第6回 多読支援セミナー「多読支援の落とし穴パート2~聞こえていますか?学習者の声」 全体会報告

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第6回となった多読支援セミナーのタイトルは「多読支援の落とし穴 Part2 聞こえていますか、学習者の声」、その午前の全体会の様子をリポートします。

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酒井理事長の開会の挨拶から始まりましたが、今回は理事長の講演はなく、実践報告や体験者の発表をたっぷり聴くことができました。

絵本から始めるTadoku

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最初のプログラムはNPO多言語多読の日本語多読講師の川本理事と、同じく英語多読講師の山谷さんによる、「絵本から始めるTADOKU」と題したワークショップでした。題材の絵本は日本語でも英語でもない、韓国語。ほとんどの参加者にとってなじみの薄い韓国語の絵本を使うことで、知らない言語でも絵をしっかり見ることで、本の内容をくみ取って理解できることを体感してもらいました。

川本理事紹介の本では、韓国語の短いフレーズが繰り返し出てきて、最後にはすっかりそれを覚えてしまいました。山谷さんのパンダの親子が銭湯へ行く絵本では場内に衝撃、いや笑撃が走りました。やさしいそして楽しい本に出会うことの大切さが改めて実感できました。支援者としては受講生が楽しんでいるかの観察はとても重要で、更に学習者の気持ちを知るためには、まずは自らが多読・TADOKUを実践してほしいと締め括られました。

「聞こえていますか?学習者の声」

Photo 2017-08-21 0 53 06続いて「多読の現場」と題した報告が、都内の児童英語教室で多読指導をされている鈴木祐子さんからありました。受講生への英語のインタビュー動画を使い、まさに現場の声が聞こえてくる内容でした。中高生が多読で身に付けた英語を使って話す、書く。傍から見ると素晴らしい成果をあげているように見えるのに、全員がその成果を感じているわけではない。本人にとっては多読を続けていても変化の実感が持てないこと、そこが多読の大きな課題とのお話でした。そこに受験や試験が加わってくると、学校の成績や試験の結果に直結しない多読では、ますます自分に自信が持てなくなる。点数至上主義は現役中高生にとっても辛いし、支援者泣かせでもあります。

Photo-2017-08-21-1-14-29次に登場したのは文京学院高校の卒業生。3年間多読授業を受けた後、今春から大学に進学した3人の体験談でした。

・本は嫌いだったけど、次第に文字を読むことへの抵抗がなくなったし、好きなドラマのノベライゼイションを聴き読みで楽しんだ。・元々本は好きだったので、自由に好きなだけ絵本も本も読めるのがよかったし、知らぬ間に長文読解の力もついていた等。

3人が共通して感じていたのは、リラックスしていられる多読授業は楽しかったけど、在学中は進歩や成長の実感はあまりなかった。ところが大学に進んでから、英語の授業で周囲の学生が苦労している中、ネイティブの先生との受け答えも楽にできるし、長文を読まされても苦にならないし、しかも早く読める。サマリーを書くような課題でもブックトークの経験が生きていると感じる。受験英語だけで過ごしてきた学生との違いを、現在身を以て実感しているようです。支援者冥利に尽きる、また多読に関わる全ての人に勇気を与えてくれるような素晴らしい発表でした。

Photo 2017-08-21 1 00 27続いてNPOの英語多読講座の卒業生である吉江さんの体験談の発表がありました。64歳で多読に出会うまで50年間持ち続けていた英語コンプレックスが、半信半疑で講座に通い始めたら半年で消えた。30語、50語のやさしい英語の本がとにかく読めた、解った。英語を話すなんて想像もできなかった自分が、読んだ本の粗筋を8分かけて10センテンスの英語で語った。英語だからと言ってむやみに構えることはない、所詮は言葉、答えは一つではないし、理解はあいまいでもいい。そう気付けたことで、長年の英語コンプレックスは解消し、良き仲間との出会いもあって、多読で新しい人生が開けたと。ひときわ盛大な拍手が起こりました。その後吉江さんがどのように英語を楽しんでいるかは、フォーラムの「たどくらぶ」の報告でもご覧になれます。

午前の部の最後、粟野副理事長から日本語多読の事例報告がありました。にほんご多読よむよむ文庫で読んだハチ公のお話を楽しそうに一生懸命に語る年配の女性、にほんごの本を読む会に来た、来日したばかりの韓国人男性が必死で何かを語ろうとする姿など、動画やスライドを駆使して日本語多読の現場を紹介してくれました。

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ここでゲストの登場。韓国から日本に来て2006年の4月から2年間、多読授業をうけたという彼女の体験談は、流暢な日本語での爆笑トークでしたが、同時に大変示唆に富んだ内容でした。自分はフィクションは嫌いだから、とにかく雑誌で面白そうな記事、特にハリウッドゴシップなんかを何度も読み返した、300ページの本を7か月かけて読み切った時に、自分は日本語が読める!と思った。漢字もいつの間にか覚えていたし、書くことにも抵抗はない。でも知らず知らずのうちにできるようになっていたので、どうしてできるのと聞かれても説明できない。信頼できる先生と出会って、一人では読めない本を一緒に読んでもらい、質問に答えてもらい、読み聞かせもしてもらった、そうういう経験が大きかった。

充実した3時間で、午前の部はあっという間に過ぎたという印象でした。国際多読学会と日程が重なったこともあり、英語多読の参加者が少な目だったのが残念でした。

(当日スタッフ:Owly)

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