4/3(日)オンライン日本語多読授業入門講座 報告

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東京で桜が満開の4月3日、22年度最初のオンライン日本語多読授業入門講座が開かれました。今回は、日本語学校の先生や外国人児童の日本語支援をしている方から、海外で日本語教育に携わりながらご自身のお子さんの継承語教育に多読を取り入れたいと考えている方、ご自身も日本語学習者で、これから大学で多読授業支援をするというブラジルからの参加者まで、5名という少ない人数でも、日本語多読の世界の広がりを感じさせる集まりとなりました。

理事長の粟野の司会で、正会員の纐纈(はなぶさ)が多読の概論を、同じく正会員の片山が多読授業の実践報告を担当しました。

概論では、インプットが少ない中では、いくらアウトプット活動をさせてもうまくいかないという現場の話から、楽しみながらたっぷりインプットを得ることができる「多読」の背景や理論が説明されました。
多読用レベル別の読みものの紹介のあとには、実際に多読用読みものをレベル順に読んでいく学生や、マンガや絵本を取り混ぜながら多読を楽しむ学生など、様々な多読の形が紹介されました。
多読支援では、「教えない」「押し付けない」「評価しない」という支援3原則があります。教員自身が教えないことの居心地の悪さを乗り越えて、学生の自主性を尊重し、一人一人に寄り添えるようになることの大切さも強調されました。最後に、多読授業では、「聴く」「観る」活動もどんどん取り入れていくとよいという話がありました。

短い休憩を挟んで、多読授業実践の具体的な話です。
正会員の片山は、国内の大学で多読を行っていますが、一般の学習者や子供さんも参加しているオンライン多読クラブの様子も交えて紹介しました。授業では、学習者といっしょにブックトークをしたり一人一人の学習者が好みそうな読みものを紹介したり、支援者として学習者と一緒に楽しみながら多読を進めて行ける環境づくりを心掛けていることをお話しし、授業の様子を体感していただくため、参加者の方と多読用の読みものを一緒に読んでみたり、多聴多観の例としてオンラインにアップされた歌のサイトも紹介しました。

最後は、質疑応答の時間です。

●コメントシート(読書記録)には、途中で止めた本も書いてもらいますか?
 はい、何ページまで読んだか書いてもらいます。時間内に終わらなくて、次の授業で読む人もいるし、難しくて途中であきらめた本を数週間後に手に取って見たらスラスラ読めたということもよくあるので、記録として残してもらいます。

●オンライン多読の時、子ども(学習者)に本を音読させるのですか?
 音読が好きな人には、クラスメートに対して読み聞かせをしてもらうこともあります。また、一人で読むときにも音読しながら読んだ方がいいという人もいるので、学習者の様子を見て考えます。全員に「音読をしなさい」という指示は出しません。

●オンライン授業のとき、ブレイクアウトルームに分ける以外にどんな活動をしますか?
 メインルームでは読み聞かせをしたり、皆でブックトークをしたりします。読み聞かせをしたときにすぐにチャットで感想を書く学生もいますし、好きなサイトのURLをチャットで教えてくれる人もいます。

●オンライン多読の時、子どもはそれぞれ本を手元に持っていますか?
 オンラインでアクセスできる無料の読みものがたくさんあります。NPOの会員が集まって作っている読みものが現在80以上、他の機関の方が作った読みもののリンクもあります。

●読みもののレベルは語彙数で決まっているのですか?
 NPOで作っている学習者向けの多読用読みものには語彙数や文型の目安はあります。内容からどうしても必要だと思われる語彙はレベル外でも使いますが、必ず挿絵や文脈から意味が読み取れるように工夫されています。一般の読みものは、絵と字のバランスや内容から、レベル分けをしています。

●読みたがらない子どもはどうしたらよいでしょうか?
 「本」「文字」にこだわらず、オンラインのサイトやゲームなど、楽しんで日本語をインプットできるものを紹介してあげたらどうでしょう。子どもだけでなく大人でも、人によって好みが違うので、その人が楽しめそうなものをさがすのも支援者の役目です。紹介するときには、「気に入らなければ読まなくていい」と一言添えます。

事後アンケートには、「読むだけでなく「聴く」「観る」も大切だと気づきました」「実際に読んでみて、多読の楽しさを実感しました」「具体的な進め方が分かってよかった」「1対1でもできることが分かったので始めてみたい」というコメントをいただきました。 

次の開催は、5月1日(日)日本時間16時からになります。興味を持たれた方、ぜひご参加ください。

(正会員・片山)