7/23(日)「オンライン読みもの作成入門講座」報告

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7 月23 日(日)午前9時より、第17 回「オンライン読みもの作成入門講座」を開催しました。
9名が参加してくださいました。NPO多言語多読からは粟野、松田、田中、川本が参加しました。
簡単な自己紹介からです。中、高生の日本語支援、海外からの帰国生への日本語支援などの方が多く、大学、成人教育、またご自身が大学院で、日本語の読解をテーマにしている方もいらっしゃいました。
【作成の前に】
粟野が、多読用読みもの全般についての資料を示しながら、多読用読みものについて簡単に話しました。多読用の読みものに求められるのは、先が楽しみになる作り、ストレスがないこと、文字だけを読むのでなく、絵で字間を読む、物語に奥行きを付与することで、それを「よくばりなイヌ」(イソップ)を使ってわかりやすく解説しました。
次に松田が、読みもの作りのポイントを、実際の例をあげながら簡単に話しました。

いよいよ、読みもの作成体験です。

【レベル0の読みもの作成】
3つの班にわかれ、「アリとキリギリス」「カラスとキツネ」(ともにイソップ)のどちらかを選んでいただきます。
「カラスとキツネ」を2つの班が選び、「アリとキリギリス」を1つの班が選びました。

やさしさの感覚がむずかしくて、意見を言い合ったり、挿し絵の工夫をしたりしながら、「カラスとキツネ」班はなんとか最後まで完成しました。山場の演出のため、カラスをクローズアップしたり、表情をつけるなどいろいろな工夫をされていました。「アリとキリギリス」は少し話が複雑なこともあって、最後の場面が残ってしまい、残念でした。

 

【中級用読みもの作成】

後半は、中級レベルの文学作品のリライトです。題材は「蜘蛛の糸」(芥川龍之介)か「注文の多い料理店」(宮澤賢治)です。メンバーを入れ替えて題材を選びました。「注文の多い料理店」を2班が、「蜘蛛の糸」を1班が選びました。どちらもレベル3で作りました。
冒頭の部分のリライトだけの体験でしたが、どの班も、比較的大胆にカットしていました。いつものことですが、作品の味をどこまで残すのかが、難しいところです。レベル設定や対象者にもよりますが、例えば、極楽の情景描写や狩人の身勝手さなどもう少し盛り込んでもよいかもしれないという講評もありました。

(アンケートから抜粋)

  • 読み手のレベルを意識して、限られた語彙、文型の中でどのように場面の様子を表現するか考えることがとても面白かったです。みなさんとアイディアを出し合ったり、お互いの作品を見合ったりすることができ、大変勉強になりました。ありがとうございました。
  • これまで、読解の読み物として、日本語学習者のレベルに合わせて、読み手がつまづかないよう、文法や語彙の導入の方法を考え、文章の作成を行っていましたが、今回の多読の読み物作りがまた新しい観点からの手法でしたので、とても勉強になりました。
  • 一番感じた事は、多読は教育の一環ではありますが、何より「本」を読むことだ、という事です。やはり本は面白いと感じなければ読みません。エンタメ性、文化的知識、道徳の学び、描写の豊かさなど、何か得たものがあって満足します。それらをリライトで失くしてしまわぬよう気を付けなければならないと思いました。
    多くの学びをありがとうございました。

今回は、3時間で、入門用と中級用の読みものを2作リライトしたので、完成には至りませんでしたが、受講経験者向けに、1つの読みものを作って持ち寄る講座も予定していますので、興味を持った方にまた参加していただけるとうれしいです。

この「入門講座」は次回は9月24日(日)日本時間16時からです。

川本記