5/22(日)「オンライン読みもの作成入門講座」報告!

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5月22日(日)午後4時より、第9回「オンライン・読みもの作成入門講座」を開催しました。
今回の受講生は、タイから2人、ドイツから1人、国内から2人。多言語多読からは粟野、田中、松田が参加しました。

簡単な自己紹介からスタート。大学、高専、国際交流基金、地域の日本語教室でボランティアをされている方、そして、アニメ制作をしていらっしゃる方など、多様な立場からのご参加でした。また、理科系の学科で学ぶ学生に関心分野に合う読み物を作ってあげたい、日本語指導をする時に使っている多読の読み物がどのようにしてできるのか知りたい、など受講の動機もさまざまでした。

【作成の前に】

粟野から、多読用読みものについて説明がありました。多読用読みものとはどういうものか、どのようなものがあるか、題材選び及び著作権、レベル分けなどについて「にほんごたどく特設サイト」の資料を示しながら、簡単に話しました。
次に理事の松田が、読みもの作りのポイントを同サイトの「日本語の多読向け読みものを作ろう」のページを見ていただきながら具体例をあげて解説しました。

【実践その1】
いよいよ実践です。事前に読んできていただいたウエブサイトの内容、粟野と松田がお話ししたことなどを踏まえて読みものを作っていきます。
まず、例として当NPOの「無料よみもの」のサイトから「カラスと水さし」を見ていただいて、「レベル0」の絵と文の入り具合、展開の仕方を確認していただきました。
受講生2人と3人の二つのグループに分かれて、初級レベルのリライトに挑戦です。題材は、イソップのお話を3種類、事前にお知らせしておきましたが、どちらのグループも「ウサギとカメ」を選びました。

粟野から、場面割りをしてから始めてくださいという指示があり、2つのグループがそれぞれブレイクアウトルームに入って制作スタート。

グループ1では、まずウサギとカメの絵を入れてみて、キャラクターをイメージするところから始めました。

グループ2では、まず、物語の始まりと、中盤、そして終わりの部分でページの分量を3つに分けるところから始めました。制作の途中で、カメのキャラクターについて「まじめで努力家というのではなくて、ちょっと腹黒い感じにするのはどうだろう」などという意見も出て、楽しい作業でした。

どちらのグループも、完成まではいきませんでしたが、こんな感じの「ウサギとカメの話」というのがわかるところまで仕上がりました。

40分ほどでメインルームに戻り、2つの「ウサギとカメ」を読みながら、苦労した点などを話し合いました。

グループ1は、各ページの文字数も多く、レベル1に相当する読みものになっていました。低いレベルの文型で話を作るのが難しかったということでした。

【実践その2】
後半は、中級レベルの文学作品のリライトです。メンバーをシャッフルして再び二つのグループに分けてスタートしました。題材は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」と宮沢賢治の「注文の多い料理店」のどちらか。こちらも、ともに「注文の多い料理店」を選びました。

ブレイクアウトルームに分かれてから、レベルをどうするか話し合っていただきましたが、どちらもレベル3でリライトすることになりました。

それぞれのグループが、語彙や文型の制限下で、賢治らしいイメージを出すということに苦労していたようです。約40分でメインルームに戻っていただきました。

どちらのグループも、賢治らしいオノマトペの扱いに、迷ったようです。グループ1が、省略した部分がいくぶん多かったようでしたが、どちらのグループも失った猟犬2匹の値段が240万円と280万円と同じだったのが面白かったです。なんと、グループ1の場合は、原作の2400円と2800円を今の貨幣価値に換算したそうです。グループ2は、高めにしたほうが見栄っ張りな男たちに見えるからという理由だったのですが。それにしても高い犬ですねえ!!

講評として、もう少し情景や雰囲気を表すため、「大きい犬」だけではなく「白い大きい犬」くらい入れておいてもいいのではないか、後半で男たちがひどい目に合うのが当然だと思えるように、狩りを楽しみにしている男たちの様子を残してもいいのではないか、という意見も出ました。

あっという間に終了の時間が来て、それも10分ほど超過して終わりました。

いつもながら、駆け足で進む「読みもの作成入門講座」です。作品を完成させられなかったことは、少し残念に思われた方もいらっしゃると思います。 作品を完成してみたい方は、後日ご案内する「初級用読みもの作成講座」「中級用読みもの作成講座」にぜひご参加ください。

【事後アンケートからの抜粋】

読みもの作りをしてみて

・想像以上に楽しい代わりに、想像どおり大変でした。
・同じ作品をリライトしたのに、それぞれのグループが何を大切にしたのかで出来上がったものが違ったところが面白かったです。

今後の読み物づくりのアイデア

・参加者が持ち寄った素材でそれぞれに作ったり、すでに作ったものをみんなで検討したりする機会があったら面白いと思います。
・(英語多読でよく使われる)Oxford Reading Tree の低いレベルを真似して、オリジナルの話を作ってみるのはどうでしょう。

質問

Q:単語の変化(作る、作って、作られて、作った、作らせていただいて…など)をどこまで許容するかは、レベルによって、細かく決められているのでしょうか。

A:はい。一応決めています。NPO多言語多読「にほんごたどく特設サイト」を、ご覧ください。

1)レベル別の語彙表と文型表および「レベル分けの目安」に、語彙表と文型表があります。
但し、何としてもこの範囲内で、ということではなく、イラストや前後の文章、また、意図的に同じ言い回しを数回使う、などによって学習者にわからせる方法もあります。

Q:実際に作品を作る際、最初から複数人で話し合いながら進めていくのでしょうか。それとも、誰かが作ってきた物語や、リライトしたものに対して、複数人で検討していく形をとられているのでしょうか。

A:いろいろな進め方があります。昔話など、誰でも知っている話を再話の形で仕上げる場合は、2人から数人で、話し合いながら完成させることがあります。また、長めの文学作品のリライトや創作作品は、一人の人が作ったものを何人かで検討します。

読みもの作りが面白いと思われたら、会員になって、上記のようなワークショップに加われます。ぜひ、ご検討ください。
(理事 松田記)