4月25日(日)オンライン「読みもの作成入門講座」報告

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オンラインでの読みもの作成入門講座も3回目となりました。今回もオランダ、フランス、ポーランド、イタリアとヨーロッパの国々や、日本国内でも、関西や九州など、遠方の方が多く、10名の方がご参加くださいました。携わっている現場も、大学、日本語教室、地域の教室、小学校の支援など、さまざまです。そして、今回も、すでに多読用の読みものを書いていらっしゃる方、過去に作品を出版なさっている方も参加してくださっていました。

 

多読用読みものとは

いつものように、はじめはNPO多言語多読理事長の粟野から、多読用読みものがどんなものか説明しました。そして、「先が気になる書き方をする」、「何かを教えようとするのはダメ」、「漢字にはルビ」、「翻訳を入れない」など、これまでの読みもの作りの経験から、読みもの作りのコツを話しました。さらに、レベル分け、著作権の問題など、読みもの作りをする上で気をつけることはさまざまあります。

やさしい日本語とどう違う?

続いて、理事の松田が、さらに具体的な文章の書き方について、日本語多読特設サイトの「日本語の多読向け読みものを作ろう」のページを見せて説明しました。最近は「やさしい日本語」が広まっていることもあり、学習者にとってわかりやすい日本語を書くにはどうすればよいかという知識を持つ人が増えてきています。多読用読みものも、「文と文のつながりを明確に。主語の省略はしすぎない。会話は、誰が話しているのかわかるように。」などというところは、「やさしい日本語」との共通点が多いですが、「簡約の場合、わかりやすくするために文を前後で入れ替えたり、大幅にカットしたり、小道具などをわかりやすいものに変える。」など、読みものならではのポイントもあります。

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実践編!

さて、概論が終わったら、次はいよいよ実践編です。

参加者はグループに分かれ、まず、初級レベルのリライトに挑戦しました。題材は「アリとキリギリス」、または、「ウサギとカメ」です。このごろは、みなさんもオンラインの活動にも慣れていらっしゃるので、ファイルを共有しての作業や、ネットの素材探しなど、手分けをしてどんどん進みます。中には、短い時間内にすっかり完成させたグループもありました。また、「あなたはどちらですか?」というおもしろい副題をつけたグループもありました。

作業後の感想の共有の時には、「動物をどう擬人化するのに悩んだ」「絵をつける大変さがわかった」「伝えたい内容を、言葉で伝えるのか、絵で伝えるのか、迷った」「使える言葉が少ないので苦労した」などという声がありました。みなさん、初級の読みもの作りで何が難しいのか、体験から理解してくださったようです。

ほんの短い休憩を挟んで、実践編の後半は、中級レベルのリライトです。

題材は「注文の多い料理店」です。このようなリライトの難しさは、語彙や文法の制約もさることながら、元の作品の味わいをどのように残すがが問題です。その点については、ただ内容を単純にするのではなく、風景描写を効果的に入れてみたり、また、登場人物の性格をよく表現するセリフなどは、ストーリーの展開に関係がなくても削らずに、あえて残したりと、どのグループも工夫を凝らしていました。中には、とてもやさしいレベル2で書くことに挑戦し、知恵を絞っているグループもありました。

ふりかえり

ここまで、みっちり忙しい3時間を過ごしましたが、みなさん、手応えはどうだったでしょうか。

頭の体操だった、集中していたので時間を短く感じたなどという声が出て、みなさんの集中っぷりがわかります。初級レベルを作る苦労がわかった、他のグループの発表を聞くのが勉強になった、と、それぞれ得るものがあったようです。そして、みなさんが口々におっしゃったのが「楽しかった」ということでした。頭を使って、グループで協働し、楽しんでいただけたならうれしいです。また、これをきっかけに読みもの作りに携わるようになっていただけると、もっとうれしいです!

アンケートより

  • 体験することが大事だと改めて感じました。非常に実践的でありがたかったです。
  • 3人寄れば文殊の知恵といいますが、グループワークで意見を出し合う活動が鍵だと感じました。
  • 「わかりやすさ」を追求する作業は本当に面白かったです。
  • 文学作品の味わいを損なわないことを忘れないようにしなければならないことに、なるほどと思いました。
  • 参加する前は3時間は長いと思っていましたが、やってみたらあっという間で、とても充実した時間でした。
  • 地方在住者にとって、オンライン開催は非常にありがたいです。
  • レベル0や1など取り組みやすいレベルであらかじめ各自がつくり、ワークショップで修正して時間内に完成できるよう等のものがあれば参加してみたいです。
  • 実際に読み物公開をゴールとしたプロジェクトがあれば参加したいです。
  • 思った以上に使える語いが少なくて、苦労しました。「速い」はあるけれど「遅い」はないなど。それを上手く言い換える案がグループ内から出て、協力して作品を作る良さを実感できました。

(正会員:作田)