6月25日(日) 第35回「多読授業とリライト」入門講座報告

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16人もの参加がありました!大学が9人、日本語学校3人、その他4人。講師は川本かず子でした。

【10:30~12:30】午前の部

まず、日本語の多読授業実践経験の有無、外国語での多読体験の有無をみなさんに聞きました。多読を始めて聞いたという方が一人いらっしゃいましたが、多読授業実践をしたことがある、している人が6人も!お子さんと一緒に英語多読を体験した方も一人いらっしゃいました。

次にNPO多言語多読が考える多読とは何かについて、参加者とやりとりしつつ説明しました。

言葉の獲得には、絵と音が大切だということを強調しました。そして、キーワードは、「おさなごのように」(酒井理事のことば)。赤ちゃんが母語を覚えるとき、ぴったりの場と何回も耳にする音で身につけていったのでは?と問いかけると、みなさん納得されたようでした。
多読は、この絵と音を大切にしながら、体に言葉をためていく方法です。そのために考えられたのが多読の4つのルールです。

この「辞書は使わない」「わからない言葉は飛ばす」などの多読のルールについては、質問がいろいろ出ました。「辞書は絶対にダメなのか」「メモも?」「質問は受けてもいいのか?」など。

さらに、授業のやり方に進むと、授業の頻度と時間、評価についても質問がありました。

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これらの質問に対して実際に授業をしていらっしゃる先生方からも積極的な発言があり、悩んでいる先生、これから始める予定の先生にとても役に立ったと思います。「レポートを書いてもらう」「出席でつける」「プレゼンをする」「フェイスブックを利用してどんな本がよかったか投稿する」「ビブリオバトル」などなど。
ただ多読より活動に重心が偏らないよう、読む時間を侵食しないよう注意が必要だと力説しました。

ほかに、多読授業実践者から、「多読は書く力がつく」「日本の文化を知ることができる」「聞き読みをすると本が早く読めるようになる」「成績がふるわない学生が伸びた」など多読のうれしい効果のお話がありました。

私たちからも多読の効果の一つとして、よむよむ文庫「舌切り雀」を読んで喜んで支援者にあらすじを話すバングラデシュのRさんの映像をお見せしました。

少し休んで、外国語(英語、スペイン語)の多読体験。英語はORT(Oxford Reading Tree)を使って文字なし絵本、文字が少しだけある絵本で体験(一部聞き読み)。スペイン語はCD付きの絵本で。絵を見ること、音を聞くことで、絵本のストーリーがわかることを実感していただきました。

【1:15~4:30】午後の部

午後は、リライト体験です。

リライトのポイントについて説明したのち、語彙表、文型表を見ながら、リライト開始。スペースの狭さもものともせず、4つのグループが和気藹々と作業に集中しました。

1.やさしいレベルのリライト

グループに分かれ、イソップ「アリとキリギリス」「ウサギとカメ」「北風と太陽」から一つ選んで、レベル0か1にリライトしていただきました。

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できあがった作品は、みなさんに読み上げながら発表してもらいました。言葉の書き換えなどで苦心した、できるだけイラストをたくさん入れてわかりやすくしたなどの感想が聞かれました。
なんと今回初めて色鉛筆持参の方もいらっしゃって、仕上げに力が入っていました。

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2.レベル3のリライト

宮沢賢治「注文の多い料理店」、芥川龍之介「蜘蛛の糸」をレベル3に書き換えました。
できあがったところまでで発表。みなさん、原作の雰囲気を残した作品仕上がっていたと思います。

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・「蜘蛛の糸」では敬語が多く、それをどうやさしく書き換えるかが難しかった。
・言葉を一つ一つ書き換えていくのではないことがわかった。
・グループで作業すると思わぬアイデアが出てうまくいく。

などの感想が出てきました。

最後にアンケートを書いてもらいました。
・具体的な授業のやり方がわかってよかった。
・実践者の方からの話が聞けて役に立った。
・評価についてはもう少し知りたい。
・インプットからアウトプットへの流れを知りたい。
・本つくりに参加したい。

学習者が読みながら楽しく力をつけていく多読授業が少しでも広がってくれたらうれしいなと思います。

(田中 記)