多読とTOEICと定期試験 ある児童英語教室から・・・

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先週末、愛知県で図書館多読の話を聞いてもらって、あらためて「多読/tadoku」は
みなさんが築いてきたのだと痛感しました。
講演会のお手伝い、(かつての)SSSの掲示板や多読フォーラムの投稿、
わたしが直接いただいたメール、オフ会での会話、わたしが蓄積した「多読/tadoku」の知識や知恵はほとんど全部みなさんからもらったものなのです。

(宮沢賢治の詩にそんな感じの一節があった・・・)

今回紹介するのは児童英語教室で多読支援をしている仲間です。

(今後世間で話題になるTOEFLも多読・多聴で十分という例にもなっています。)

ある人があちこちの英語サークルを訪ねて、その感想として、
「多読観の一致する人っていないもんですねえ」
長嘆息していました。それはほとんど多読の運命のようなものですね。
そのこともこのメールに出てきます。

私立高校2年生のS君は、中三からこちらで多読をしています。彼の通う学校では、大学の内部進学について、英語に関してはTOEFLで3年のある時期までに学校が決めたスコアを超えなくてはなりません。S君の目指す学部はその中でも一番高いスコアを要求されていましたが、彼は前回受けたTOEFLの試験で、目標ラインを突破したそうで、先日、”第一志望の理系の学部に行くには、数学などのテストでまだがんばらなくちゃならないんですが、英語はこれでどこでもフリーパスです!”リスニングと短文の問題がすごくよかったんですよ”と、嬉しい報告をしてくれました。S君なら大丈夫と思ってはいましたが、高3時の進路決定の時期までに超えられれば。。という感じでいたので、こんなに早く結果をだしてくれるとはちょっと驚きでした。

TOEFLは、私自身は受けたことはないのですが、問題を見てみるとやはり
学校の英語や英検、またはTOEICよりもずっとナチュラルで幅広い力を
要求されているようでした。余計な事をするよりも多読のほうがいいと思い、ぶれずに、中学の時と同様、高校に入ってもこれまで通りの多読、多聴中心のレッスンを続けてきました。(TOEFL試験前は少し自分で練習問題を解いていたようです。)

ところがそんな折、S君のお父様から
”学校の定期テストの成績が酷かったので、学校の勉強を見てやってください”と頼まれてしまいました。こちらへ通って頂く際に、保護者様にも、本人にも、”ここは多読のお教室であって塾ではありません。高校生は学校の勉強は一切見ません。それでも良ければいらしてください”とお伝えしてあります。実際、多読をしていれば、定期テストは、自分で少しテスト前にドーピングすればだいたい平均くらいはどの子も取れている感じです。けれど、S君の今回の定期テストはかなり低かったようで、答案用紙を見たお父様はちょっとあせってしまっていた感じでした。

(S君本人はあまり気にしていなかったのか??まるめておいて置いたのを
突然見つかって、大目玉をくらったとか。。)

私としては、高校の英語の成績に縛られているようでは本当の力などつかないと思っていますので、ポリシーのまま、”こちらでは学校の勉強はしませんとお伝えしてあったと思います。学校の勉強に力を入れて暗記や文法をやりすぎると、本当の英語の感覚を邪魔してしまうと思うからです。”

と、お伝えしたのですが、その辺はやっていない方には理解し難いらしく、中々伝わらないようでした。多読のお話しをさせてもらっても、実際に多読をしているわけではない保護者様に分かって頂くというのは楽な事ではないなと思うことがあります。何せ、多読をしていない人に”多読を理解してください”と言ってるわけですから難しいのも当然なのですが。。

(多読している人にも”どうもその辺理解してもらえないなぁ”と思うことがあるのに。)

そんなわけでとりあえず、今回だけはということで一度定期テストのお手伝いをしましたが、よくよく話しをS君から聞いてみると、またこれがおもしろくて。。
高校に入って、これまでほとんどまったく定期テストのための勉強はしていなかったようです。しばらくは大丈夫であったようですが、さすがに有名な難関校で、2年の終わりにともなればそうは簡単とは行かなくなったてだんだん落ちてきていたというところでしょう。でも、もともととてもかしこいお子さんですから、ちょっとお付き合いしたら”とりあえずもう大丈夫です”ということに落ち着きました。それにしても、今回お付き合いした高校英語。もう本当に勘弁してくださいという感じでした。ああいったものに付き合っていたら、こちらの英語がおかしくなりそうで。

ところで、今回のTOEFLのテストで、目標ラインを達成できたのはクラスで4、5人だったそうです。そこに、”定期テストで大目玉をくらう”ような状態だったS君が飛び込んだわけですから、”学校の英語に縛られてたら、本当の英語の力はつきませんよ”

と言う意味、お父様にも少しは伝わったかな??と思っております^^;)
(まあ、実際私は受けたことが無いので、TOEFLが本当の英語力を
どこまで反映してくれるのかもちょっと分からないのですが。)

ところで先日は、S君約一ヶ月ぶりのレッスンでした。1ヶ月も間が空くとやっぱり感覚が鈍る感じで会話をしてもなかなか思うように言葉が出ない。また、ある記事を読んでもらい、英語で感想を述べて書いてもらおう思ったのですが、なかなか出てこない。書いてもらっても、とても表面的。1ヶ月のブランクと言うものもあるけれど、これではいけない、ということを解ってもらうため、同じく高校生で、小学生の頃からこちらで多読しているの女の子が書いた、同じ記事への感想文を読んでもらいました。それを読んだS君は

”言いたいことが良く分かります。
言葉を使いこなしているという感じ。それに、僕は、
まだ此の記事を、英文としか捉えてなかった。
もっと記事として読めるようにならなくちゃいけない。”

と、言ってくれました。S君の言うとおり、その女の子の文章はよく書けてるのです。それは完璧な文章いう意味ではありません。でも、間違いが一杯あっても、意見がたくさんあり、言いたいことがたくさんあるのが伝わってくる文章なのです。

S君はその辺の違いに気付いてくれました。また、”自分はまだ英文としてしかとらえていない”と、いうことに気づくことが出来たところもすごいと思うのです。おそらく、そんなことは普通は気付かないでしょう。例えそう先生が指摘したところで、それがいったいどういう意味なのか、”英語をお勉強だけ”してる人には理解できないかもしれません。英検やTOEIC、TOEFLなどでいい結果を目指してしまうと、なおさらそうした数値だけの結果で得意な気持ちになったり、学生さんだと余計にそういうことに熱中して行ったりしがちなので少し気になっていたのですが、S君には目指すべき力がどういうものなのかを理解する力がちゃんとついています。だから彼もきっと大丈夫だと思います。

もう英語に関しては、試験の心配もなくなったから、これからは本当に思いっきり、使える英語目指してやっていこうね!!とい言うと、”はいっ!”と、元気な返事が返ってきました。

これからこそが楽しみなS君です。

引用して強調したい点はいくつもありますが、やめます。
きっとそれは「分かっている人」にはうるさいことでしょう。
そしてこのメールを読んで分からない人にはいくら解説しても分からないような気がします。

Tさん、ありがとう! Sくんも、ありがとう!!

追記
やっぱり一言だけ。TOEFLよりも定期試験の点数が悪いのは定期試験は不自然な英語だからですね。
でも、それも分かりにくい点であることは間違いないでしょうね。

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