5月2日(日)「日本語多読シンポジウム」報告!その②

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6本の発表が終わった後は、参加したみなさんとの交流会を行いました。
その交流会の様子と事後アンケートを紹介します。

交流会では、各発表者がブレイクアウトルームに入り、参加者の皆さんには自由に好きな部屋へ行って、質問、意見交換をしていただきました。これにも100名を超える方が参加されました。

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酒井の部屋

ひとりひとり発言していただきました。以下はその際に上がったトピックです。

・「ひとりひとりを見る」ことについて
・「多読三原則」「支援三原則(教えない、押し付けない、テストしない)」について
・Graded Reader(多読用読みもの)について

他に「多読的シャドーイング」や日本の大学教育の限界なども話題にあがりました。

 

粟野の部屋

多読について日頃の疑問や質問を受けました。

・継承語教育と多読
・音声の利用
・絵を見ること
・ブックトークについて
・読みもの作りについて(自分が作りたいものを作っていいのか)

 

作田の部屋

主に作成についてのご質問にお答えしました。

・オンラインでの作成
オンラインでも複数での読み物作成は可能。会員でオンラインの作成ワークショップを定期的に開いている。

・リライトについて
青空文庫などを利用したリライトもできる。リライトで迷ったときは、初心に帰る。誰かに読んでもらう。メンバーで意見を交換することで生まれる新しい視点もある。

・イラストについて
イラストは非常に大切。特に初心者向きの読みものは「読む助けになる」イラストでなくてはいけない。ワークショップでは、作成の際にイラストを優先しテキストを変えることさえある。レベル・話・イラスト、この3つで1つのセット。

・文化背景
文化を紹介したい場合も、どこの国の人でも読みとれるような共有できるものを書き込むなどの工夫は必要。

 

片山の部屋

実際の授業での悩み相談が多かったです。

・オンラインでの多読授業では学生の様子が見えない。
読んでいないと思われる学生もいるが、対面でも、それは同じかもしれない。無理やり読ませるようなことはしなくていい。でも、多読の楽しさを伝えたり、読みたい気持ちにさせる仕掛け作りは常に必要。「教えないが、支援する」とはそういうことではないか。

・オンラインの時ブレイクアウトルームをどう使うか。
まず、教師と一対一で話す、同じ本を楽しんでいた人を同じグループにするなど段階を踏む工夫が必要な場合もある。ブレイクアウトルームなら、ブックトークしたい人がほかの人の邪魔をせずしゃべれるという利点もある。ブックトーク部屋を作って自由に行き来させているという支援者の例も紹介。

・音読について
「読ませる」のではなく学生が楽しんで読んでいることが大切。内容がわかった後で、感情をこめて読み聞かせをするなどがいいのでは。初級の学生が一緒に声を出して読んで、楽しんでいる例もある。

・評価について
何冊読んだかなどではなく、出席やコメントシートの提出など、やるべきことをしているかで評価する。

 

高橋の部屋

自律的な多読に興味を持った方たちが集まりました。

・自律的な読みをさせるために特別なことをした?
多読は勉強ではなく、ゲームなどと同じ楽しみの一つととらえていたと思う。日本に関心がある人だったことも関係しているだろう。

・海外で多読を続けるには?
オンラインで世界が繋がれるようになったり、紙の本が手に入らなくても読みものにアクセスできるようになったりして、多読の可能性は広がっている。ただし、著作権には気を付けて。

・動機付けについて。
学生自身の読みたいという内発的動機付けは大切。読んで楽しかったという成功体験が大切。支援者が自分の好きなジャンルの話をするなどで、きっかけを作る。

 

纐纈の部屋 

学生の自主的な活動という報告に感動した人たちがたくさん集まりました。

・学生の自主的活動について
学生を信じることの大切さを感じた。先輩が後輩を育てるという学生同士の関係性も、先輩が後輩を信頼して任せているから。

・オンラインで行う多読
図書の入手方法について、オンラインで読める読みものサイトの紹介(NPOのサイトの無料の読みものなど)。

・オンラインでも、発表のような学生のコミュニティは作れるだろうか?
難しいかもしれない。しかし、オンラインだから世界中が繋がれるメリットもある。チャット機能も利用する。「NPOのオンライン多読クラブ」などもある。

・教師が教えない授業
教えないことへの居心地の悪さに、次第に慣れてきた。それでいいと思えることで実現したのが、このクラスなのだろう。

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<事後アンケートからの抜粋>

124名から回答が寄せられました。そのうち、多読を全く知らなかったあるいは聞いたことがあるだけだったと答えた人はわずかに2割、他の方は、よく知っている、実際に支援をしている、自分も多読の実践者であるという方でした。以下のようなコメントが寄せられました。

よかったこと、感じたこと、これからの希望

・多読授業実践においての教師のあり方を再確認できた点。

・発表者の先生方の体験に基づいた熱意が感じられました。

・多読書作成にかかわる皆さんのご苦労や、学習者の反応が具体的に示されていたこと(がよかった)。

・自ら学びたいと思わせることができる学習形態であることに、心動かされました。纐纈さんの「私たちは教えすぎているんじゃないか」との問いに自分の授業を振り返っています。

・それぞれのご発表で順にテーマが深まっていくことで、より詳しく学べました。最後ディスカッションが時間もたっぷりとっていただき、質問もできたことがとてもよかったです。

・多読の方法、実践例、広がり(自律的な学習者を育てる、学習者主体の学び、教師との信頼関係、学習者コミュニティーの形成)など、とても勉強になりました。

・読み物作成方法、自立して多読を実施していたかどうかの追跡調査、多聴・多観の実践など、多読の実践紹介ではないお話が大変面白かったです。

・それぞれの発表から、音の重要さ、変遷と広がり、多読本作成のヒント、実践学習者の多様な感性、国際的な広がり、個人の自律がコミュニティの形成や人間形成につながる考え、などを刺激として受け取れた。

・六者六様の立ち位置からのお話・視点が万華鏡みたいに反射しあっていて、立体的に聴くことができました。それぞれの方の「体験した言葉」が、大変聞き応えがありました。

・繰り返して言われていることですが、学習者主体、教えない、ということがなぜ重要なのかがよくわかりました。

・教師も楽しむことですね。そして信頼関係が鍵ですね。

・発表時間が充分にあり、またチャットがオフになっていたため、発表内容に集中できてよかったです。

・最後の交流会でいろいろな方のお話を伺えたのはよかったです。ありがとうございました。

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それぞれの発表について、「もっと詳しく聞きたかった」という意見が寄せられ、強く関心を持っていただいたことが窺えました。
今後も多読の研究会、実践報告の場が欲しい、さまざまな機関での活動や子供支援のための多読、オンライン授業の工夫などについても知りたいという声をいただきました。
これからも勉強会やセミナーを開き、多読について考えていきたいと思いますので、これをきっかけに、みなさん、今後ともよろしくお願いします!

(会員 片山記)