新年最初の講座は、オンライン日本語多読授業入門講座でした。
参加者は7名。全員が海外からの参加でした。
今回は、インドの多読サークル「多読が好きクラブ」から4名の方が参加されました。このサークルは非ネイティブの日本語教師や学習者の多読クラブですが、クラブをよりよいものにしたい、また、ご自分たちが日本語を教えるときに多読を導入したいと考え、参加されたそうです。(「多読が好きクラブ」の活動は、昨年12月の日本語多読支援研究会で報告をしていただきました)。他は、タイ、フランス、アメリカから大学の先生や小学校、継承語教育の先生方でした。
まず、正会員の片山が「日本語多読とは」と題して、自分の受けた英語教育などを振り返りながら、多読の考え方をお話ししました。
多読による言語獲得のアプローチは、従来の教室で行われている文法や単語の積み上げ式学習と違って、やさしい本からたくさん楽しみながら読むことから始まり、徐々に頭の中に絵が描けるようにすることと説明されました。
読み方のルールも、支援のしかたもすべてこれを実現させるためのものです。
続けて大学での多読実践報告です。
引き続き、片山が、多読導入で最初にクラスですべきこと、本の提示の仕方、読んだ本のシェアの仕方、学習者の読んだ本の記録など具体的に語りました。オンライン多読についても最後に触れました。
その後、粟野が、ボランティア教室や一対一での多読について簡単に触れ、実際の多読の様子の動画をお見せしながら声掛けなどについての補足をしました。
休憩の後は質問タイムです。
「読むことが好きじゃない子供たちにどうしたらよいのか」というよく出る質問が継承語教育の先生からありました。
これについては、万能の処方箋があるわけではありませんが、もし、ファッションなどに興味があれば、ファッション雑誌からおしゃべりを広げてみる、少々難しくても話題の漫画を見せて読んでみる?と誘う、好きなユーチューバーを見つけさせる、などのアドバイスがありました。
「図鑑ばかり眺めているがそれでいいのか」という質問は日本人学校の先生から。小学1年生だというので、「それは全く問題ない」です。
結局、多読は「一対一の個人授業」でもあるので、支援者が本を媒体にしてひとりひとりと会話しながら、相手を肯定し、見守り続けて、たくさんの日本語に触れる世界にゆっくり導入していけばいいのではないかと思います。
インドの「多読が好きクラブ」のみなさんは、「多読に出会って、すごく自分自身が伸びた実感がある」「一度中断していて日本語をこのクラブのおかげでまた楽しく始めることができた」とうれしそうに話してくださいました。「クラブでは本を読む時間がとれていない」という心配も出ましたが、授業ではない有志のクラブなら、その場で読む時間がなくても全く問題ないのではないでしょうか。他の人のブックトークを聞いて共感すれば自分の時間に本を読み始める方は絶対いるでしょう。NPO多言語多読のオンライン英語多読講座も、講座では、いわゆる「ブックトーク」のみ、その場で本を読む時間はとっていません。そこでのおしゃべりが、読書への刺激となり、多読が続いていくのだと思います。
30分たっぷり、みなさんとお話しし、会は終了しました。今回、英語多読や日本語多読を実際に実践している方が多かったおかげで、経験から多読をともに語れる部分が多く、楽しく盛り上がりました。支援者も多読実践、は大切ですね。
以下は事後アンケートからの抜粋です。
- 大学での具体的な実践のお話をお伺いすることができたのは本当に有意義でした。また、質問にも丁寧にお答えいただき、今後、多読の授業を行なっていく上で参考にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
- 私も英語多読をやってみたいと思います。
- 多読という言葉は自分の中ではまだまだ新しい単語で、どういうものなのかというのが手探りの状態ですが、詳しくご説明いただいてどのような効果があるかやどこに効果を見出すかなどが具体的に見えてきました(中略)。また、授業に取り入れることについても、実際の映像を見せていただいてイメージが湧きました。
- 私は、英語と母語で子供たち向けの読み物を書いています。これは日本語でも書いてみたいと思います。読み物を作るワークショップにも興味があって機会があればぜひ参加したいと思います。
実践されたら、またその結果を伺いたいです。またどこかの勉強会などでお会いできますように。
次回の、オンライン日本語多読授業入門講座は、2月5日です。ご興味ある方、ぜひご参加ください。
(記 粟野)