昨年の多読支援セミナーで、西保見小学校の松本先生に、前任校の保見中学校の読書プログラムについて発表していただきました。
それ以来、実際に現場を見学させていただきたいと願っていましたが、この度、ご厚意で、小学校と中学校の見学が実現しました。
豊田市の保見団地と言えば、ブラジルをはじめとする南米出身者が多く住むマンモス団地として有名です。
最寄駅から、団地を通りながら走るバスに揺られて、まず、団地西側にある西保見小学校を訪ねました。
思ったよりこじんまりとした印象の学校でしたが、在籍児童の約60パーセントが外国籍だとのこと、あちこちの外国語の掲示物が目に入ってきます。
4時間目の5年生の取り出しクラスに到着しました。子どもたちは、この日は7人。松本先生があらかじめ、今日、私が来ることを子供たちに話しておいてくださいました。
紹介の後は、早速、今日の授業。
レベル別日本語多読ライブラリーの最新刊「スタート」の8冊をみなさん、既に読んでいて、その中から一番好きな本の発表をしました。
『アリとハト』『しりとり』などの紹介がありました。
その後、子どもたちは2つのグループに分かれて、人気がいまいち?だった『西町交番の良さん/あぶない!』と『森のコンサート』をもう一度みんなで読む作業をしました。
文字を読みながら、さっさとページをめくる子どもたちに「絵をよく見てね」と声をかけたところ、すぐに一人が看板をつっているひもをかじる虫の存在に気がつきました。スポットライトが当たるぞうさんの汗の意味も理解して、最後に読み取ったことをお話ししてくれました。もう一つのグループは『西町交番の良さん/あぶない!』の絵を丁寧に見ていきました。絵をじっくり見ていた男子が、絵の中の人物のポーズをまね始めたので思わずニヤニヤしてしまいました。「あぶない!」と言っていた良さんが、最後は逆に他の人に「あぶない!」と言われたわけもみんな理解できたようです。そうして2冊の「魅力再発見」をした後は、好きなお話の順番を書き換えて、終了。
(教室の後ろに「読書マラソン」の記録用紙が掲示されていました。これはレベル「スタート」の8冊の記録です)
こちらの学校で日本語支援をされているNPO多言語多読の会員Aさんにも初めて対面でお会いすることができて、うれしかったです。
給食をいただいた後は、保見中学校へ松本先生と移動。
この日は、近隣の小学校、中学校の先生たち数名とも合流して、中学1年生6人の読書の時間を見せていただきました。
まず驚かされたのは、生徒6人に対して、先生方も6人。つまりマンツーマンの体制だったこと。学校全体で、この取り出し授業に取り組んでいる様子がわかります。
生徒と先生でペアになり、前回までの読書記録に今回読んできた本のページ数を書き入れたりした後、読書開始。読み終わると隣に座っているペアの先生にお話を再話。それが終わると、その内容を書く作業へ。「レベル別日本語多読ライブラリー」「にほんご多読ブックス」の他に、ウェブ上の「無料の読みもの」もダウンロードして使っていただいていました。
最後に、読んでも読まなくても3冊は持って帰ることになっているようでした。
その後、「ワールド図書館」も見学させていただきました。昨年、セミナーで、松本先生にお話ししていただいた「ワールド図書館」をこの目で見ることができました。レベル別の多読用読みものと絵本がレベル別にずらっと並んでいました。
授業のあと、見学の先生方も含めて多読について少々お話しし、意見交換をしました。
読み聞かせを主にされていて、まだいわゆる「自力読み」までいっていないという先生や、やっと多読用図書を購入できたので、これから始めたいとおっしゃる先生などいらっしゃいました。近隣の小学校、中学校の先生方が連携していて、こうやってさっと集まるというのもすばらしいです。
生徒さんたちが、自分で読みたいものを選んでどんどん読んで、本の世界で遊んでくれるといいなあと思いました。
(粟野 記)