3月16日(土)タイ・バンコクで日本語多読講演!

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3月16日(日)にタイ・バンコクで開かれた、タイ国日本語教育研究会の年次セミナーで、日本語多読についてお話ししました。
タイトルは、「多読を取り入れよう!ー多読の考え方と実践例-」です。

バンコクで多読の話をするのは、2回目です。
初めてセミナーを行ったのは、2015年6月でした。4年近くも前のことです。その後、多読の広がりはどうなったか気にしていましたが、なかなか再訪のチャンスがなく、会員の山口ひとみさんのご協力で今回やっと実現しました。

呼んでくださったのは、タイ国日本語教育研究会のみなさんです。
手弁当で地道に運営をしていらっしゃる若い先生方と前日の晩は打ち合わせを兼ねたお食事をし、刺激をもらいました。
みなさん、タイ語の学習者であり、日本語の教師であるという立場ゆえに言語習得に関してとても懐が深い!

当日は、会場となったバンコクの国際交流基金事務所に60人ほどの参加者が集まりました。大半が大学で教える日本人の先生方。高校や日本語学校、インターナショナルスクールの先生もちらほらという構成でした。
最初にみなさんに多読についてどれぐらい知っているか聞いてみました。前回と比べると多読を全く知らない方は少なかったですが、私たちが作った多読用図書を見たことがない方はかなりいらっしゃいました。

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(『日本語教師のための多読授業入門』を読んだことがある人は、これぐらい・・・)

まず、読めるようになるためには、大量のインプットが必要、そのためには、学習者本位の楽しい多読でなければならないことをお話ししました。次に、それを実現するために4つルールがあり、支援者はあくまで学習者を支えるサポーターであって、知識を教える「教師」ではないという話に続きました。
実際の多読の様子も動画で見ていただきました。

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その後、「レベル別日本語多読ライブラリー」や「多読ブックス」、絵本を参加者に配り、読んでもらいました。実際に手にすることで、かなり易しいレベルから始めるということがわかっていただけたのではないかと思います。

最後に、泰日工業大学で多読授業を実践された山口ひとみさんから実践報告がありました。
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必ずしもモチベーションが高くない学生も自ら本を選んで読んでいたそうです。最後に一冊の本を紹介するというタスクを課して、出てきた作品を映像で見せていただきました。
できあがったものは、色とりどりの挿絵を入れたり、折り紙で飾ったり、ビジュアルに凝った作品ばかり。「レベル別日本語多読ライブラリー」(アスク出版)の一冊を紹介した学生が多かったようですが、文章も本の表現を上手に借りてまとめているところに感心しました。多読の自由度が、学生の創作意欲を刺激するのでしょうか。多読がインプットだけでなくアウトプットを促す力もあることを改めて感じました。

質疑応答では、多読が読むだけでなく話す、書くほうへもつながることを知り、可能性を感じたという声や、評価についての質問、本をどのぐらい準備すればよいかなどの質問が出ました。

お昼休みを挟んで、午後は、分科会です。16本の口頭発表があり、私も80分の読み物作成ワークショップを2回行いました。

最初のセッションは、5名。
最初に字を消したレベル0の本を見ていただき、レベル0は、絵が話をちゃんと表していることが重要だということをお伝えしました。そこに、ぴったりの言葉が1,2行入っていることで、意味のある言葉が伝わる、と私たちは考えています。

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その感覚をつかんでいただいた上で、レベル0の読み物を2グループに分かれて作ってもらいました。
題材は、イソップの「アリとキリギリス」「北風と太陽」でした。
一つのグループは、タブレット上で作業を進めていました。もう一つのグループは、絵でわかるから、と大胆に難しい言葉も入れて作っていました。

2回目のセッションには、16名が参加。5チームに分かれて作業を行いました。

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場面分けをしっかりしてから、そこに字を載せる形で作ったお話はどれもレベル0にふさわしいわかりやすさでした。
「注文の多い料理店」を選んで、レベル3に書き換えをしたチームもありました。
「言葉の選び方が難しいけれど、リライトの面白さにはまってしまいました。自分でも書いて学生に読んでもらいます!」「学生と一緒に書く作業をしてみたい」という声が聞かれました。
とても短い急ぎ足の体験でしたが、「多読の入り口」を感じていただけたのではないでしょうか。

フィードバックがちょっと長引き、すでに閉会式が終わってしまったメイン会場に戻り、全体で記念写真をとってお開きとなりました。
何人かの先生に、「多読、取り入れます!」と言っていただき、うれしかったです。

アンケートによると回答者の7割以上の方が「多読、やってみたい」と答えてくださっています。
タイに多読の芽が出て花が咲くのを楽しみにしています。

(粟野)