第14回「多読支援セミナー」報告 その①

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8月10日(日)、オンラインで多読支援セミナーを開催しました。録画視聴を含めて91名(日本語57名、英語33名)のお申し込みがあり、当日ピーク時には51名が画面に集まりました。国内は北海道から沖縄まで、国外はアメリカ、インドネシア、カナダ、カンボジア、ニュージーランド、フランス、メキシコと、幅広い地域からの参加がありました。午前は全体会、午後は日本語・英語に分かれて分科会を行いました。当日の様子をこれから3回に分けて紹介していきます。

(A)多読のおさらい

報告:小川

日本語支援者の片山智子さん(NPO多言語多読正会員・東京大学)から、「おさらい」として「多読とは」「多読支援とは」が説明されました。多読三原則や4つのルール、そして多読支援三原則は短いことばで表現されていますが、それぞれどのような意味をもつのか、ていねいに解説されました。初めて参加した方にも、毎年のように参加されるリピーターの方にとっても、あらためて原点に立ち戻ることができる時間だったのではないでしょうか。

(B)ワークショップ「いま、多読だからできること」

報告:荻野

「最近、言語学習のあり方が変わってきていると感じませんか?」という作田奈苗さん(NPO多言語多読正会員・津田塾大学)の一言からスタートした、今回のワークショップ。まずは、こちらのテーマについて、過去に実際にあった事例を、NPO多言語多読の会員の声としてご紹介しました。「読む」「聞く」「書く」「話す」「文法」など、様々な観点から、自動翻訳アプリなど、発展したAI技術とどう付き合っていくのか、そしてYouTubeやアプリを活用した学習法について経験談をご紹介しましたが、参加者のみなさんも共感していらっしゃるようでした。

その後、4〜5人の小グループに分かれて、各グループごとに昨今の語学学習について、ご自身の経験を語っていただきました。ChatGPTなどを活用している方も多くいらっしゃるようで、とても便利である反面、人間らしいコミュニケーションを学ぶには向かない、というご意見も見られました。

最後に、これまでの話し合いを踏まえた上で「今の時代に多読をする意義」について話し合いました。「勉強ではないから楽しい」「自分でわかる、という喜びを得られる」「仲間がいるから楽しく続けられる」「文化を学ぶことができる」「想像力、表現力を育てることができる」など、各グループごとに話し合いの結果をまとめていただきました。オンライン素材を使っていらっしゃる方も多いようですので、紙の本の良さ、というのを改めて考える良いきっかけにもなったのではないでしょうか。

各グループのまとめを見る >>

参加者のみなさんからは、以下のような感想をいただきました。

アンケートより抜粋

  • 片山さんの「多読のおさらい」のなかで、多読のルール「わからないところは飛ばして読む」を「全てがわからなくても大丈夫」「これが自然な読み方」だからと説明なさっていたのが印象に残りました。
  • AIの台頭により日本語学習は大きく変化し、学習者が求める教師・支援者像も変わりつつあるため、学習者同士のつながりや学習者と教師(支援者)が作り出す場の空気がますます重要になっていると感じました。
  • 直球のタイトルで、現在の状況把握から、話し合いととてもイクサイテングなワークショップだった。多読について教師としてどんなことをすればいいか、学習者として多読を続けるには何をすればいいのかが見えてきてよかった。
  • 「多読・多聴・多観」の観点からはyoutube等も含めて、強力な助っ人現るが結論でしょう。唯一「書く」の指導でAIをどう使うか、使わせないかが問題とされたが、評価したければその場で書かせればよい。が、「評価しない」が多読の方針で、「それでも言語習得は可能」が哲学なのだから問題はなくなり、技術革新はtadokuの味方でしかない。ついて行けないと、「学生がどんどん先に行き、先生が追いかける」(作田先生談)ことになる。
  • ワークショップでも、異なる場面で多読に触れているみなさんと話す中でも、考え方の共通点がみつかり、「なぜ多読なのか」の肝を確認できたように思う。
  • 多読だからできることは、読解とは全く異なり、自分の好きなものを読むことで、想像力や語彙力がひろまり、類推の力もつき、さらには日本語への理解が膨らむと考えます。多読にしかできない強みだと思います。
  • 少し前までは想像もしなかったツールが誕生したり、それが瞬く間に広がったり、AIを利用した翻訳の性能が飛躍的に向上したので、必要な情報を母語で得ることが容易になってきました。だからこそ、母語を介在しないで外国語をそのまま楽しむという喜びが得られる多読に価値があると思います。
  • アウトプット、特に生徒、学生の作文(多読に関する話題ではないのだが)で、自分でも読めないようなあきらかにAI作のものが出てくる。子どもの場合、頭ごなしに否定するのもまずいので悩むそう。インドネシアの大学の場合、評価をゆるゆるにしたら、AI作がぐんと減ったというのが面白かった。

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報告その②へ続く