6月15日(土)新宿・大久保図書館で第8回 日本語多読ワークショップ!

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新宿区立大久保図書館で、恒例になったワークショップ「やさしい日本語の本を読んでみませんか?」が開催されました。

過去のワークショップは、こちら。


前日夜から降り出した雨が、開催当日の朝からは「車軸を流すような雨」となりました。スタッフ一同、果たして何人の方が参加してくれるだろうか、と悲観的な気分になってしまいました。
ところが、ワークショップ開始の15分ほど前に、フランス人2人が会場に到着したのを皮切りに、次々に参加者が現れ、開始時間には会場の傘立てが、雨傘でいっぱいになりました。フランス6名、ベトナム1名、台湾2名、中国3名、ロシア、モロッコ、メキシコ、韓国、ミャンマーと9ヶ国の方々計17名の方が参加してくれました。上級の3名を除いて、日本語の本を読むのはほぼ初めての初級の人ばかりです。さて、本をどんなふうに楽しんでくれるでしょうか。

14:10 開始

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米田館長の挨拶から始まりました。
「今日は、雨の中をようこそいらっしゃいました。この図書館は外国人がたくさん住んでいる町、大久保にあります。外国人の方々にも日本語の本を読む体験をしてもらいたいと考えてワークショップを企画しました。今日は本を楽しんでください」

次に多読のルールを理事長の粟野が説明しました。
「まず絵をよく見ましょう。わからない言葉があっても辞書を使わないでください。全然わからなくなったら、その本はやめてほかの本を読みましょう。’勉強する’のではなくて、楽しく読むことが大切です」
そして、スクリーンに字のない絵本を投影しました。文がなくても絵をよく見れば物語がわかる、ということを実感してもらいました。「あいちゃん」(仙台国際日本語学校)と「西町交番の良さん」(レベル別日本語多読ライブラリー/アスク出版)の2話でしたが「何をしていますか?」「何と言っていますか?」という粟野からの問いかけに、会場の参加者から盛んに声が上がりました。

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14:30 絵を見ましょう!
4人ずつ座った4つの机の上に字のない絵本、あるいは文字が少しだけの絵本が置かれています。米田館長の挨拶の前から、もう、目の前にある本を手に取っていた方も多かったのですが、ほかの机の本と交換するなどして、次々に絵を見る参加者の皆さん。
犬や猫など、動物の出てくる本を選ぶ人。写真ばかりの本を選ぶ人。かなり日本語のレベルが高いと思われる方々も、文字のない絵本を当たり前のように楽しんでいらっしゃるのが、うれしい驚きでした。

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(中上級者のみなさんも絵本に集中しています。「アンジュール」「ゆうたくんちのいばりいぬ」「あさになったのでまどをあけますよ」「パンダ銭湯」「ねずみくんのチョッキ」、レベル0の読みもの・・・)

14:45 好きな本を読みましょう!
机の上の字のない絵本を、ほとんど見終わってしまったようなので、会場の後ろに並べてある絵本や、アスク出版のよむよむ文庫、大修館書店の多読ブックスなど、文字のある本にチャレンジしてもらいました。
「好きな本を持ってきていいんですよ」という粟野の呼びかけに、みなさん、うれしそうに本を選んでいます。レベルにはあまりこだわらず、物語が好きな人、日本事情を選ぶ人、写真が多いものを選ぶ人など、好き嫌いは、本当に人さまざまだなあ、と改めて感心させられました。
宮崎駿のアニメージュコミックス「となりのトトロ」を読んでいたフランスの若者が「ここにないが、わたしがいちばん好きな宮崎駿の作品はプリンセスだ」というので、日本人スタッフは「???」「千と千尋?」「魔女の宅急便?」「紅の豚?」思いつくままに次々にタイトルを言ってみるのですが、どれにも首を振る若者。その時、米田館長が「もののけ姫!」と叫びました。うれしそうに頷く若者。さすが館長さん。

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(音声を聞きながらの「聞き読み」にも挑戦)

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(お気に入りを見つけたようです。「となりのトトロ」「いつでも会える」「うめめ」に夢中!)

 

30分ほど経ったところで粟野が呼びかけました。
「皆さん、疲れましたね。少し休みましょう。席を立って歩いてもいいですよ。トイレへ行きたい人、どうぞ」
だれも休みません。本を読み続けています。配っておいた読書記録に、書名を書き込みながら読み続ける人、CDを聞きながらよむよむ文庫を読む人など、いろいろなスタイルで本を楽しんでいます。うれしいお手上げ状態でした。

15:40 ブックトーク
テーブルごとに一番よかった本の紹介をしてもらいました。

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中国の人が選んだ「いつでも会える」は、愛する人を失った者の心情を描いた本です。同じようなテーマの本「ずーっとずっと大好きだよ」は、ミャンマーとフランスの人が選びました。はちゃめちゃなストーリーの「ねこガム」「パンダ銭湯」を選んだのは共にフランスの人。「日本のトイレ」も、フランスの人。木村家の「ただいま」は、ベトナムの人でした。日本語レベルの高い台湾の人はよむよむの「ごん狐」を選びました。
「あさになったので まどをあけますよ」は韓国の人。美しい絵が気に入ったようです。
モロッコの男性は、「今日は本を読もうと思ってきたのに、写真集『うめめ』だけをずっと読みました」と言いました。1ページ2,3分かけたそうです。「14年前の日本を知ることができます。そして、写真をずっと見つめることで、フォトグラファーとコミュニケーションができます」とのことでした。’いいね!’

フランス人ばかり4人のテーブルがあったので、ブックトークはフランス語でもいいことにしたのですが、全員日本語を使って面白いところを紹介し合っていました。

16:00 終了
アンケートに記入してもらい、米田館長が挨拶をして終了となりました。
「今日は本をたくさん読みましたね。楽しそうな皆さんを見て、わたしも楽しくなりました。皆さん、ぜひ図書館に本を読みに来てください。図書館にはいろいろいいことがあります。その中でもいちばんいいことは、お金がかからないことです」
館長さんのおすすめが効いたのか、ワークショップ終了後、図書館のカウンターの前に利用者カードを作りたい人が、長い列を作りました。

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朝の心配はどこへやら、熱気むんむんの多読ワークショップとなりました。

日本語の本を読んだことがない学習者でも、ちょっとしたアドバイスで本をこんなに楽しむことができるのです。
第9回のワークショップも、大勢の人が参加してくれることを期待しています。

(松田記)