7月3日(日)オンライン日本語多読授業入門講座 報告

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年を追うごとに夏の厳しさが増していますが、東京都心が9日連続の猛暑日を記録した7月3日、オンライン日本語多読入門講座が行われました。今回、理論を担当したのは理事長の粟野、実践担当は会員の纐纈(はなぶさ)でした。参加者は全部で6人、うち4人が大学勤務の方でした。3人は日本の大学、1人はアメリカの大学で日本語授業を担当されています。残る2人はプライベートで日本語支援をしている方たちでした。日本語多読について初めて話を聞くという方が数名いましたが、中には以前多読支援をしていたがブランクがあるのでブラッシュアップしたい、英語多読の支援経験はあるが日本語多読支援も始めてみたい、というケースもありました。

まずはじめに、粟野から、日本語多読が始まった経緯や基本の考え方、読み方のルールを紹介がありました。そして、支援者の役目は何かについて説明しました。支援者は、時には図書館司書、あるいは保育士さんのように学習者に接する、日本語の海に入ってみた学習者を必要に応じて助ける。こういったたとえは、参加者にも理解しやすかったのではないでしょうか。そのあと、多読用の読みものをレベル別に紹介しました。最後にアンケート結果による学習者からの反応・感想をお見せしました。

続いて、纐纈が、自分が行っている大学での独立した多読授業の実践を紹介しました。まず、授業内活動の中心は個別読書であること、全体活動として時々ブックトークや読み聞かせを入れていることをお話ししました。学生は、1冊読むごとにオンラインの読書記録を提出します。成績を出す授業なので、評価の仕方についても触れ、学期末のプロジェクト発表についても紹介しました。そして、簡単にオンラインで行う多読授業について、そのメリットや難しさについて話しました。最後10分ほどは、参加者のみなさんと「読書とか何か」について考え、字のない絵本を使って「絵を読む」体験をしてみました。絵を読み解く楽しさを少しでも感じていただけたならうれしいです。

休憩を挟んでの後半は、2グループに分かれて、質問を受けたり、ディスカッションをしたりしました。「大学の通常授業の中に多読を取り入れる予定だが、頻度や多読時間はどの程度が適当か?」「聞き読み・音読のやり方はどうするか?」…などの質問がありました。実践紹介の中で「多読では普段の授業で目立たない学生が光る」というお話をしたのですが、みなさん深く共感してくださいました。また、リラックスする時間を作りたいという理由で、多読導入を決めた方もいらっしゃいました。様々なストレスが周りにあふれている今、多読の持つ意味はますます重要になっていると感じます。

以下事後アンケートからの抜粋です。
・日本語多読の基本的な考え方から実践まで、まず知っておきたいことがまとまっていてとても勉強になった。
・多読の基本から実際の授業での活用方法、また実践報告まで聞けたことが、大変役に立った。
・質問コーナーで他の先生方と色々な情報を共有できたことが勉強になった。
・少人数でアットホームな雰囲気だったので、質問がしやすかった。質問にも丁寧に答えてくださり大変助かった。
・国内、海外の大学の授業で日本語多読が多く採り入れられていることを知らなかった。
・多聴や多観についてももう少し聞きたかった。
・ボランティア教室について、もう少し詳しく聞きたかった。
・今後もオンラインで気軽に参加できる情報交換会のような場があればいいと思う。

応用の幅が広い多読は、色々な環境で違った学習者を対象に実践している人が世界中にたくさんいます。ですから、入門講座に1度参加するだけではなく、引き続き様々な支援者と意見交換していくことが大切です。そのために、NPOでは夏の多読セミナーや勉強会などの機会も作っています。また、今回の参加者の中には、来学期からの多読導入が決まっている方も数名いらっしゃいました。実際に活動を始めてみた感想などをぜひお知らせいただければと思います。楽しみにしています!

(正会員:纐纈憲子)