8月25日の朝9時から、「オンライン読みもの作成入門講座」を開催しました。
参加されたのは、5名。オーストラリア、タイ、国内は、東京、熊本、岐阜からでした。立場も大学や中高の先生、留学生といろいろです。NPO多言語多読の理事、粟野、川本と正会員の田中が講師を務めました。
最初に粟野がNPO多言語多読作成の多読素材の概要をお話しました。
NPOが監修したものが、280ほど。その他の作成グループの作品を合わせると、おそらく1000は超えているのではないかとお話ししました。だいぶ、読みものの環境が整ってきたと思います。
作成時に心がけているのは、当たり前ですが、面白いもの。そのために、オチがあるストーリーにするなど、読み手の立場に立って考えることが重要だとお伝えしました。
レベル分けをどうしているか、それぞれのレベルで文と挿絵の分量はどのくらいになっているか、少し詳しく見た後は、早速、レベル0の「カラスとキツネ」の作成に入ります。
同じイソップの「よくばりな犬」の作成過程を見ていただいた後、2つのブレイクアウトルームに分かれて、作成開始です。
両グループとも、入門者には難しい言葉「くわえる」を回避するための工夫がありました。
キツネの魂胆を読者に知らせずに、カラスを「ほめ殺す」キツネを丁寧に書いたグループ、導入をごく短い言葉にしたグループと、特徴がある2作品ができました。
作成後、どこに苦労したかや感想などを話してもいただくと、「使ってよい語彙の判断に迷う」「複数で作るといろいろなアイデアが出て面白い」などの答えが返ってきました。
「ああでもない、こうでもない」と考えて作業することは、「読む」という行為をいつもとは違う観点で見直すことにもなり、実は教師の視野を広めることにつながるのだと思います。この作業、オススメです!
後半は、川本が読みもの作りのポイントを説明した後、中級レベルの文学作品「注文の多い料理店」のリライトをしました。
レベル3にするため、どんどん言葉を削って簡単にしたグループと、やや難しい言葉が入っても、できるだけ原文を残したグループの対照的な2つのリライト(冒頭の部分のみ)ができました。宮沢賢治らしいオノマトペをどう残すかは両グループとも悩んだようです。同じ作品をリライトしたので、互いのリライトに感心したり、気づいたこともあったようです。
2回の作業を経験した後、みなさんから感想を述べてもらいました。
・皆と一緒にリライトをしておもしろかった。日本語を勉強していたときに、このような本があったら役に立ったと思う(留学生の立場として参加)。
・読みものを作るということが初めてだったので、レベルごとにどのくらいの言葉を使えるのかとかいろいろ、グループでやる中でたくさん教えてもらえた。
・学校の授業に、今日学んだことを生かせたらいいなと思います。
・グループでリライトをした時に色々発見があっておもしろかった。 考え方とか解釈の仕方が色々聞けてよかった。ここで学んだことが学校の授業にいかせるといいなあと思う。
・読み手が何を求めているかで、イラストの指示も違ってくると思った。本当に勉強になりました。
事後のアンケートからも声をいくつか拾いました。
・切り捨てたり、残したりの作業中に「その理由は何か」にこだわることが大切だと思いました。
・複数の人の考えを聞きながら、リライト文を考えるのがとても面白かったです。読み物の何に焦点を当てて、それをどのような言葉で生かすのかを考えることは、文章の種類によっても変わることを実感できました。た、特にレベルが低い文章へのリライトほど、1冊の本を作るという視点から構成を考えること、必要な情報と言葉を絞り込むことが大事だと学びました。
・多読の実践報告が聞きたい。
・一つの話をレベル別に書いてみる講座があったら受けてみたい。
今後も、経験者向けの読みもの作成講座や実践報告を聞く会を開催していく予定です。
また、参加していただければと思います。
(田中 粟野 記)