5/1(日)オンライン日本語多読授業入門講座 報告

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今年のゴールデンウィークは天候不順で、5月に入ったというのにとても寒い日が続きます。でも、雨が降っても寒くても、オンラインなら快適です。今回のオンライン日本語多読授業入門講座は内外の日本語学校の先生を中心に、5名と、4月に引き続き比較的少ない人数で開催されました。

今回の講師担当は、正会員の高橋が多読の概論を、同じく正会員の作田が多読授業の実践報告を担当しました。

高橋担当の概論では、まず、従来の読解授業との違い、多読のルール、支援者の役割など、多読とは何か、基本的なことを話しました。
さらに、事後アクティビティ、多読に使う読みものの紹介や、日本語多読の最近の研究の動向の紹介などが続きました。


続いて、作田担当の実践では、まず、どうして多読をやるようになったかという個人的なエピソードから始まり、実際の多読授業がどのように行われているか、失敗談も交えて話しました。昨今のオンライン化に対応して、授業のやり方については、対面授業の場合、オンラインの場合と、それぞれの特徴とやり方の工夫を紹介しました。

短い休憩の後、後半は質疑応答です。
今回の参加者は日本語学校の方が多いですが、同時に個人レッスンや児童の日本語支援をなさっている方が、複数ご参加でした。そのため、教室での授業だけではなく、個人レッスンに関連したことについても質問が寄せられました。全体的には、学習者がちゃんと読めているかどうか確認するにはどうしたら良いのか、ということを心配する声が多かったように思います。

この日の質問のいくつかと回答をご紹介します。

●音読はしますか?
音読をしてみたら、内容が理解できているか、読めているかがわかる、ということを体験的に知っている日本語教師は多いと思います。しかし、強制して音読「させる」のは、学習者の自主性を重んじる多読の流れにはそぐいません。テストをしない、という主義にも合わないところがあります。ただ、少人数の場合、いっしょに楽しむために音読するということはあるし、実際に講師2人も経験があります。内容に対するツッコミなどのおしゃべりを入れながら、支援者と学習者でいっしょに声を出して読む、というのも読むことを楽しむ方法の一つと言えるでしょう。

●内容理解のクイズはしないのですか?
やはり、ちゃんと読めているのかを確かめたい、というのが教師だと思います。ただ、クイズをする前提で読むと、せっかくの多読が楽しめなくなってしまいます。作田自身の英語多読の経験を交え、クイズの存在が楽しい読みを阻害し、読み方を変えてしまうということをお話ししました。

●宿題として読み、レッスンではブックトークをするという方法でもいいでしょうか?
学習者のタイプにもよりますが、NPOが行っているプライベート・レッスンでも、この方法で行うことがあります。宿題として強制するのなら多読的ではありませんが、特にプレイベート・レッスンなどの場合、学習者が自分で読むことができるようなら、支援者との時間はブックトークを中心にするというのも一つの方法です。宿題だからではなく、学習者が楽しんで夢中で読むようなものがあるのが理想的です。特に児童の支援の場合は、マンガなど、好きなものを見つけることが大事です。

●1回の授業で、学習者は何冊ぐらい読むのでしょう?
学習者の読み方は本当にさまざまで、上級者でも初級の読みものをじっくりと時間をかけて楽しんで読むこともあれば、初中級の人でも読むのが速くて中上級の読みものをあっという間に読んでしまう人もいます。ですから、何冊読むか、というのは学習者による、としか答えられません。

●多読の後、精読の授業をすると、学習者の読む力は伸びていますか?
学校での授業の場合、同じ教師が、多読も、精読もどちらも担当することがあります。そのとき、多読の効果はどう表れるのか、というご質問でした。実際には、今回の講師は2人とも多読授業を受けた学習者に精読授業を行った経験が残念ながらありませんでしたので、直接質問に答えることはできませんでしたが、参考として、多読学習者はJLPTの読解問題を楽に読めるようになるし、合格につながるという話をしました。

●動画の活用はどうしていますか?
授業がオンライン化する中で目立った変化は、多読の素材に動画が加わったことです。オンラインになったことで、YouTube、Netflixなどへのアクセスが容易になり、「多聴多観」を授業に取り入れる多読支援者が増えました。読むことが苦手な学習者には、積極的に動画視聴を勧めることがあるという話をしました。

●授業で多読をやった学習者に、その後も多読をする人はいますか?
高橋の追跡調査では、多読を経験した学習者の半数は、何らかの形で継続的、または、断続的に日本語を読み続けていることがわかっているということをお話ししました。

また、事後のアンケートで寄せられた疑問、質問についてもここで回答します。

●本を貸し出すことはありますか?
授業時間中に読み終えることができず、続きを家で読みたいという学習者がいた場合どうするか、というご質問です。上記の質問にあったように、プライベートレッスンなどで、読むことは授業外にする場合はもちろんですが、授業の場合でも、学校側に貸し出しの制度があるなら、貸し出すことがあります。教師個人の蔵書の場合、貸し出すかどうかは教師それぞれの判断によるのではないかと思います。

●どんな本が人気か知りたいです。
日本語多読特設サイトの「人気の本」のコーナーをご参考になさってください。

●無料読みものサイトを印刷したものを学習者に貸し出しても構いませんか?
現在利用規約を用意していますが、対面授業のために用意したものを貸し出すのは問題がありません。

事後アンケートでは、子供の多読支援についてのご希望や意見が多かったです。「子供の支援について、もっと知りたかった」「子供でも年齢による違いに興味がある」「子供向けの教室では保護者の理解を得るのが難しそう」などというコメントが寄せられていました。また、「多読支援を体験できる講座がほしい」というご希望もありました。

最近の傾向ですが、多読を子供の学習支援に取り入れる機運が高まっているということを、今回もひしひしと感じました。

次の開催は、6月5日(日)日本時間9時からです。ぜひご参加ください。

(正会員・作田)