4/6(日)「日本語多読授業入門講座」報告

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東京で、桜の花が盛りとなった4月6日、2025年度最初の入門講座が開催されました。
参加者は日本から4名、ヨーロッパ2名の計6名で、日本語学校の日本語教育、外国にルーツがある中高生の支援、大人向けのon-line教室、子供の継承日本語教育など、様々な場面で日本語教育・日本語支援に携わっている方々が集まりました。講師を務めたのは、片山(正会員)と高橋さん(正会員)でした。

片山が担当した前半部分の概論では、多読の特徴、多読のための本の紹介、支援者の役目などについてお話ししました。

多読は、誰でも、どこでも、自分の目的に合わせて楽しむことができる活動です。学校の多読授業でも、学習者が主体となって自由に読んでいくことが大切で、教師に主導されながら細かく意味を確認していくような読み方はしません。語彙や文法に縛られずに、読み手が自分の頭の中にストーリーを描けるような、自然な読みを身につけられるのが多読なのです。そして、教師は一人一人をよく観察して、一緒に読書を楽しむ仲間になったり、その人に合った読みものを紹介したりして、あくまでも「支援者」として学習者に寄り添います。

後半は、国内外の大学での授業や課外活動で多読支者経験のある高橋さんから、対面授業やオンライン授業での工夫、学習者が興味を持たせるような本の提示の仕方など、具体的な実践例が紹介されました。

途中、高橋さんと参加者がやり取りをしながら多読用のよみものを読んでみるという活動もあり、字のない絵本「あいちゃん」を使って、頭にストーリーを描いていくという多読の「読み」を皆で体験しました。楽しく読むための工夫として、授業に取り入れる活動例も紹介されました。多読支援に関するQ&Aや多読に関する研究例は、時間の関係で資料が配られただけでしたが、今後、実践される際には大変役に立つと思われます。

質問コーナーでは、具体的な支援の方法に関する質問が寄せられました。

Q:本を読みながら音楽を聞いたりしていてもいいのか
A:学習者によって、読書を楽しめる環境は違うので、個々のスタイルを尊重する。

Q:オンラインでの1対1のクラスで、多読を取り入れる方法は?
A授業外に読んでクラスでは本について話すようにしたり、支援者と学習者が(同じ読者として)いっしょに読む時間を設けてみたり、学習者に合った方法を選ぶといい。

Q:実践の紹介にあったプロジェクト活動とはどんなことか
A:1学期間たくさんの読み物を読んできた学習者が、最後に自由にやりたいこと(自分が読んだものに関連していればなんでもOK)をして提出する活動。ただし、多読の目的はあくまでも「楽しんでたくさん読む」ことなので、活動をさせることが目的にならないように注意が必要。

以下は事後アンケートからの抜粋です。

  • これから多読を始めるにあたって疑問に思いそうなことを、先取りして聞くことができた。
  • 文字無し絵本の読み進め方を実際にしていただいて、なるほどと思いました。
  • 文法や言葉を教えることではなく、重要なことは、楽しく日本語で理解できることなので、生徒にもっと日本語を好きになってもらえると感じた。
  • 「読み物作成入門講座」にも参加したいと思いました。

参加者の全員が、「図書館の司書と相談中」「同僚に多読授業を提案したい」「現在活動している場に適しているので早速取り入れたい」と、積極的に多読に関わって行こうという意志を示してくださり、大変うれしく思いました。

(片山 記)