3月22日(金)、横浜市南区みなみ市民活動・多文化共生ラウンジ主催の日本語ボランティア・ブラッシュアップ講座「あらためて『多読』って?」が開かれました。
みなみ市民活動・多文化共生ラウンジ(以下、みなみラウンジ)とのお付き合いは3年になります。3年前の3月に初めて多読についてお話しして以来、何回か伺って多読実践のデモンストレーションなどもしてきました(2016年3月10日、17日、9月6日、13日)。
現在、みなみラウンジでは、「多読の時間」を設けています。そこで、主に、多読支援を実際に行っている方を対象に多読に関してわからないこと、疑問に思うことを解決する場として今回の講座は企画されました。
NPO理事の川本かず子が講師を務めました。
参加者は11名。多読の支援者3名、以前多読の講座に参加した方3名、その他多読支援をしてみたい、興味があるという方でした。また、小学生(主に日本人)に学習支援をする手段としてNPO多言語多読の本を使いたいと考え、参加したという方もいらっしゃいました。
質疑応答を行いながら、いろいろなテーマで話が進みましたので、内容を簡単に箇条書きで列挙します。
1.多読とは
☆「多読」と聞いて、思い浮かんだことを参加者に言ってもらいました。
・英語の多読。
・とにかくたくさん読め。
ここから、たくさん読むにはどうしたらよいか。辞書を引いてもよいのか。辞書を引きながら読むとたくさんは読めない・・・と私たちの多読の考え方をお話ししました。
また、「読む」というのは活字を解釈することではなく、その場面、世界を理解すること。絵と音がとても大切だという話に続きました。
ここで、実際に絵と音で読むということがどういうことか、スペイン語の本「LUNA」で体験していただきました。
2.楽しくたくさん読むために支援者がすること
続いて、支援者の役割について。
☆学習者の読んでいるところに介入しすぎない。
☆支援者はいろいろなジャンルの読みものを準備する。(GR、絵本、マンガ、アニメ、ネット上で配信しているもの、NPO多言語多読のホームページで紹介している市販本etc)
☆多読の4つのルール(1やさしいものから読む 2辞書を引かない 3わからない言葉は飛ばす 4進まなくなったらやめる)に沿って読むように誘導する。
ーーわからないことは絵を見ればわかり、わからないことは先を読んでいくとわかる。辞書は引かなくても、わかるところだけを読んでいくコツがつかめるようになる。
☆いわゆる勉強とは違うことをわかってもらう。
☆文法や語彙を教えない。
ーー教えたくなるが、我慢して教えない。
☆とにかく、ひとりひとりをよく観察する。
☆リラックスした雰囲気を作る
☆字のない絵本を導入に使う。
最初の時間に、絵が大事ということを入れると、多読にとても効果が出ます。
そこで、字なし絵本「ZOOM」、少し字がある「かようびのよる」を見ていただきました。
質問もたくさん出てきました。
・成人の男性で、まったく日本語が読めないので、ほとんど文字がない本を薦めるが、こんなことをしに来たのではないと、次から来なくなってしまう場合がある。どうしたらよいでしょうか。
・「これなあに」のようなものは、子育て中のお母さんにはいいが、日本語のわからない外国人の大人には、ちょっと抵抗があるかもしれない。
・クラスの中でひとりの学習者が次々に質問したり、話したりすると、うるさくて他の学習者に迷惑となる。
・多読の場合、本人が何も声を発せずに時間が終わるということもあるのか。
これに一つずつ、お答えしていきました。
そして、私たちがどうやって多読クラス(「にほんごの本を読む会」)を運営しているかも動画や写真で紹介しました。
休憩をはさんで後半は、ゼロレベルの学習者への指導はどうしたらいいか、という問題について考えました。
3.ゼロ初級の学習者への多読支援
☆ひらがなも全く読めない場合は、絵本の読み聞かせはどうか。読み聞かせをしながら、ひらがなを覚えるようにうまく指導する。
☆なんとか拾い読みでも読める場合は、一回は支援者と一緒に読む。
徐々に文字をかたまりで理解できるようになり、なめらかに読めるようになる。だんだんひとりで「聞き読み」ができるようになる。
☆聞き読み
「聞き読み」をしてもらう。
読み書きはできなくても、日本で長い間生活している人は、耳から語彙がいっぱい入っているので、言葉と文字が一致するように「聞き読み」をしてもらえば、だんだん知っている言葉と文字が一致していくことをお話ししました。
ここでも、本を見ながら実際にCDを聞いて「聞き読み」の体験をしていただきました。
「聞き読み」の効果はいろいろあります。
☆まとまりのある言葉として体に落ちる。
☆母語に訳す暇がないーー母語に置き換えてしまう学習者には、母語に訳す暇がないので、日本語を日本語で受け止めることができる。
☆臨場感を味わえ、より理解できる。
4.ブックトークについて
☆ブックトークは、本を読む楽しさを参加者が共有するのにいい方法。しかし、必ずやらなければならないというわけではない。話したいという気持ちがある人にやってもらう。
ここで、ある学習者の「舌切り雀」のブックトークを見ていただきました。
☆語彙の少ない学習者は、面白かった、悲しい、など知っている一言でもいい。
☆母語が共通なら、母語でブックトークをしてもいい。
☆内容について話したくなると、つい長くなるので、短く話すよう促すといい。
その他、実際に多読支援の際に感じている疑問をあげてもらいました。
・子どもが、普通の本を読みたがらないで、マンガを読みたがるが、マンガでもいいのか。
ーー漫画でもまったくかまわないのではないでしょうか。
実際に多読支援をすでに行っている方は、さまざまな疑問が解消してほっとしたような表情をされていました。
今後もみなみラウンジの「多読の時間」が継続していくことを願っています。
(正会員 田中)