12月20日 日本語多読授業相談会の報告!

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12月20日(日)午前10時半から、日本語教師合計20名が事務所に集まって、多読授業について意見交換しました。「多読授業をしている。でも授業の進め方で迷うこと、わからないことがある」「これから始めたいので、すでに始めている先生の話を聞きたい」という声に応えて、気軽に集まる会を開こうと考えました。
お茶菓子付きで参加費500円。
アメリカ、メキシコからの帰省組の先生が3名ほど。その他大学、日本語学校、ボランティア教室、聾学校、インターナショナルスクールなどの先生方でした。

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まず、参加者の簡単な紹介の後、みなさんに質問を書き出してもらいました。
それを「多読そのもの」「多読授業に関するもの」「本について」「その他」に分けて、質問にお互いに答える形にしました。

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以下に主な質問とやりとりを列挙します。

◎授業に関すること

・大量の本を持ち歩くのは大変。→ 授業用の本を図書館で借り、常時図書館に置かせてもらい、授業のときに台車で運ぶ。図書館でクラスができるといい。

・支援者の声かけが難しい。→ 授業中、集中している人はそのまま、おしゃべりしている人や「キョロキョロ」している人には声をかける。こちらが歩き回ると学生の方から「先生、これ何ですか」と質問してきたりして、声がかけやすいようだ。話したい人が顔をあげたり、ちょっと難しそうにしたりしている場合にも、こちらから行ってみる。読み終わった人には「どうだった?」と話しかける。目が留まっている人のことも見逃さないようにする。

・クラスでボランティアさんがどんどん声を掛けてしまう。「わかってるか?」「これはこのことだ」など介入しすぎる。多読がいいことは頭では理解してもらえるが、実際の授業となると、教えてしまう。ボランティアさんの指導が難しい。
→ボランティアさんに多読の話をするとき、できたら、実際に学習者に多読をしてもらうワークショップが一緒に開けたらいいと思う。そこで、支援・指導の見本を示すことで理解してもらいやすくなるのでは?
「教えない」ということを具体的に見せる必要があると思う。

・多読では内容を理解したかどうかチェックはいらないのか。
→内容が大体わかり、楽しんでサラサラ読めればいい。「かなしかった」でいい。
どうだったかと聞いたとき「だいじょうぶです」「わかりました」という返事は要注意。楽しんでいない可能性がある。

・「精読クラスに比べて多読クラスでは、先生は何もしないで読ませている」と言われることがある。多読がいいと示すのは難しい→「たくさん読むことで読解力が上がっている」と宣伝する。実際に授業を見に来てもらう。最後にトークセッションをすることにより学生の方も効果を感じている。

・音声・聞き読みをなかなかしてくれない。聞きながら読むとわかるよと、低いレベルから聞き読みさせたい。文字を追って読むだけでなく、こんな読み方があるということを知らせたい。
→読み聞かせをしたら、中上級の学生でも、熱心に聞いてくれた。一度、読み聞かせをして、音声を聴きながら本を読む楽しさを伝えたらどうか。

→ちょっと読むのが遅くなったり、難しいと感じる上のレベルを、聞き読みしたら、わかりやすくなることを説明して、勧めたらどうか。読み手にとって難しいものはCDを聞くと、読み飛ばしができるようになる。

・多読は、音声については何もやらないのか。
→CDを聞いて、シャドーイングをする。ネイティブの音を体に染み込ませるために有効。多読と同時に多聴も重要。そしてたくさん話すことで話す力がつき、最後には書けるようになる。4技能はすべてつながったもの。
→シャドーイングは自分の家でもやってほしいが続かないのが悩み。英語多読では、30時間やると効果が出て、綺麗な音になるという報告がある。音を定着させるためにも大きい声でやってほしい。
→音が体に入ると、速く読めるようになる。

・貸出本の工夫 →「カード」を作り、貸出をする本に挟んでおく。カードには感想を書き込めるようにしてある。それを見て、「おもしろそうだ」と借りる学生、何も書いていないとつまらなさそうだと借りない学生もいる。

・モチベーションの持続のために読書のほかに有効なアクティビティは?
→感想を言わせたり、書かせたりする。
→90分授業では学生の集中力が40~60分で切れるので、残りの時間で毎回違ったアクティビィティをしたい。学習者からはサポーターや友達ともっと日本語を話したいと言われる。来ると楽しいことがあるというクラスにしたい。みなさんの意見を聞きたい。
→ 学生が話したいなら、読んだ本についてブックトークをすれば、アクティビィティはなくてもいいのではないか。本を見せながら説明させる。劇をするのはどうか。
→上級クラスで、全員の前で易しい本の読み聞かせをすると皆喜んで聞いていた。擬音語、擬態語が実感できるという声を聞いた。音の効果は大きい。
→ブックトークがあるから来ないという学習者もいる。上手く話せないし、緊張する。皆が話しているのに自分が話せないのが嫌。
→多読の英語講座ではブックトークを日本語でもしている。ブックトークを思い切って、母国語でしてもいいのではないか。また、無理にさせなくていいと思う。

・評価はどうしたらいいか。
→出席だけで付けている。
→形式的に授業参加度、レポートの点を加味する。
→大学に出席だけで付けるとはいえない。出席、ビブリオバトルにどのくらい参加したか。

・よむよむ文庫などのJGRと生の日本語の本の取り扱いはどのようにしたらよいか。
→多読をやる人のタイプによって相応しい本が違ってくる。JGRを順を追って積み上げて読みたい人もいるし、生のものを取り入れたい人もいる。
→日本語のJGRは冊数が少ないので、必然的に絵本、ルビ付きマンガや本を読む必要性が出てくる。早い時期から絵本などを混ぜるとよい。JGRだけだとなかなか生の日本語の本へとつながっていきにくい。
→たまに、男性が絵本などをいやがるが、ノンフィクションものを入れるとよい。
→マンガを活用し、生の日本語の本に移行できる人もいる。

・読書嫌い、活字嫌いの人への対策は?
→ジブリなど、以前アニメで見たことがあるようなマンガ、絵本などをすすめる。
→ブックトークで、他の人がこんなことを楽しんでいるのだという刺激を受け、その本が読みたくなる。
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〇その他

・課外での多読クラスに人を集めるには?
→実際にどんなことをしているのか見えないと人は来ない。ポスター、アナウンスが有効。またデモンストレーション。
→日本国内の多読クラスは集まりにくいかもしれない。外国の方が、学習者が日本語に飢えているので集まりやすい
→クラスに参加する時、友達が来ているという社会的な面から入ってくる人もいる。
→マンガ好きの人には、このクラスを取ればマンガが読める、と宣伝する。

・「多読は日本語習得となっているか」
→ なっている。
→学生、学習者が多読の効果を感じるのは、楽しく辞書を引かずに本が読めるとき、トークセッションで話すとき、感想文などが書けるようになったとき。

・多読は能力試験対策として有効か
→試験対策になると思うが、試験までの時間、どんな学習者かによる。
→多読をしなくても問題集を3か月やって受かる場合もある。
→多読は能力対策になる。多読だけで能力試験1級に合格した小学生、中学生がいる。中学生は1年間週に1回、多読で日本語の勉強を始め、直前に4回だけ練習問題をやり2級に合格した。逆に、能力試験対策の問題集から始めると、暗記するだけとなり、日本語の力は付きにくい。
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あっという間に予定の2時間が過ぎ、「本に関する質問」がごっそり残ってしまいましたが、それは、メーリングリストで共有することにしました。
一冊だけ、Eさんが推薦してくださった絵本「象の背中」を紹介しておきます。


もともとは秋元康の小説で、その後、絵本、DVD、映画と展開したものなので、いろいろなメディアで楽しめるそうです。

最後にアメリカのN大学の多読クラスの学生が作った作品を鑑賞しました。
多読のクラスでいろいろな本に出会い、本に対する思いを映像で見せた作品、レベル別日本語多読ライブラリーレベル1の「タクシー」に刺激されて作った歌、成績のふるわなかった学生が多読の本に刺激されて作ったやさしいことばで書かれた、でもちゃんとオチがあって面白い作品、どれもオリジナリティーあふれるもので、大いに笑い、感心しました!

時間があまりにも短く、進行が下手だったことを反省。
次回は、しっかり時間をとってもっとみなさまに自由に交流していただけるよう工夫していきたいと思います。
今後は夏の多読支援セミナーと冬と2回こうした会を持てるといいと考えています。
海外の先生方もぜひ、年末に帰省した折にご参加下さい。

(粟野)

 

 

 

記2015/12/20T