12月短期集中日本語多読クラス報告

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みなさま、本年もどうぞよろしくお願いします。

新年初のブログは、暮れに行った日本語多読クラスの報告です。
高校の冬休みを利用して5日間の日本語クラスを開きました。
参加者は日本に来て8か月、1年4か月、2年4か月という中国・台湾出身の高校生4人。
中学生や高校生になって、いきなり日本に来ると、すぐに日本語が流暢になるというわけにもいかず、苦労しているとのこと。通っているのが中華学校なので、授業は日本語でも基本的に中国語で過ごさなければならないという複雑な言語環境も日本語習得には災いしているようです。

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それを多読的なアプローチで何とか、日本語上達の道筋を見つけてあげたい、そんな気持ちもあり、私たちの勉強という意味もあり、計5回(10時間)の授業でしたが、学習者4人に支援者3人という贅沢な布陣で臨みました。

初日に、日本語を普段どれぐらい使っているか聞くと、D君以外はほとんど「ゼロ」という回答でした。授業は日本語なので、聞けば何となくわかるぐらいにはなっているけれど、発信は皆無。
それでは、日本語が流暢になるはずがありません。「何もしないでうまくなる魔法はない。日本語を話したり、書いたりして使わなければうまくならない」と言うと、みんな頷いてくれました。
重ねて、「日本語、上手になりたい?」と聞くと、みんなはっきり「なりたい」との返事。意志の確認ができました。
「じゃ、やることはひとつ。日本語にもっと触れること。好きなテレビでもマンガでもアニメでも何でもいいから。好きな物楽しいと思うことを続けてやりましょう」

さて、実際の授業です。
初級のA君に支援者一人、中級のB、C君二人に支援者一人、中上級のD君に支援者一人がつきました。
A君はすなおに多読の本をレベル0から読んでいきます。ときどき感想を言ってもらったり、本の内容を書いてもらったり。蚊の鳴くような声ですが、簡単な言葉で答えてくれます。「ハチの話」や「象のトンキー」に感動していました。
B、C君二人もマンガや多読の本を読んで、書いたり、同様に進めました。
D君は実は来日当時から1年間、ここで週に1回日本語授業を受けていたので、かなり日本語は流暢になっています。でも、うれしいことに、またここで勉強したいと思って来てくれました。1年ぶりの再会です。
かなり読めるようになっているので、簡単な推理小説を読んで犯人を当てたり、説明したり、新聞記事を読んだりしました。いまではラインは全部日本語で、友達とはほとんど日本語でやりとりをしているとのことでした。時折、日本の高校生らしい言葉遣いが飛び出します。

シャドーイングも何回かしてもらいました。
面白かったのは、在日歴が浅いA君、B君、C君、D君の順にシャドーイングが上手だったこと。日本語力と反比例。D君はすでに自分の発音の癖がついていて、朗読音声を聴いても意味がわかるので、口から出るときは自分流のアクセントがついているのですが、A君は全く癖のないきれいな日本語が口から出てきます。
今のうちに音もインプットしておきたいところです。

一番、誘導に時間がかかり、かつ支援が難しいのが、B君、C君のレベルです。
すでに日本に1年いるので、初級ではない、かと言って教科書が読めるわけではない。本人たちの勉強スタイルも固まっていて、難しいものに挑戦して「読解」するのが勉強だと思っているところがあります。
なので、最初に「多読ライブラリー」レベル1を読むのは抵抗があったようです。自由に選んでもらったらレベル3やマンガを手にとりました。でも、なかなか進まない、本の内容説明もおぼつかないので徐々にレベルダウン。最終的には、「ドラえもん」や「ワンピース」を読みながらも、並行してレベル1を読んで再話する作業をやるようになりました。(「ワンピース」はC君が来日当初に買ったけれど、ついに読み始められなかった漫画。やっと読むきっかけができたというわけです)

最後の日は、A B C君の3人でしたので、ちょっとおしゃべりの時間を長くしました。
B君、C君のなにか言いたそうな顔、口ごもるけれどがんばって話してくれた様子が忘れられません。
5日間の3人の感想は、「勉強の仕方がわかりました」「たくさん話しました」というものでした。
ちょっと満足そうな表情だったと思うのは、こちらの都合のいい思い込みでしょうか。
こうやってプレッシャーなくたくさん日本語に触れ、たくさん話していけば、どんどん話せるようになっていくだろうと思います。日本で日本の大学に進まなければならない4人。続けて多読しに来てくれるといいのですが・・・。
(粟野)