7月22日(土)「多読授業とリライト」入門講座@名古屋YWCAガリ勉クラブ

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7月22日(土)、名古屋YWCAにお邪魔しました。年少者サポーター研修で多読を取り上げていただきました。
こちらの、小学生から高校生までの日本語学習支援クラス「ガリ勉クラブ」では、2013年から多読を導入しているそうです。もう4年になるのですね。感激です!
今年も夏休み日本語教室で多読授業をおこなうため、その前にボランティアのみなさんが多読授業について改めて勉強しようということで、この日の出張講座となりました(13:30~16:30)。

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講座当日まで、みなさんで『日本語教師のための多読授業入門』(アスク出版)を読むなどして熱心に準備して迎えてくださいました。
33名のボランティアさんの前で、いつものように、これまでの「読解授業」の問題点、多読の目指すところ、やり方、効果、本についてなど1時間ほどでお話ししました。一段高い壇上からの話だったこと、みなさんすでに多読授業経験者ということで、どのように受け止めていただけたのかなあとちょっと心配でした。でも、大きくうなずいたり、笑顔で聞いてくださる方がいて励まされました。授業風景など動画でお見せしたときは、みなさん興味深そうでした。

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さて、休み時間。
スタッフの方が、我々のウェブサイトに掲載してある一般向けの本を図書館で借りてきて並べてくださっていたので、みなさん、その本を囲んで手に取っていらっしゃいました。スーツケース2つ分、140冊以上、圧巻でした。その一冊一冊に、私たちが設定したレベルがちゃんと表示されています。夏休みの教室には30人以上の子どもたちが集まるそうですが、どんな反応を見せてくれるのでしょうか。ドキドキ・・・。

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後半は、リライト体験です。
「うさぎとかめ」「北風と太陽」「アリとキリギリス」を小一時間でレベル0か1のお話に仕上げてもらいました。
みなさん、初めての体験でしたから、コツをつかむまで少々時間がかかりましたが、場面分けをして、絵を描いてそこに文を添えていくというスタイルがみえてきてからは順調に進みました。

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終了後は、同じお話を作った2,3班がお互いの作品を見せ合いました。さらに、その中からいい作品をひとつ選んで全体に披露しました。
語彙表に忠実に作った班、逸脱語彙を使ったけれど絵で表現した班などいろいろな工夫が見られました。
「よむよむ文庫」や「にほんご多読ブックス」がどんな語彙で成り立っているか、レベル0や1の文字と絵のバランスはどうか、読みやすくするためにどんな工夫
が有効かなどを実際に作ることで感じてもらえたらよいのですが・・・。

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さて最後は質疑応答。主なものを書いておきます。

Q 読むのが嫌いな子どもにはどうしたらいいか。

A これはよく聞かれる質問ですが、本嫌いな子どもに(大人でも)無理強いしたら逆効果。本と仲良くなってもらうための多読授業ですから、気長に待ちましょう。短期間で本を読むのが好きになるのはおそらく難しいので、何回かの授業でそうならなくてもあまり気にしないこと。日本語の勉強だったらなんでもいいからその時間は静かに一人でやらせておく、ぐらいの寛容な受け止め方で。他の友達が読んでいるその場にいることが大切。友達の読んでいる様子を見せる、友達のブックトークを聞かせるなど間接的な刺激が効果がありそうです。
また、「読み聞かせ」をしたら興味を持った例もあるので、有効かもしれません。PC上の記事や読みものなら読む子もいるでしょう。また、本に拘らず、Youtubeなどの「多聴」でもいいのではないかと思います。

Q 感想の引き出し方。「おもしろい」としか書かない子がいる。

A 読書記録の感想は一言でもいいのでは?
支援者が声をかけて、どこがおもしろかったか尋ね、その子が本を楽しんだことがわかったらそれでいいと思います。書きたい子にはたくさん書いてもらってもいいけれど、書くことは基本的には難しいことです。まず読むことに抵抗がなくなることが第一の目的なので、感想は書かなくてもOKでは?

Q 自分のレベルに合わない難しいものを読みたがる子はどうしてたらいいか。

A これも永遠の課題ですね。その子には難しいかなと思うレベルでも、楽しんでいればいいと思います。もし、読む様子を見て、無理をしているようだったら、やんわりと他のものを薦めるようにしましょう。こんなときも友達のブックトークも有効かもしれません。本人が納得して、楽に読めるレベルを選ぶまでちょっと時間がかかることは覚悟してください。学習者は、難易度に拘りがちです。支援者は「楽しめることが大切」ということをあの手、この手で伝えていきましょう。

さて、講演終了後のアンケートを送ってもらいましたので、以下もご覧ください。日頃の実践と照らし合わせて感じてくださった部分が大きいようで、こちらも勉強になります!

★アンケートより、感想
・本の世界観を大切にして、読み手の気持ち、心を揺り動かす内容にすることを学びました。
・自分の好きなものを読めるようになり、読んでいくうちに日本語の理解が進んでいく事が想像されます。理解の深さは個々により異なると思いました。
・とてもわかりやすい聞きやすいお話でした。読むことが楽しいという気持ちが大切なんだと思いました。
・多読によって、日本語を日本語として受け止めることが、日本語の力になるのだということがよくわかりました。支援者として、ついつい「わかる」ために「教える」ことに気がいってしまっていたので、「教えない」大切さに気が付きました。リライトを経験することで、やさしい日本語を使う難しさを実感しました。
・難しい言葉を使わずに、文章をリライトすることはとても難しかった。0~1レベルにするには、かなりそぎ落とさなければならなかった。
・先生の落ち着いたお話で、ゆっくりした気持ちで勉強できました。リライトも楽しかったです!無理強いせず、子どもたちが少しでも興味を持ってくれるといいなと思います。
・とても勉強になりました。そして楽しかったです。本を読むことは字を読むことではないということが心に残りました。
・長谷部倫子さんの本(日本語学習読本)がとても気に入りました。日本語入門レベルの学習者には入りやすい本だと感じました。外国人の学習者の目線にあわせて作成された本なのだなあと感じました。
・プリントで粟野先生のお話される項目が印刷されていましたので、傾聴に集中することができました。
・ことばはパーソナルなもの、活字嫌いは無理強いしない、絵から読み取る…他にもいろいろ印象に残る言葉がありました。今後の活動にいかしていきたいです。リライトのワークショップ楽しかったです!
・楽しく日本語を学ぶことができること。年齢を問わずできること。多読とリライトの楽しいところが良くわかりました。
・リライトの体験をして、語彙や文法についてあらためて考えるいい機会だった。レベル4ぐらいから新聞レベルまでの差を埋める事の大変さを(自分の体験を含めて)感じています。
・多読について知ることができて大変よかったです。リライトも楽しかったです。日本語教育セミナーで「読む」の講義を受けている最中なのでより身近に感じました。
・とても有意義でした。
・多読が必要と思っていながらもその時間をとっていないなと気づきました。多読をして目を輝かせて先生にストーリーを思わず話してしまう程、いつの間にか読書を楽しんでいる男性の姿が印象的でした。ガリ勉の子ども達にもそんな体験をさせてあげたいと思いました。リライトはみんなで力を合わせて楽しかったです。文の作り方がとても難しかったです。
・易しい本から多読することで読む楽しさを知ってもらうことは、遠回りのようで、卒業後や授業外も続けられるというメリットは大きいと気付きました。
・リライトがどんなものかよくわかりました。が、とても難しい。リライトを検索すると、話を再構築すると書いてありましたが納得です。絵のないリライトはもっと難しいのだなぁ…きっと。
・リライトの練習を通じて、語彙や文法制限や挿絵の重要性を実感し、子どもたちへの指導の助けになると思いました。
・とても参考になりました。特にレベル1にリライトすることが非常に難しいと実感しました。単語レベルだけではなく、全体の中での構成でしょう。またこのレベルでは絵での描写が手助けになるでしょう。
・レベル0-1の語彙、文法で表すのは難しいと思いました。学習者に新聞記事を紹介したいがリライトが面倒なのでそのまま渡している。読んでもらう為には必要な作業だと思いました。
・小学6年生の時、担任の先生が読み聞かせをしてくださいました。とても楽しみにしていたことを思い出しました。
・とても参考になりました。リライトは楽しかった。
・今後いかしていきたいです。勉強になりました。私自身も本に興味が出ました。
・リライトの苦労がわかった。
・多読をやったら子どもたちが目をキラキラさせて感想を教えてくれ、とてもびっくりしたので、セミナーに参加できて良かったです。
・実際にリライトの体験ができて良かったです。絵の大切さも改めて知りました。
・リライトの体験を実際することができて、具体的な方法が理解できた。
・リライトを初めて体験しました。文法・語彙の制限がある中でストーリーを展開させる大変さがわかりました。リライトした物語になんとなく抵抗がありましたが、最初の出会いとしては必要なのかと…。母語で読むことを奨励しながらかなという思いです。
・講座内容が素晴らしかったです。最後の質問に答えていただくところで、日頃の疑問が解けました。再話を必ずしも求めなくては良いのは目から鱗でした。ありがとうございました。

 

さて、7月27日には多読授業の1回目があり、しーんと静かに本を読む時間が訪れたそうです。早速、講座でお話した、字のない絵本で導入されるボランティアさんもいらっしゃったとか。その後の報告を聞くのが楽しみです!
(粟野)