られずに読むのが多読の「肝」。そのために読み方のルールがあり、支援者の役目はそれに沿った読み方になるよう学習者を補佐すること。何を読むのかについてもNPO多言語多読のサイトをお見せして説明しました。
最後に、実際に学習者が読んでいる様子やインタビューを上映。多読になじみのない方が参加する入門講座なので、「実際の映像を見ると、多読授業の様子が掴める」と毎回、好評です。

201004多読入門セミナー写真8

休憩後の後半は、アメリカ・ノートルダム大学の纐纈(はなぶさ)さんが、大学での実践を具体的に紹介しました。
毎回、字のない絵本で学生に「本を読む」体験をしてもらうそうです。本を読むことを単に文法や語彙の解釈と捉えず、本とのコミュニケーションだと捉え直すために、これは欠かせない作業です。実際、纐纈さんのクラスでは辞書を使わないということはすんなり受け入れられているそうです。
ここで、参加者のみなさんにも字なし絵本「レッドブック」を数ページ「読んで」もらいました。言葉はないけれど、目の前に広がる場面に飛び込んでみる体験は新鮮でした。つい、「筋」を追おうとしがちで、細部を見落としていることに気づかされました。

201004多読入門セミナー写真7

最後に教育機関別に4つのグループに分かれて、それぞれの状況や多読への質問、疑問について話し合ってもらいました。
ここまでであっというまの2時間です。
その後さらに15分延長してまた違うグループで交流を兼ねておしゃべりを楽しみました。
それでもアンケートにはもっと話す時間が長いとよかったというフィードバックをいただきました。
次回からみなさんの声を生かして、参加者のみなさんとのディスカッションの時間を少し長くとりたいと思います。

201004多読入門セミナー写真3

★以下はアンケートからの抜粋です(全員から回答をお寄せいただきました。とても参考になります!)。

《良かった点》
・初心者にも分かりやすい内容で、前半に沸いた疑問もあったのですが、後半の実践報告を聞いていくうちに理解できました。講師お2人が違う形式でお話された点が良かったと思います。
・全体的に有意義でしたが、学生の反応も含めた実例が見聞きできた点がよかったです。
・多読授業を多読だけにこだわらず、インプットの自立学習の一環としての多読という捉え方をするという発想に気づけた点
・実践したことを教えてくださったので、自分の授業に取り入れやすいと思いましたし、ほかの先生方とお話しできる機会があってよかったです。
・多読の基本や立ち上げられた歴史など知ることできたこと。また、本の紹介リスト、絵の大切さ、絵本の良さなどを教えていただいたこと。

《もっと聞きたかったこと》
・他の参加者ともう少し話し合う時間があるとよかった。
・オンラインで1対1で多読を取り入れる場合の話をもっと聞いてみたいです。
・もっといろいろな実践例を知りたいと思いました。
・多読の活動にうまく参加できない学習者への支援や、指導の具体例など。
・文字を追うだけの段階から、ストーリーを追うようになるまでのステップアップの様子

《その他》
・自分でもやってみたいなと、前向きな興味が持てました。そして普段お会いできない方々とお話しさせて頂けたことも嬉しかったです。
・学習者の方がいきいきとしていたのが、とても印象的でした。
・言葉はコミュニケーションツールなので、楽しく上達していけるのが本当の形だなぁと改めて思いました。
・自分でも英語の多読をやってみたいと思いました。
・私自身が言語習得で読書が重要であることを経験しており、言語習得者に「多読」の理念でかかわっていけたら、もう少し楽に外国語の世界に入り込めるのではないかと考えます。
・多読は思っていたより幅広い活動ができ、学生はもちろん、支援者としての教師も肩肘張らずにできるのだなと感じ、もっと気軽に取り入れていいのだと自分の中でハードルが下がった思いです。
・多読の本をもっとたくさん増やして欲しいです。
・子供対象の多読講座があれば、参加したいなと思いました。
・実際の絵本やマンガなどの選び方、なかなかうまく活動できない学習者への支援方法、チームティーチングで多読をする場合の留意点や、共有点、効果的な指導(教師に対して)方法など(について聞きたい)。
・読み物を作るワークショップに大変興味があります。
・今後予想される、オンラインでの多読についての勉強会があったらいいと思います。
・学習者の立場で絵を見る活動をもう少しやってみたいです。
・活動の実践例をシェアして、意見交換ができるような勉強会があればいいな、と思いました。
・今度は実際に授業に取り入れた後の問題点などを中心にしたお話など、もう一段階上がったワークショップがあったら、出てみたいです。

たくさんの声をお寄せくださり、ありがとうございました。
まだまだ伝えきれないことがあります。また勉強会など行いますので、これを機にお付き合いくださるとうれしいです。
次回は11月1日(日)です。
多読にご興味ある方、お集まりください。どうぞよろしく!

(粟野)