3月2日日曜日、毎月恒例の日本語多読入門講座が行われました。参加者は、日本とアメリカからの計5名で、大学教員の方々のほか、小中学生の日本語教育に関わっている方やインターナショナルスクールで日本語教育に携わっている方でした。今回の講座を担当したのは、前半の理論が高橋亘(正会員)、実践が纐纈(正会員)、司会が粟野でした。
理論では、まず「多読とは何か」という基本から始まり、支援者の役割や多読の実施形態、事後アクティビティ、本の選び方、日本語多読の先行研究までが網羅されました。多読のルールはあくまでもガイドラインであり、一人ひとりとの対話が大切だという話は、「押し付けない」多読ならではだと思います。また、「教えない」多読では、学習者と一緒に考えることによる信頼関係の構築、および場作りの重要性が強調されました。さらに、対面・オンライン含めた様々な多読実施の形が紹介され、中でも授業の一部として導入しやすい「ちょこっと多読」がおすすめとのことでした。
後半は、アメリカの大学機関での独立多読授業についてお話ししました。隔週クラブを1年間行なった後で授業を立ち上げた経緯をお話しし、無理せず各機関でできる範囲でゆるく始めてみることをおすすめしました。そのあと、具体的な教室内活動や課題、多読の効果、教師の役割などについて説明しました。最後に、多読の目的は、日本語力を伸ばすというより読書の楽しさを知ってもらうことであるとお話しし、みなさんで「文字のない絵本」を読んでみました。絵を読み解く面白さ、楽しさを少しでも感じていただけたなら幸いです。
今回は、すでにちょこっと多読を実践している方や、同僚が多読クラブを長年やっていて読書環境が整っている方がいらっしゃいました。そのためか、質問タイムでは、普段から疑問に感じていたことをお話しいただけたようです。「難しい本を読みたがる学習者への対応」「絵本に抵抗を示す大学生への対応」「声かけのタイミング」」「子ども向けの本の選び方」「集中力が続くのは何分ぐらいか」など、具体的なものが挙がりました。お答えを探しながら、私たちも色々考えるよい機会になったと思います。
以下事後アンケートからの抜粋です。
・多読の基本的な説明と実践紹介の両方があり、初心者の私にとっても分かりやすかった。
・多読の基本、根本的な目的の説明を改めて聞けたことがよかった。大学のクラスの実践体験を聞けた。少人数だったので自由にアイデアを交わせ、聞きたい質問に答えていただけた。
・おすすめのマンガについて知りたい。
・現在所属大学で課外活動として多読をおこなっているが、これからも続けるべきだという理解を深めることができた。
・今日習ったことを活かして今行っているちょっと多読を改善しながら続けていきたい。来年は多読クラブが作れればいいと思う。
・対象が子どものため方法を工夫しながら、導入が可能だと思う。
・文字なし絵本を使っての読書はこれから色々な可能性が見えてきて勇気づけられた。漢方薬の中の特効薬である多読は、支援者である私がゆっくりのんびり続けて行けばもっと発見できることがあると気がついた。
アンケートでは、読みもの作成講座に興味があるとのお声もいただきました。本NPOでは、定期的に様々な催しを行なっています。今後ともぜひご参加いただけたらうれしく思います。
(正会員・纐纈)