12月17 日(日)第3回「日本語多読授業相談会」報告

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12月17日(日)午前10時半~12時半 NPO多言語多読事務所にて、第3回「日本語多読授業相談会」を行いました。
多読授業相談会は、セミナーではなく、参加した方々がお互いに悩みを出し合い、アドバイスをしあう場です。日本語多読授業を何年も続けて指導していらっしゃる方、始めてみたものの行き詰まりを感じていらっしゃる方、これから授業に取り入れようと思っていらっしゃる方などが、集まって話し合います。

今年は、我々スタッフを含めて17名の日本語教育関係者が参加しました。アメリカの大学や日本の大学の先生、多読をテーマに博士論文や修士論文に取り組んでいらっしゃる方、日本語学校の先生、と背景も多彩でした。また、大学で授業をなさりながらも、地域の多読クラスを立ち上げたい方、読み物作成に関心のある方など、参加動機も様々でした。

副理事長の粟野が進行役を務めました。

自己紹介の後、多読授業を始めた先生から「まだ初級後半の日本語レベルなのに、レベル3ぐらいを読みたがる学生がいる。ふだんからマンガやアニメに触れていて、休み時間に自分の鞄からマンガを出してきて、ケラケラ笑いながら読んでいる。だから、マンガを読んでいいということにしたが、果たしてそれでよいのだろうか・・・」という‶多読あるある“のお悩みが。
それに対して、「楽しんで読んでいるなら全然、問題ない」「それでも、レベル0から読む効果について根気よく説明することは必要」「そもそも、レベルの高いものは教室に持っていかなければよい」などと意見がいろいろ出ました。う~ん、これは難しいですね。やさしいものから読んだ方がいいには違いないけれど、学習者の状況によってはその限りではない場合もあります。どんな場合も個別対応が必要でしょう。

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また、多読は、学習者自身に力がついた実感が持てないきらいがあるが、ノンフィクション物は語彙が増えた実感が持てる、ブックトークで「今日のことば」というコーナーを作り、新しく知った語を発表させると語彙が増えた実感が持てる、などの体験に基づいたアドバイスがありました。

‶多読授業あるある“の、「効果が数字で出せないので、教育機関の上層部や同僚の理解を得るのが難しい」というお悩みには、「学習者からの声」「同僚を仲間にする」がキーになるという経験談が出ました。

悩みの「貸し出し」については、ある先生から、学習者一人一人に封筒を作り、それに入れて本を貸し出す、その封筒に入れて本を返却してもらう、という方法が紹介されました。これなら返却忘れが防げ、本の管理がしやすいかもしれません。グッドアイディアですね。

近年、多くの機関で多読用の読み物が作られるようになったので、それらの本(紙の物だけでなくweb公開の物も多い)もご紹介しました。

そのあとは、海外大学、国内大学・日本語学校、地域の日本語教室と3つのグループに分かれて、多読支援相談を行いました。

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最後に相談会の感想を伺いました。具体的なことを知れてよかった。多読授業で使っているという話を聞いたので、絵本や漫画をもっと取り入れようと思った。などの声が聞けました。

午後は、日本語読み物作成会のメンバーの忘年会でしたが、多くの先生方が続いて参加してくださいました。なんと忘年会中にも授業のアドバイスなどが飛び交っていました。

来年も楽しくて有意義な「相談会」を開けたらいいな、と思います。いや、やりましょう!

(松田 記)