11月25日(日)第43回「多読授業とリライト」入門講座 報告

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11月25日の「多読授業とリライト」入門講座の参加者は8名。日本語学校の先生を中心に、大学、児童館などさまざまな所属の方がいらっしゃいました。すでに多読授業を始めている方、これから多読授業を始めることを決めて準備を進めている方など。講師はNPO理事の川本、NPO会員で大学講師の作田奈苗です。

【午前の部】
*NPO多言語多読が考える多読とは?・・・川本 10;30~

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子どもはどのように言葉を話すようになるのか、というところから話し始めました。子どもが言葉を身につけるのは周囲の大人から大量のインプットを受けるからです。そして、大事なことは、そのインプットは状況を伴った音声であるということです。そこから、多読では(状況を理解するための)絵を見ること、そして、音声を聞くことが大事だと話しました。
多読の根本的な考え方を話した後、今度はそれを実現するための「多読のルール」です。すでに『日本語教師のための多読授業入門』(アスク出版)を読んでいる方もいらっしゃったことから、「辞書を引かない」などというお馴染みの多読のルールが参加者の口から次々と上がりました。みなさん、わかっていらっしゃる!

*多読授業実践報告・・・作田 11:00~
続いて、作田が多読授業の実際にについて話しました。
まずは、精読の授業が学習者の役に立っているように思えないという長年の悩みから多読に巡り合ったという話から。
そして、現在複数の大学で実施している多読の授業について、準備することや授業の手順、授業中に教師がしていることなどを具体的に紹介していきました。
結論は、多読の授業というと、教師が何もしていなくてサボっているようだと思われがちですが、実際には、学習者の観察や読み聞かせなど、教師は意外と忙しい、ということです。環境整備などの教室の雑用、本選びの助言、学習者の話し相手、ブックトークのファシリテーションなど、多読の教師には、精読とは違った役割が盛りだくさんだということでした。

その後、自分の実践の中から、成功したこと、失敗したことを具体的にあげました。
多読によって漢字が怖くなくなったと学習者が言ったといううれしいエピソードもある一方で、低いレベルをどうしても読んでくれない学習者の話、読み聞かせをしたら、自分のペースで読みたいから邪魔だと言われた失敗談など、日本語多読の支援者にとっては「あるある」話も披露。実際の授業がどうなるか、具体的なイメージにつながるように話しました。

作田からの報告が終わった後は、参加者の皆さんからの質疑応答です。「一回に何冊ぐらい本を運ぶのか」など、ご自身が授業をする前提の具体的な質問が多かったです。

*多読授業の実際 動画 12:15~
次には、実際に多読の授業で見られた学習者の様子を収録したビデオ上映です。聞き読みを楽しんだ学習者がうれしそうに支援者に話しかける場面を見て、多読の良さを確認しました。

*多読的に読む体験 12:20~
午前中の最後は、韓国語の絵本で、絵を読む体験でした。文字が読めなくても絵を見ていけば話が追えるということを、実際に参加者に確かめてもらいました。午前の部の最初に多読では絵を読むことが大事、と話し始めましたが、そのことの再確認となりました。

【昼休み】 12:30~
昼休みは、それぞれ持参のお弁当を召し上がりながら雑談や交流で過ごしました。空いたテーブルに広げられた「よむよむ文庫」(アスク出版)、「にほんご多読ブックス」(大修館書店)や絵本などを手に取って、講師や参加者同士で、本について情報交換をする方が多かったです。

【午後の部】

まず、リライトのポイントを説明しました。

その後、3グループにわかれ、レベル0か1の作品作をつくっていただきました。
「アリとキリギリス」が2グループ。「ウサギとカメ」が1グループでした。
みなさん、絵が上手でびっくりです。
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「ウサギとカメ」グループは、まず絵を見ただけで物語がわかることを目指し、絵コンテを描いて、その絵に言葉をのせ、言葉はすべて吹き出しの台詞で構成していました。レベル0のマイナス0的な、絵がかわいらしくシンプルでわかりやすい作品になっていました。

「アリとキリギリス」のうちの1グループから、なにやらチンさん、ワンさんという声が聞こえました。なんと、アリが勤勉家の留学生、キリギリスがゲームばかりしている怠け者の留学生という設定です。一部セリフの順序が逆でわかりにくいところもありましたが、絵もなんだかおかしくて笑ってしまいました。

後半は、グループのメンバーを変え、芥川龍之介「蜘蛛の糸」を1グループ、宮沢賢治「注文の多い料理店」を2グループがリライトしました。いずれも冒頭部分のみです。
3グループともレベル3でした。冒頭部分だけということもあり、私たちの作品より絵がふんだんに使われていて、レベル2と3の間のようなレベル3ができました。このくらいの感じのものがあってもいいなあと思わされました。

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「蜘蛛の糸」では、カンダタを始めに登場させて、悪いことをしたから地獄に落ちたという流れで地獄を出し、お釈迦はその上、空にいると書いていました。絵も一ページに上下でお釈迦様のいるところと地獄を描いていました。

「注文の多い料理店」では、削るところがそれぞれ違っていて、各チームの発表の際、その違いにおもしろさを感じました。

リライトは、苦しくもあり楽しくもありというのが大方の感想でした。
ただ、言葉を置き換えるのでなくて、入れ替えたり削ったりしていいんだというのが新鮮だったようです。

(川本、作田)