3月5日「日本語多読 出版10周年を祝う会」報告

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春の兆しがようやく感じられるようになった3月5日(日)、「日本語多読 出版10周年を祝う会」に90人余りの方が集まってくださいました。(会場:武蔵野プレイス)

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アスク出版天谷社長から見事なお花が届きました。ありがとうございました!

会の趣旨は、私たちが日本語多読の活動を始めて15年、本が出版されてから10年経ったことを記念し、これまでお世話になった方たちをお招きし、一日楽しく過ごしましょう、というものでした。
2016年~2017年にかけて、「よむよむ文庫」(アスク出版)レベル4の新刊、新シリーズ「にほんご多読ブックス」(大修館書店)が出版され、出版から10年のいい区切りとなったことも、この企画のきっかけになりました。

半年ぐらい前から計画し、プログラムは、10年前のNPO設立記念大会でも講演してくださった林望先生の講演、「にほんご多読ブックス」制作の過程で知り合った柳家小団治師匠の落語とすぐに決定しました。
2月に入ってから「高座」の手配やら、アトラクション?の準備やらでばたばたし始め、会場も2度にわたる下見をし、ドキドキしながらとうとう本番を迎えました。

13時半開始
13時40分に早速始まった林先生の講演の題は、「日本語を読むということ 書くということ」

お話は「書く」から始まりました。

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ケンブリッジ大学所蔵の古書目録を当時まだ珍しかったコンピュータを使った入力していったご苦労から、「書く」という面から捉えた日本語の特色が語られ、やがてお話は「読む」へ。
長谷川巳之吉という人が経営していた第一書房から出た詩集から、田中冬二の「くずの花」、佐藤春夫の「しぐれに寄する抒情」が紹介され、その文字のレイアウト、装丁の美しさについて語られました。二度刷りというぜいたくな作り方をしているそうです。電子書籍など出版の世界も急速な変化を遂げていますが、この「美しい紙の本」の世界はいつまでも残ってほしいものです。

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そして、最後にいわゆる「百人一首」の有名な短歌が取り上げられました。
「浅茅生の小野の篠原しのぶれど あまりてなどか人の恋しき」
「あさじうの~」と会場いっぱいに響き渡る美声で読み上げてくださると、会場からは「おお~っ!」とどよめきが。なるほど、こうして耳で聞いて初めて歌に込められた情景がよみがえる、歌を味わうということなんですね。音律性を無視して歌を鑑賞することはできないのに、やたらに掛詞だから前半は意味はないなどと教えられ、現代語訳ばかり覚えさせられた学生時代がうらめしく思われました。

もっと読んでいただきたかったのですが、ここまでで時間終了となってしまいました。残念。

次に、私たちからの余興?!
「日本語多読 生誕15年」をスライドでお見せしました。松田、川本コンビの掛け合いにて。

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2002年に日本語多読研究会を作ったときは、15年後のことは全く想像もできませんでした。ただただ、日本語教育の中に多読が必要、多読をやってもらいたいという一念だけ。教師生活の傍ら、よく集まって読み物を作ったものだなあと思います。協力援助してくださった大勢の皆さん、本当にありがとうございました。

ここで少し長めの休憩。

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休憩時間に、手作り時代の読みものを熱心に見てくださる人も多かったようです。
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「よむよむ文庫」海外版の無料配布コーナーは大人気。多読授業に役に立ってくれたらうれしいです。

 

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お世話になった朗読グループのみなさん。

休憩の後は、お待ちかねの落語です。

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出囃子とともに若草色の春らしい着物姿で登場の小団治師匠、時事ネタ等で会場の空気を和ませていきます。
そして、本題へ・・・。

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この時期にふさわしい「長屋の花見」でした。みなさんの反応もよく会場が気持ちの良い笑い声に包まれました。最後には楽屋の裏話をサービスしてくださいました。

なんと、きっちり時間通りに終わりました。
駆け足でしたが、春のひと午後、みなさん、楽しんでいただけたでしょうか。
私たちにとって、とてもいい区切りのイベントとなりました。さて、これからの10年はどんな10年になるでしょうか。楽しみです!

(粟野)