6月26日(日)第28回「多読授業とリライト」入門講座報告

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今回は6名の方が参加してくださいました。6月末は、海外の教育機関では夏季休暇が始まっている時期。参加した方々も、アメリカの大学の先生が3人。インドの大学の先生が1人。そして、東京のインターナショナルスクールの先生と、なんと鹿児島から来てくださった児童日本語教育に携わる方でした。

講師の粟野が、英語多読の成果から、日本語でも同じ事ができるのではないかと思いたった経緯と、どうして4つの多読ルールが必要なのかを話しました。そして、動画で、実際の授業風景を見ていただきました。
また、ひらがなを拾い読みする段階からスタートした学習者が、数回の多読授業のあとで、面白く感じた本の内容を、たどたどしい日本語ながら、一生懸命話している場面も見ていただきました。読む・聞くのインプットから、話すというアウトプットへの移行の画像です。数字としては、効果を表しにくい多読という方法ですが、楽しんでたくさん読んで、日本語を自分のものにしていく様子を知っていただけたように思います。
質問が出ました。

①辞書を引かないというルールの下で、実は、ちゃんと読めていない学習者がいる。これは誤解したまま先へ進んでいっていいのか?
②いわゆる普通の「読解授業」と、「多読授業」の位置づけは、どう考えたらいいのか?

①について、とりあえずは、そのまま楽しく読み続けているようならOK、支援者がさりげなくアドバイスして、学習者のレベルに合うものを読むように誘導するといいとお答えしたところで、参加者から、他の学習者とのブックトークで、自分の読み方への振り返りが生まれ、だんだん誤解が解けていくという発言がありました。全く、その通りだと思います!

②については、とりあえずは、多読授業は多読のルールで読んでもらう。多読的読み方を身につけてもらう。その他の読解授業はそうでない読み方をするだろうが、それはそれ。多読実践が進んでくると、支援者(教師)も学習者も読み方についての認識がだんだん変わってくる。それまでは別物としてやってみたらいいと思う、とお答えしました。

一段落したところで、出席した方々の所属機関や、講座への参加動機など話していただきました。
アメリカの大学の先生のうち、お1人が、すでに多読授業をはじめていらっしゃいました。後の方々は、多読を授業に取り入れたいという気持ちがあって、そのために、参加なさったということでした。
次に、学習者の身になるため、韓国語の絵本をスクリーンに映して、多読体験を少々。絵を見て、書いてある内容を想像し、音声を聞いてますます大体の意味が分かってくる経験をしていただきました。絵の大切さが身に染みたところで、休憩。

休憩といっても、アメリカの大学で多読授業をなさっている先生から送っていただいた学生たちの作品を見ながらの昼食になりました。多読体験に触発されて作った日本語の絵本です。楽しい絵本を見て、このようなものを作ることが目的になってはいけないけれど、自分たちで作ろうと思ったことが素晴らしいと、口々におっしゃっていらっしゃいました。

午後は、松田が講師になり、易しいって何?リライトって何?ということからお話をはじめました。

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何はともあれ、作ってみよう。ということで、イソップの「北風と太陽」を、レベル0の読み物にしていただきました。2つの班に分かれて、語彙表を調べながら、楽しく作業が進みました。「服を脱ぐ」を、絵に語らせてそのまま使うか、語彙表に「脱ぐ」がないのだから、「服をとる」とするか、など、話し合いながら完成。2つの楽しい絵本ができました。

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そのあとは、レベル3。「注文の多い料理店」と「蜘蛛の糸」の班に分かれて、リライトしていただきました。最初の1ぺージ分くらいをリライトしたところで、時間切れ。アスク出版から出ているものと比べていただきました。出版されている読み物は、冒頭の部分をバッサリ切ってしまっている「注文の多い料理店」と、かなり説明の文を足している「蜘蛛の糸」とで、両極端な仕上げになっています。
講座全体の感想として、「役立った」「ぜひ、この体験を授業に生かそうと思った」
という声があがり、うれしく思いました。
また、リライトを体験されたことで「こんなに大変な思いをして作っている本と知り、よむよむ文庫や、多読ブックスを大切に使おうと思った」という感想が出ました。ありがとうございます。
(松田記)