9月17日(日)第36回「多読授業とリライト」入門講座報告「多読クラスが変わった!」

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大変遅くなりましたが、9月17日の「多読授業とリライト」入門講座の報告です。
とは言っても今回は東京YMCAにほんご学院の先生お二人のみの参加だったため、多読授業相談と多読向け図書のレベル判定の話を中心にしました。

東京YMCAにほんご学院ではこの4月からほぼ全クラスで多読をとりいれ始めたそうです。初級から上級まで!
非漢字圏からの学習者が増えており、楽しく読む力をつけていく「多読」に期待が高まっているのでしょう。私たちとしてもとてもうれしいニュースです。
ただ、最初からどのクラスもうまくいくわけでなく、おしゃべりが多くて集中しないクラスもあったそうです。
ところが、そんなクラスも、8月6日の「多読支援セミナー/日本語分科会」で他の参加者からのアドバイスをもとに多読授業を仕切り直したところ、大成功だったとのこと。
そこで、今回の報告は、この激変したクラスのE先生の授業報告に代えさせていただくことにしました。
以下、E先生の報告です。

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☆多読授業(初級後半クラス)
新しく仕切りなおした結果、大成功でした!
・多読を再開する前に、何のために多読を行っているのか、読むことでどんな力がつくのかを説明。
・シリーズごとにまとめられているプリント冊子を全学生に配布し、どんなシリーズがあるのか軽く紹介

・前は、自由に座らせていたため、仲のいい学生同士、おしゃべりが多かった。そこで、座席は普段の授業の座席のまま固定した。

⇒多読はあくまで授業の一環であり自由時間でないことを理解させた

⇒以前は、高いレベルの本まで全部持ち込んでいたので、難しい本を手にする学生もいたが、学生が無理なく読めるレベル0.1しか持ち込まないことにした。

⇒授業の始めに毎回私が選んだピックアップ本を紹介した

・本日のピックアップ本は「ハチ」で、リチャードギア版映画の予告などを見せた
⇒本をテーマごとに分けて置くようにしたので(例えば、「良さんシリーズ」「ふしぎな話」「日本を知ろう」など)、学生にとって本が選びやすくなった。

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左は「木村家の人々」シリーズ、右は「西町交番の良さん」シリーズ
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「日本を知ろう」というテーマでは、レベル0、1でもこんなにたくさん読める!
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他にも分け方はいろいろ。左は「ふしぎな話」 右は「どうして」シリーズ

 

⇒学生用の記録用紙を変えた。今までは自分でタイトルと感想を書かせていたが、シリーズごとに分類されているリストを配り、読んだらチェックをつけさせた。このやり方だと自分がまだ読んでいない本がわかりやすい。また、シリーズ制覇を目指す学生が現れた。

 

今までとはうって変わり、全員黙々と読んでいました。
よく寝ていたAさん、Bさん、Cさんが一切寝なかっただけでなく、「三匹の子豚」を読み終わったAさんに声がけするとあらすじを解説してくれたり、Bさんのほうから声をかけてきて「絵を描く」の漢字がいつもの「書く」じゃないと言ってきたりと、これまでと学生の態度が全く違いました。

また、Dさんはプリント冊子の「読んだら○」をコンプリートするのがうれしいのか、早速「良さんシリーズ」を制覇。
Eさんは「ジョンさんシリーズ」のジョンさんの恋の行方?が気になったようで、残り2冊を今誰が読んでいるのか、みんなが読んでいる本をチェックして回っていました。

最後の5分ぐらいは集中力が切れて喋り始める学生も多かったですが、本の内容に関してだったので自由に話させました。

辞書は使わないと説明していたので、真面目な学生はわからない単語をメモしていました。
また、ルールを気にしない学生は普通に辞書を使っていましたが、特に注意はしていません。

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それまで集中できなかった学生さんたちが、真剣に読み始めたことにE先生は涙が出るほど感動したそうです。
8月6日の多読支援セミナーで、片山智子さんの発表にあった「本をジャンル別に提示する」というヒントをはじめ、本を少なめに持って行く、記録用紙を変える、教師が本の紹介をするなどさまざまな工夫をされたのがすべて功を奏したように思われます。
学生にとっては、本を読むということがぐっと身近になったに違いありません。

 

学生がなかなか集中して読まないという悩みをお持ちの先生方に、E先生の体験は非常に参考になるのではないでしょうか。私たちも「多読支援セミナー」がこの授業改善のきっかけになったこと、とてもうれしく思います。

E先生、詳細な報告をありがとうございました。

(粟野)